日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(927)「ラッセルの確定記述」と「は・が」。

2021-06-17 12:19:14 | 象は鼻が長い、述語論理。

(01)
 (21)イリアスの著者はオデュッセイアを書いた。故にある人はイリアスとオデュッセイアの両方を書いた。
 (21)The author of the Iliad wrote the odyssey; therefore someone wrote both Iliad and the odyssey.
 ― 中略 ―、
 (22)∃y[Iy&Oy&∀z(Iz→y=z)]
ある人はイリアスを書いた。そしてオデュッセイアを書いた、そしてさらにその人はイリアスを書いた唯一の人である
someone wrote the Iliad, and wrote the odyssey, and further that person is unique in having written the Iliad;
 ― 中略 ―、
The treatment of definite description in(22)is of considerable importance in logical analysis; due to Russell, it has come to be known as Russell's theory of definite description.
 (22)における確定記述の取り扱いは、論理分析において無視できぬ重要さをもつ。それはラッセルに由来するものなので、ラッセルの確定記述の理論として知られるに到っている。
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、213・214頁改)
従って、
(01)により、
(02)
① ∃y[Iy&Oy&∀z(Iz→y=z)]
といふ「論理式」は、
① イリアスの著者以外に、オデュッセイアの著者はゐない
といふ「意味」である。
然るに、
(03)
よく知られているように、「私理事長です」は語順を変え、
 理事長は、私です。
と直して初めて主辞賓辞が適用されるのである。
従って、
(04)
① 私理事長です。
理事長は私です。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
(ⅱ)
1  (1)理事長であるならば、私である。  仮定
 2 (2)          私でない。  仮定
  3(3)理事長である。          仮定
1 3(4)          私である。  13肯定肯定式
123(5)私でないが、私である。      24連言導入
12 (6)理事長でない。          35背理法
1  (7)私でないならば、理事長ではない。 26条件法
(ⅲ)
1  (1)私でないならば、理事長ではない。 仮定
 2 (2)        理事長である。  仮定
  3(3)私でない。            仮定
1 3(4)        理事長でない。  13肯定肯定式
123(5)理事長であるが、理事長でない。  24連言導入
12 (6)私でない、ではない。       35背理法
12 (7)私である。            6二重否定
1  (8)理事長であるならば、私である。  27条件法
従って、
(05)により、
(06)
② 理事長であるならば、私である。
③ 私でないならば、理事長ではない
に於いて、
②=③ は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(06)により、
(07)
理事長は私である。
③ 私以外は理事長ではない
に於いて、
②=③ は、「対偶(Contraposition)」である。
従って、
(04)(07)により、
(08)
① 私理事長です。
理事長は私です。
③ 私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
① イリアスの著者オデュッセイアの著者です。
オデュッセイアの著者はイリアスの著者です。
③ イリアスの著者以外はオデュッセイアの著者ではない
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(02)(09)により、
(10)
「番号」を付け直すと、
① ∃y[Iy&Oy&∀z(Iz→y=z)]
② イリアスの著者オデュッセイアの著者です。
オデュッセイアの著者はイリアスの著者です。
④イリアスの著者以外はオデュッセイアの著者ではない
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(08)(10)により、
(11)
① ∃y[私y&理事長y&∀z(理事長z→y=z)]
② 私理事長です。
理事長は私です。
④ 私以外は理事長ではない
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(01)(10)(11)により、
(12)
① ∃y[Iy&Oy&∀z(Iz→y=z)]≡イリアスの著者オデュッセイアの著者です。
① ∃y[私y&理事長y&∀z(理事長z→y=z)]≡私理事長です。
といふ「述語論理式(と日本語)」は、
論理分析において無視できぬ重要さをもつ。それはラッセルに由来するものなので、ラッセルの確定記述の理論として知られるに到っている。
are of considerable importance in logical analysis; due to Russell, it has come to be known as Russell's theory of definite description.
然るに、
(13)
然るに、
(11)
(ⅰ)私はタゴール記念会の理事長であって、私以外に、タゴール記念会の理事長はゐない。然るに、
(ⅱ)小倉氏は、私ではない。従って、
(ⅲ)タゴール記念会は、小倉氏は、理事長ではない。
といふ「推論」は、明らかに、「妥当」である。
然るに、
(14)
1     (1)∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]} A
1     (2)   T会の会員a→∃y[私y&理事長ya&∀z(理事長za→y=z)]  1UE
 3    (3)   T会の会員a                             A
13    (4)          ∃y[私y&理事長ya&∀z(理事長za→y=z)]  23MPP
  5   (5)             私b&理事長ba&∀z(理事長za→b=z)   A
  5   (6)             私b&理事長ba                 5&E
  5   (7)                      ∀z(理事長za→b=z)   5&E
  5   (8)                         理事長cab=c    7UE
   9  (9)     ∃z(小倉z&~私z)                      A
    ア (ア)        小倉c&~私c                       A
    ア (イ)        小倉c                           ア&E
    ア (ウ)            ~私c                       ア&E
     エ(エ)               b=c                     A
    アエ(オ)            ~私b                       ウエ=E
  5   (カ)             私b                       6&E
  5 アエ(キ)            ~私b&私b                    オカ&I
  5 ア (ク)              b≠c                     エキRAA
  5 ア (ケ)                        ~理事長ca        8クMTT
  5 ア (コ)        小倉c&~理事長ca                    イケ&I
  5 ア (サ)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   コEI
  59  (シ)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   9アサEE
13 9  (ス)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   45シEE
1  9  (セ)   T会の会員a→∃z(小倉z&~理事長za)              3スCP
1  9  (ソ)∀x{T会の会員x→∃z(小倉z&~理事長zx)}             セUI
1  9  (〃)タゴール記念会は、小倉氏は、理事長ではない。                セUI
従って、
(14)により、
(15)
(ⅰ)∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}。然るに、
(ⅱ)∃z(小倉z&~私z)。従って、
(ⅲ)∀x{T会の会員x→∃z(小倉z&~理事長zx)。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(15)により、
(16)
(ⅰ)すべてのxについて{xがタゴール記念会の会員であるならば、あるyは[私であって、理事長であって、すべてのzについて(zがxの理事長であるならば、yとzは「同一人物」である)]}。
(ⅱ)あるzは(小倉氏であって、zは私ではない)。
(ⅲ)すべてのxについて{xがタゴール記念会の会員であるならば、あるzは(小倉氏であって、zはxの理事長ではない)}。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(12)~(16)により、
(17)
① タゴール記念会は、私理事長です。⇔
① タゴール記念会は、私は理事長であり、私以外は理事長ではない。⇔
① ∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}⇔
① すべてのxについて{xがタゴール記念会の会員であるならば、あるyは[私であって、理事長であって、すべてのzについて(zがxの理事長であるならば、yとzは「同一人物」である)]}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(12)(17)により、
(18)
① タゴール記念会は、私理事長です。⇔
① ∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}。
に於ける、
① 私理事長です。⇔
① ∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]。
といふ「日本語(命題関数)」は、「ラッセルの確定記述(Russell's theory of definite description)」に、相当する。
(19)
簡単に言うと、「論理式(well-formed formula)」かそのはじめにある量記号を除去した結果えられる式は「命題関数(Propositional function)」である。
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、182頁改)
従って、
(19)により、
(20)
① ∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]
② ∃y[私y&理事長y  &∀z(理事長z  →y=z)]
③ ∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}
に於いて、
① は、「(xに関する)命題関数」であって、
② は、「論理式」であって、
③ も、「論理式」である。



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