日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(976)『括弧』と『返り点』と「補足構造」。

2021-09-20 16:37:06 | 返り点、括弧。

(01)
① 読(漢文)。
に於いて、
① 読( )⇒( )読
といふ「移動」を行ふと、
① 読(漢文)⇒
① (漢文)読=
① (漢文を)を読む。
然るに、
(02)
② 文(読〔漢)〕。
に於いて、
② 文( )⇒( )文
② 読〔 〕⇒〔 〕読
といふ「移動」を行ふと、
② 文(読〔漢)〕⇒
② (〔漢)文〕読=
② (〔漢)文を〕読む。
然るに、
(03)
① 読漢文
② 文
であれば、
① 漢文を読む。
② 漢を読む。
である。
然るに、
(04)
① 読(漢文)。
② 文(読〔漢)〕。
に於いて、
①( )  は、『括弧』であるが、
②(〔 )〕は、『括弧』ではないし、
① 読漢文
② 文
に於いて、
①「二 一」  は、『返り点』であるが、
②「二 三 一」は、『返り点』ではないし、
固より、
① 読漢文(Dú hànwén)。
② 文読漢(wén dú hàn)。
に於いて、
① は、「漢文」であるが、
② は、「デタラメ」である。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 読漢文
① 読(漢文)。
といふ『括弧』が、そうであるやうに、『括弧』は、「返り点の役割」を果たすものと、思はれる。
然るに、
(06)
通常の包含関係に従って甲乙点を打った後、その外側で四つの返り点が必要になったら、どうするのでしょうか。天地人点(の三つ) では足りません。その場合も、やはり、次のやうに、甲乙点と天地人点の順序逆転させるしかないのです。そのような例を一つ示しましょう。根気のよい方は、訓読に従って字を逐ってみてください。あまりの複雑さゆえに嫌気のさす方は、読み飛ばしても結構です。

何ぞ人をして韓の公叔に謂ひて「秦の敢へて周を絶つて韓を伐たんとするは、東周を信ずればなり、公何ぞ周に地を与へ、質使を発して楚に之かしめざる、秦必ず楚を疑ひ、周を信ぜざらん、是れ韓伐たれざらん」と曰ひ、又秦に謂ひて「韓彊ひて周に地を与ふるは、将に以て周を秦に疑はしめんとするなり、周敢へて受けずんばあらず」と曰は令めざる。

何不人謂韓公叔秦之敢絶周而伐韓者、信東周也、公何不周地質使上レ楚、秦必疑楚、不周、是韓不伐也、又謂秦曰、韓彊与周地、将以疑周於秦也、周不敢不受。
(これならわかる返り点、古田島洋介、九一頁改)
然るに、
(07)
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉。
に於いて、
② □〈 〉⇒〈 〉□
② □{ }⇒{ }□
② □[ ]⇒[ ]□
② □〔 〕⇒〔 〕□
② □( )⇒( )□
といふ「移動」を行ふと、
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉⇒
② 何〈{人(韓公叔)謂[秦之敢(周)絶而(韓)伐者、(東周)信也、公何〔(周地)与(質使)発(楚)之〕不、秦必(楚)疑、〔(周)信〕不、是韓(伐)不也]曰、又(秦)謂、[韓彊(周地)与、将〔以(周於秦)疑〕也、周〔敢(受)不〕不]曰}令〉不=
② 何ぞ〈{人をして(韓の公叔に)謂ひて[秦之敢へて(周を)絶つ而(韓を)伐んとする者、(東周を)信ずれば也、公何ぞ〔(周に地を)与へ(質使を)発して(楚に)之かしめ〕不る、秦必ず(楚を)疑ひ、〔(周を)信ぜ〕不らん、是れ韓(伐たれ)不らん也と]曰ひ、又(秦に)謂ひて、[韓彊ひて(周に地を)与ふるは、将に〔以て(周を於秦に)疑はしめんとする〕也、周〔敢へて(受け)不んば〕不ずと]曰は}令め〉不る。
従って、
(06)(07)により、
(08)
② レ 丁 二 一 地 レ レ 二 一 下 二 一 二 一 上レ レ レ レ 天レ レ 二 一 三 二 一 乙 甲レ
といふ『返り点』は、
②〈 { ( )[ ( )( )( )〔 ( )( )( ) 〕( )〔 ( ) 〕( ) ]( )[ ( )〔 ( ) 〕〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ『括弧』に、「置き換へる」ことが出来る。
従って、
(08)により、
(09)
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
のやうに、「極端に長い、ワンセンテンスの漢文」であっても、
〈 { [ 〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ、「五組の括弧」があれば、「十分」である。
従って、
(09)により、
(10)
(ⅰ)〈 〉{ }[ ]〔 〕( )
といふ『括弧』は、
(ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十
(ⅲ)上 中 下
(ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(ⅴ)天 地 人
といふ『返り点』を、「カバーする」。
然るに、
(11)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)(07)(11)により、
(12)
① 読(漢文)。
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉。
に於ける、
①( )
②〈 { ( )[ ( )( )( )〔 ( )( )( ) 〕( )〔 ( ) 〕( ) ]( )[ ( )〔 ( ) 〕〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ『括弧』は、
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に於ける、「補足構造」を、表してゐる。
従って、
(13)
「逆」に言へば、
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に、「補足構造」があるのであれば、「二つの漢文」には、
①( )
②〈 { ( )[ ( )( )( )〔 ( )( )( ) 〕( )〔 ( ) 〕( ) ]( )[ ( )〔 ( ) 〕〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ『括弧』がある。
といふ、ことになる。
然るに、
(14)
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に、
①( )
②〈 { ( )[ ( )( )( )〔 ( )( )( ) 〕( )〔 ( ) 〕( ) ]( )[ ( )〔 ( ) 〕〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ「補足構造(括弧)」がある。
といふことは、飽くまでも、「漢文」自体の「性格」である
従って、
(01)(07)(14)により、
(15)
① 漢文を読む。
② 何ぞ人をして韓の公叔に謂ひて「秦の敢へて周を絶つて韓を伐たんとするは、東周を信ずればなり、公何ぞ周に地を与へ、質使を発して楚に之かしめざる、秦必ず楚を疑ひ、周を信ぜざらん、是れ韓伐たれざらん」と曰ひ、又秦に謂ひて「韓彊ひて周に地を与ふるは、将に以て周を秦に疑はしめんとするなり、周敢へて受けずんばあらず」と曰は令めざる。
といふ風に、「訓読」をしようと、
① Dú hànwén.
② hébù lìng rén wèi hángōngshū yuē qín zhī gǎn jué zhōu ér fá hán zhě xìn dōngzhōu yě gōng hébù yǔ zhōu de fā zhì shǐ zhī chǔ qín bì yí chǔ bùxìn zhōu shì hán bù fá yě yòu wèi qín yuē hán jiàng yǔ zhōu de jiāng yǐ yí zhōu yú qín yě zhōu bù gǎn bù shòu.
といふ風に、「音読」をしようと、
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ風に、「音読」をしようと、「これらの、二つの漢文」には、
① 読(漢文)。
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉。
といふ「補足構造」が、有ることになる。
然るに、
(16)
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」を、
① Dú hànwén.
② hébù lìng rén wèi hángōngshū yuē qín zhī gǎn jué zhōu ér fá hán zhě xìn dōngzhōu yě gōng hébù yǔ zhōu de fā zhì shǐ zhī chǔ qín bì yí chǔ bùxìn zhōu shì hán bù fá yě yòu wèi qín yuē hán jiàng yǔ zhōu de jiāng yǐ yí zhōu yú qín yě zhōu bù gǎn bù shòu.
といふ風に、「音読」出来たとしても、「これらの漢文」の、
① 読(漢文)。
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉。
といふ「補足構造」を、「把握」出来るわけではない。
然るに、
(17)
大学(京都帝国大学)に入った二年め(昭和5年)の秋、倉石武四郎先生が中国の留学から帰られ、授業を開始されたことは、私だけではなく、当時の在学生に一大衝撃を与えた。先生は従来の漢文訓読を全くすてて、漢籍を読むのにまず中国語の現代の発音に従って音読し、それをただちに口語に訳することにすると宣言されたのである。この説はすぐさま教室で実行された。私どもは魯迅の小説集『吶喊』と江永の『音学弁徴』を教わった。これは破天荒のことであって、教室で中国の現代小説を読むことも、京都大学では最初であり、全国のほかの大学でもまだなかったろうと思われる(『心の履歴』、「小川環樹著作集 第五巻」、筑摩書房、176頁)。
(18)
大学では、これまでなじみのある訓読という方法によらず、現代中国語の知識を前提として、中国語の音によってそのまま読んでいきます。音そのもののひびきの美しさを体得できるよう、古典・現代のいずれに関心がある場合でも、入学後は現代中国語を充分に習得してください
(京都大学、文学部受験生向けメッセージ)
(19)
「大学に入っても、一般に中国文学科では訓読法を指導しない。漢文つまり古典中国語も現代中国語で発音してしまうのが通例で、訓読法なぞ時代遅れの古臭い方法だと蔑む雰囲気さえ濃厚だという
(古田島洋介、日本近代史を学ぶための、文語文入門、2013年、はじめに ⅳ)
従って、
(16)~(19)により、
(20)
私としては、「大学の、漢文の先生」に対して、
① 読漢文。
② 何不令人謂韓公叔曰秦之敢絶周而伐韓者信東周也公何不与周地発質使之楚秦必疑楚不信周是韓不伐也又謂秦曰韓彊与周地将以疑周於秦也周不敢不受。
といふ「漢文」に於ける、
① 読(漢文)。
② 何不〈令{人謂(韓公叔)曰[秦之敢絶(周)而伐(韓)者、信(東周)也、公何不〔与(周地)発(質使)之(楚)〕、秦必疑(楚)、不〔信(周)〕、是韓不(伐)也]、又謂(秦)曰、[韓彊与(周地)、将〔以疑(周於秦)〕也、周不〔敢不(受)〕]}〉。
といふ『括弧(補足構造)』を、どのやうに「評価」するのかといふことを、機会があれば、質問をしてみたい。