安保破棄中央実行委員会編の「日本の軍事費Ⅱ」を読んだ。おおよそ分かっているつもりだったが、いろいろな問題があることが分かり、奥が深いことを思い知らされた。
冒頭、著者は一番基礎になる数字を挙げる。
日本の軍事費が増えてきている。2016年度は5兆円を超えてきている。さらに「後年度負担」という名のローン部分、来年度以降に支払うべき支出が安倍内閣になって急角度に増えて来ていることをしめす。2016年度には4兆4000億円に上り、これを加えると総額10兆円に上ることをしめす。額だけ見ても異常な金額である。
軍事費の国際的な比較をするともっとはっきりする。世界各国の軍事費を見ると、アメリカの73兆2200億から中国、ロシア、サウジアラビア、仏、英、インド、独、とならび、日本は9位の座を占めている。まさに軍事大国である。
日本の自衛隊は「戦力なき軍隊」と言われてきたが「専守防衛」の「戦力なき軍隊」がこのような軍事費を使う必要があるのか疑問に思わずにいられない。
元統幕議長を務めた栗栖弘臣氏は「日本の現在置かれているポジションと自衛力形成の過程を見ますと、陸上自衛隊は米陸軍、海上自衛亭は米海軍、航空自衛隊は米空軍が、それぞれ自分の手足として使う目的で育ててきた」と書いたことがある。
このような事情から日本の軍事費には世界に類を見ない異常な項目が含まれている。自衛隊増強予算だけでなく、アメリカのための軍事予算だ。具体的には、アメリカ製武器を大量に買うための予算、米軍基地を建設・増強する予算、米軍のための「思いやり」予算が含まれている。このような予算が、日本の平和と安全を守るために本当に必要なのだろうか。
安倍政権は、軍備増強の理由を「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさをましている」からだといいます。しかし軍備増強をすれば中国との尖閣問題が解決するでしょうか。北朝鮮による核兵器開発やミサイル問題が解決するでしょうか。これらの問題を解決するためには強力な「外交力」こそ必要なのではないでしょうか。言い換えれば、いま必要なのは、国際世論で北朝鮮を包囲していくことです、「六か国協議」を再開して外交交渉の場を作ることではないでしょうか。
このような疑問に対して著者は次々と事実を示して説明する。ここにはその豊富な内容を示すことが出来ないので直に原本に当たっていただきたい。ただいくつかのキイワードだけ引いておきましょう。
まず安倍政権になってからの軍事費膨張の大きな原因として「戦争法の実行予算」としての性格を挙げている。特にアメリカ製の侵略的・攻撃兵器を大量に購入していることを挙げる。その中で自衛隊を海外で「戦争できる軍隊」に再編する計画が着々と進んでいることをも示しています。
もう一つはアメリカと日本の軍需産業が危機的状況にあるのを“救済”するという側面も大きいと説きます。
さらに米軍基地の増強と「思いやり」予算にも触れています。
この本の編者はもちろん「安保破棄」を主張する団体ですが、安保合憲の立場の立場をとる方にとっても、日本の軍事予算の中に上代な内容があることに気づかれるのではなあいでしょうか。例えば、攻撃的・侵略的武器の増強、自衛隊とアメリカ軍の関係などが挙げられるのではないでしょうか。
駆け足で紹介しましたが、日本の国の立場を考えるうえで貴重な本だと思います。
安保破棄中央実行委員会「日本の軍事費II」 400円
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