友寄英隆著「安倍新政権の論点II アベノミクスの陥穽」(かもがわ出版)を読みました。安倍内閣の経済政策が大分理解できたような気がしましたので、紹介します。
- 今日はこの本の順序を少し変えて、第二章をから紹介します。「第二章 デフレ・不況の真の原因を探る」です。
著者は、今の不況の原因を十数年続いた構造改革路線にあると考えています。
バブル崩壊の後、小泉政権の強引な構造改革によって、いわゆる「戦後最長の景気上昇」が起こりました。輸出産業を中心とした大企業の繁栄です。大企業は最近十年余りで200兆円を超える莫大な蓄積を行いました。しかしこの「景気上昇」は国民の犠牲の上に成り立ったものでした。1997年から2012年の15年間に民間労働者の平均賃金(年額)は467万円から409万円に下がりました。約60万円の減少です。先進国の中にはこのような国はありません。
格差を広げた結果、生産者が作った物やサービスを買う「需要」が減少し、需要と供給の間のギャップが生じました。これが不況の正体だというのです。
著者は、さらに突っ込んで、なぜ不況が長引くのかという問題を分析しています。
不況の原因になる「需給ギャップ 」がなぜこのように長引いているのか。それは「二重の悪循環」があるからだと言います。
第一に悪循環は「リストラ・低賃金と円高の悪循環」です。リストラ「合理化」・低賃金→円高→リストラ「合理化」・低賃金→円高→・・・・ という悪循環です。
もうすこしくだいて言うと、「輸出競争力」をつけるために、価格を下げる。そのために手っ取り早い方法として、労働者の賃金を下げたり、リストラを行う。そうすると 一時的には輸出が増えます。しかし今の国際的なシステムの中ではこのようにして輸出を増やしても、円高によって帳消しになってしまします。こうなると輸出価額を上げたのと同じことになるので、また振り出しに戻り、さらなるリストラと賃金引き下げが必要になります。こうして「需給ギャップ」はつづきます。
もう一つの悪循環は「インフレ率低下と円高の悪循環」です。低賃金・雇用不安による内需不振・長期不況・デフレと円高の悪循環です。内需、すなわち国内の需要が低迷すると、他の国に比べて物価上昇が低いために、外国と比較すると円の価値が上がります。すなわち「円高」になります。この「円高」が再びデフレを招くという悪循環です。
著者は、この「二重の悪循環」は絡み合い、悪循環を主導しているのはリストラ「合理化」であると言っています。
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要約のしかたがよくないために理解できないこともあるかもしれません。乱暴かもしれませんが、一言でまとめてしまえば、
「大企業に大きな利益をもたらし、多くの国民には低賃金と雇用不安をもたらした『構造改革』によって、国内の需要が低迷し、不況が長く続いている」
というのが著者の主張であると言ってよいのではないでしょうか。
この結論は経済学に素人の私にもよくっ分かる結論だと思います。
次回は「第1章 「アベノミクス」では、デフレ・不況から抜け出せない」を紹介するつもりです。