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GO

2008-05-18 23:47:51 | 書籍。
・GO 金城一紀 (講談社文庫)

名前ってなに?
バラと呼んでいる花を
別の名前にしてみても美しい香りはそのまま
       (『ロミオ&ジュリエット』より)

日本で生まれ、日本で育った杉原―、でも彼にはもう一つの苗字が…李。日本に生まれながら朝鮮国籍の杉原は、《在日》という壁に閉じ込められていた。海外旅行に行くにも複雑な手続を要求され、日本国内でも常に「外国人登録証明書」を携帯せねばならず、世間からは冷たい視線を浴び、差別発言を受けることは常で、将来の選択肢は限られていた。しかし、杉原は彼の前に存在する選択肢を最大限に活かして、より広い世界に飛び込むことを決意する。朝鮮学校を離れ、日本人が通う大学に進学すること。
だが、そんな彼を朝鮮学校の生徒は「売国奴」と罵声を浴びせ、教師らはイジメを行う。一方で、マザー・テレサが「貧しい国」と呼んだこの国の人々は《在日》というだけで差別する。国を持てない杉原―、そんな彼が、ある日、運命的な出会いをする―桜井椿。
本作品は彼女との恋愛物語なのである。桜井の父親も公認する順調な付き合いを重ねていくが…、杉原は自分の身元を隠し続ける。だが、いつかは打ち明けなければならないと考えていた杉原は、ベッドの上で自分が在日であることを伝える。彼女の反応は―彼が予想していた通りのものだった。愛をも妨げる程の威力を持つ単語《在日》。
杉原の父親は「国籍は金で買える」というが、杉原は日本国籍に変えようとはしない。決して愛国心のためではなく、その理由は―。はたまた、杉原と桜井の恋の行方は―。
「ノ・ソイ・コレアーノ・、ニ・ソイ・ハポネス、ジョ・ソイ・デサライガード」
  (オレは朝鮮人でも、日本人でもない、ただの根無し草だ。)

まさに、相手を特定する定義を問う一冊。
日本人、韓国人、アメリカ人、…、その区別方法は―?
生まれた場所によるならば、《在日》という言葉は存在しない。血筋というのであれば、それは何代先まで遡るのか―究極的には地球人は皆兄弟になるはずだが―。両親の国籍―何故? 重いテーマを抱えながら、さらっと読ませてしまう金城一紀の大作。

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