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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

新学習指導要領は何が問題か-

2009年05月03日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 《教育を子どもたちのために 4・25集会資料》
 ☆ 新学習指導要領は何が問題か
   -「心」は画一化、「学力」は格差化


一、学習指導要領とは何か

 学習指導要領というのは、文部科学省が作成して、教員が学校で教える内容を示したもので、ほぼ10年ごとに改訂されています。教科書も学習指導要領に準拠してつくることが義務づけられています。
 1947年に学習指導要領がはじめてつくられたときには「試案」とされ、教員が教育実践の参考にするものでした。この時の学習指導要領は、教員の教育実践や教科書の内容をしばることを目的にしていまぜんでした。
 ところが、政府・文部省は1950年代半ばから戦後の教育の民主化を転換して、教育・教科書の統制をはじめます
 1958年3月に「道徳教育実施要項」を通達し、同年10月に学習指導要領を改訂し、これを官報に告示し、「法律的な拘束力がある」と主張しはじめ、今日にいたっています。
 しかし、1976年の最高裁判所大法廷の旭川学力テスト事件の判決では、学習指導要領は大網的な(大まかな)基準であるとし、学習指導要領によって教育を細部まで規制するのは違法としています。ところが文科省は、そうした最高裁判決を無視して、今日も、法的拘束力を主張し、これによって教員の授業内容や教科書の内容をがんじがらめにしばるようにしています。
二、改惑教育基本法を具体化するための学習指導要領の改訂
 文部科学省は、2008年3月に改訂した小中学校の学習指導要領と幼稚園教育要領を官報に告示しました。
 また、2009年3月に高校と特別支援学校の学習指導要領を告示しました。
 この新学習指導要領は、2006年12月に改悪した教育基本法、2007年5月に改悪した学校教育法を具体化するものです。多くの人びとの反対を押し切って強行成立した改悪教育基本法は、一人ひとりの子どもの人格の完成をめざし、個人の尊厳を大切にする、「子どものため」の教育から「国家のため」の教育に大転換するものですが、新学習指導要領はこれを学校現場や教科書に徹底することをねらいとしています。
 新学習指導要領は史上最悪の内容です。これまでの学習指導要領の改訂ではなかったことですが、文科省が作成した学習指導要領の冊子には、改定教育基本法の全文と改定学校教育法の一部が最初に載っています。内容だけでなく、次に紹介するように、改訂のスケジュールも異常でしたが、実施の仕方もこれまでにない異常なものです。
 さらに、文科省はこの学習指導要領に忠実な教科書をつくらせるために、2009年3月、教科書検定制度を改悪しました。これによって、すべての教科書に道徳や愛国心を盛り込ませようとしています。
(1)異常な改訂スケジュール
 中央教育審議会「審議のまとめ」(2007年11月)→学習指導要領告示(2008年3月)→移行措置公示(6月)→小・中各教科の「解説」を市販(8月~9月)→高校・特別支援学校学習指導要領案発表(12月)→同学習指導要領告示(2009年3月)。
 2011年(小学校)・2012年(中学校)からの本格実施を待たずに、道徳、算数・数学、理科、外国語活動は、告示の翌年(2009年4月)から事実上全面実施します。そのための補助教材を作成し、すべての子どもに配布されています。
(2)これも異常な周知徹底のやり方
 文科省は「平成20年度を集中周知・広報期間」と位置づけて、文部科学事務次官を長とする「新学習指導要領実施本部」を設置。3億9800万円の予算を使って幼稚園から中学校までの全保護者向けの『生きるカ』と題したパンフレット1250万部を作成・配布、学習指導要領の冊子を幼稚園から中学校までの全教員115万人に無料で配布。
三、国家のための教育をおしすすめる3つの問題点
 新学習指導要領には多くの様々な問題点がありますが、その主要なものは次の三つです。
 1.学習指導要領の目標を達成するように教育を行うことをはじめて義務づけたこと。
 2,道徳教育をいっそう強化すること。
 3.学力格差をいっそう広げ、競争教育をさらに強め、差別・選別教育をさらに推し進めるということ。
 ここでは、この3つの問題点について紹介します。
1.学習指導要領の目標を達成することを義務づけ
 各学校は、改定教育基本法・改定学校教育法・新学習指導要領が掲げる「教育の目標」を達成するように教育課程を編成し、教育を行わなければならない、として学習指導要領の内容を「運成目標」にしました。
 改定教育基本法の「教育の目標」は、国が定めた「道徳心」「愛国心」「公共の婿神」など20の徳目です。これが改定学校教育法、新学習指導要領でも「教育の目標」となっています。
 これによって、学校・教員は子どもの内心の自由を踏みにじって、「愛国心」「道徳心」「公共の精神」の「涵養」や「君が代」を「歌えるようにする」という、国家が決めた目標の達成が義務づけられ、各学校は達成状況を文科省に点検されることになります。
2.道穂教育のいっそうの強化
 これまでの学習指導要領にはなかったことですが、道徳教育についてはじめて総則に明記しました。
 総則というのは学習指導要領全体の土台となるもので全教科、学校教育全体に共通した内容を規定するものです。
 また、「道徳教育推進教師」を全校におくことを義務づけています。しかも、道徳教育の中心は「愛国心」教育となっています。
 新学習指導要領には「道徳」の文字が小学校で93回、中学校で97回でてきます。
 さらに、文科省は『心のノート』も改訂しました。
(1)「教科の道徳化」
→「道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行う」「道徳教育の目標に基づき…OO科の特質に応じて適切な指導をする」「校長の方針の下に、道徳教育の推進を主に担当する教師(以下「道徳教育推進教師」という。)を中心に、全教師が協力して道徳教育を展開する」「道徳の時間の授業を公開」と規定しました。
 また、高校の学習指導要領でも、学校が道徳教育の全体計画を作成し、実施することを、はじめて義務づけました。
(2)行きつく先は愛国心教育
→【国語】「昔話や神話・伝承」「親しみやすい古文や漢文」「日本人としての自覚をもって国を愛し、国家、社会の発展を願う態度を育てるのに役立つ教材」。
【社会科】「『天皇の地位』については…天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにする」「我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てる」。
【音楽】「国歌『君が代』は、いずれの学年においても歌えるよう指導すること」。

3、学力格差をいっそう広げ、固定化する
(1)「学習内容の習熟の程度に応じた指導、児童の興味・関心等に応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習など…個に応じた指導の充実を図る」と規定しています。
 これは、一方で、「できる子」向けには「習熟度別授業」で当該学年の学習内容を超えた「発展的な内容」を教え、一部のエリート育成のための教育をすすめるものです。そして、他方では、「できない子」には、当該学年より下の学年の学習内容を「反復学習」「繰り返し学習」によって、徹底的に話め込み教育をする、というものです。
 学校の授業は、「できる子」向けと「できない子」向けに分けられ、学力格差がいっそう拡大し、差別・選別教育が公然を推し進められることになります。早くから「できない子」の烙印を押された圧倒的多数の子どもは、学習意欲をなくし、学校がますます荒れることになりかねまぜん。
(2)「夏季、冬季、学年末等の休業日の期間に授業日を設定する」
 「ゆとり教育」を見直して、学習内容、授業時間を増やしました。そのため、小学校低学年から毎日授業時間が増えます。それでは足りないということで、夏休みなどを減らして授業をするように要求しています。
(3)「全国一斉学力テスト」が引き起こしたこと→子ども・教師・学校を偏った学力競争に追い立てる。
 新学習指導要領は、子どもたちだけでなく、保護者、教員、学校、地域をいっそうの学力競争に駆り立てることになります。
文責:俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
2009年4月25日

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