平凡であることの幸せ

人生は光に導かれる旅

☆Life is a journey towards the guiding light

日本の童謡展

2005-11-16 | 日記
 *(音符)* 赤い鳥 小鳥
      なぜなぜ赤い
      赤い実を食べた *(音符)*

   (北原白秋作詞・成田為三作曲)


2週間ほど前 横浜の港の見える丘公園に隣接する
県立神奈川近代文学館で開催されていた
「日本の童謡」~白秋、八十~そして、まど・みちおと金子みすゞ展
に行きました。
みなとの見える丘公園のローズガーデンのばらを鑑賞し遊びがてら出かけましたが
見ごたえのある展覧会でした。

それぞれの詩人たちの原稿や書簡、関連画なども数多く展示され日本の童謡史が展望できるものでした。
鈴木三重吉によって創刊された「赤い鳥」に協力した北原白秋や西條八十の作品は
子供の頃によく口ずさんだ歌も数多くあり
懐かしさがこみあげてきました。
また野口雨情や 山田耕作、成田為三、本居長世、團伊玖磨ら童謡の代表的な作曲家たちも紹介されていました。

今年は白秋生誕120年、八十没後35年でもあるそうで、
今の時代こそ 「赤い鳥」の童謡の世界で表現されている”日本人のこころ”を 子供たちにも受け継いで欲しいと願わずにはいられませんでした。

八十は童謡だけではなく歌謡曲も手がけたりフランス文学者でもあり多彩な才能を持っていたようですが
森村誠一の「人間の証明」で引用された
「帽子」も彼の詩であり、創作ノートも展示されていました。

また八十にその才能を賞賛されながら
没後は幻の存在であった金子みすゞの遺稿集も展示され
みすゞを再びよみがえらせてくれた矢崎節夫氏の努力にも感銘を受けました。
また ビデオライブラリーでは 矢崎氏と今は70代になられる 
みすゞのお嬢様のふさえさんとの対談を見ることもでき
3歳で母親を亡くしたふさえさんの思いや
矢崎さんがよみがえらせくれたことによって
それまでは あまり話題にすることもなかった母親の 才能や娘である自分への思いや優しさに出会えて心から感謝しています。
というようなお話も聞けて涙がでてしまいました。
みすゞの世界である「みすゞコスモス」が
今日、多くの人に親しまれることはみすゞ自身も信じられない奇跡なのでは・・と思うのでした・・。


また 白秋に見出され戦後「ぞうさん」などの国民的童謡を発表しておられる
日本人初の国際アンデルセン賞作家賞に輝いたまど・みちおさんにもスポットをあてた展示もあり
見ごたえたっぷりの展覧会で 帰りの車の中ではおもわず懐かしい童謡をたくさん口ずさんでしまいました。

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*(音符)* ゆりかごの歌を
     カナリヤが歌うよ
     ねんねこねんねこ ねんねこよ *(音符)*
 
   (北原白秋 作詞・草川信 作曲)



 *(音符)* この道は いつか来た道
      ああ そうだよ
      アカシヤの花が咲いてる *(音符)*

  (北原白秋作詞・山田耕筰作曲)
      

 *(音符)* 歌を忘れたかなりやは
      後の山にすてましょか
      いえいえそれは なりませぬ *(音符)*


  (作詞 西条八十・作曲 成田為三)


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  「帽子」  西條八十

母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。

母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。

母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。

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   私と小鳥と鈴と  金子みすゞ



   私が両手をひろげても、
   お空はちっとも飛べないが、
   飛べる小鳥は私のやうに、
   地面(じべた)を速くは走れない。

   私がからだをゆすっても、
   きれいな音は出ないけど、
   あの鳴る鈴は私のやうに、
   たくさんな唄は知らないよ。

   鈴と、小鳥と、それから私、
   みんなちがって、みんないい。