安倍首相が就任して1年余り、鳴り物入りで掲げられた経済政策、アベノミクスもその結果がだれの目にも明らかになりつつあります。
まず国民生活はどのように変わってきたのでしょうか。いろいろな世論調査で出てくるのは「景気が良くなったとは実感できない」という答です。国民生活は変わっていないのでしょうか。直観的な印象を確かめるために統計を見てみましょう。国民の家計でどれくらい買い物をしたのか、アベノミクス前の2012年と比べて2013年の家計支出は、物価の変動を除くとわずか0.5%増えただけです。消費税増税前に駆け込み消費が増えると予想されていたのに予想が外れました。
消費がふえないのは労働者の所得が増えないためのようです。家計の判断で使用できる可処分所得をみると、5か月連続で実質減少しています。
この数字には表れませんがアベノミクスのおかげで円安が進行し、輸入品に始まった物価の上昇も家計を苦しめています。
それでは、日本経済全体としての経済はどうなんでしょう。お国のためにしばらく我慢するとよいのでしょうか。
政府と日銀は輸出を増やすために、金融緩和で円安を加速しました。結果はどうでしょう。確かにこの1年で円安は進行しましたが、輸出は伸びませんでした。2013年には輸出額も2012年に比べ9.5%増えました。しかし金額ではなく、輸出したものの量で見る数値に輸出数量指数がありますが、この輸出数量指数をみると2013年は12年に比べ1.5%へっています。輸出は減っているのに、円安のために、ドルで受け取った代金を円に換算すると、円安の分だけ金額が膨らんでいるのです。
しかし、大企業はもうかっているのではないかという疑問がわきます。たとえばトヨタ。輸出産業なのに輸出が減っても空前の利益をあげています。トヨタは日本からの輸出を前年に比べ4万台を減らしましたが、海外生産を29万台以上増やしました。
大企業がいくら儲かっても、国に生産が増えないために仕事が増えず、雇用も増えず、賃金も増えません。アベノミクスでは企業の海外進出を促進しています。これでは国民の生活を良くする役には立ちません。
この1年間で大企業は大もうけを挙げています。東証一部上場企業の4-12月の純利益の合計額はリーマン・ショック前、2007年4-12月を上回っています。円安、株高を背景に輸出関連企業を中心に業績が回復したからです。
こうしてみてくると、アベノミクスは大企業には大もうけをもたらしましたが、働く私たちには何の利益も持ってきませんでした。今日の標題「アベノミクスは成功したか」に対する答えは、二通りでしょう。大企業からみれば「成功した」、大多数の国民からみれば「不成功」でしょう。