日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(696)「漢文の基本構造」の「表示法」。

2020-08-25 13:59:53 | 漢文の文法

(01)
漢語文法の基礎となっている文法的関係として、次の四つの関係(構造)をあげることができる。
(一)主述構造  主語―述語
(二)修飾構造 修飾語―被修飾語
(三)補足構造 叙述語―補足語
(四)並列構造 並列語―並列語
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、281・282頁改)
従って、
(01)により、
(02)
① 我非必欲以美田養妻子者。
といふ「漢文」を、
① 我*非必欲以美田養妻子者。
と書くならば、
① 我* は、「主語*」である。
同じく、
(01)により、
(03)
① 我*非必+欲以美+田養妻子+者。
と書くならば、
① +以 は、「+被修飾語」であって、
① +田 は、「+被修飾語」であって、
① +者 は、「+被修飾語」である。
然るに、
(04)
① 我非必欲以美田養妻子者也=
① 我非[必欲〔以(美田)養(妻子)〕者]也⇒
① 我[必〔(美田)以(妻子)養〕欲者]非也=
① 我は[必ずしも〔(美田を)以て(妻子を)養はんと〕欲する者に]非ざる也。
然るに、
(05)
 漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)(04)(05)により、
(06)
① 我*非[必+欲〔以(美+田)養(妻子)〕+者]也。
と書くならば、
①[ 〔 ( )( ) 〕 ] は「補足構造」である。
然るに、
(01)(06)により、
(07)
① 我*非[必+欲〔以(美+田)養(妻・子)〕+者]也。
と書くならば、
① ・子 は「・並列語」である。
従って、
(01)~(07)により、
(08)
① 我非必欲以美田養妻子者。
といふ「漢文」を、
① 我*非[必+欲〔以(美+田)養(妻・子)〕+者]也。
と書くならば、その中には、
(一)主述構造  主語―述語
(二)修飾構造 修飾語―被修飾語
(三)補足構造 叙述語―補足語
(四)並列構造 並列語―並列語
といふ「構造」が、四つとも、示されてゐる。
然るに、
(09)
② 君子不以其所以養人者害人=
② 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者]以て(人を)害せ}不。
に於いて、
②「所‐以」は、「複合語」であって、「複合語」といふ「カテゴリー」は、
(一)主述構造  主語―述語
(二)修飾構造 修飾語―被修飾語
(三)補足構造 叙述語―補足語
(四)並列構造 並列語―並列語
といふ「四つ」の中には無い。
そのため、
(10)
「複合語」を表す「記号」として、「‐(接続線)」を導入する。
従って、
(08)~(10)により、
(11)
② 君子不以其所以養人者害人=
② 君+子*不{以[其+所‐以〔〔養(人)〕+者]害(人)}。
である。
(12)
③ 欲呼張良与倶去=
③ 欲〔呼(張良)与倶去〕=
③ 欲〔呼(張良)与(張良)倶去〕=
③ 〔(張良)呼(張良)与倶去〕欲=
③ 〔(張良を)呼びて(張良)と倶に去らんと〕欲す。
従って、
(12)により、
(13)
③ 欲呼張良与倶去。
の場合は、
③ 欲呼張良与張良倶去。
の、     張良 が、「省略」されてゐる。
従って、
(08)(12)(13)の場合は、
(14)
③ 欲呼張良与倶去。
の場合は、
③ 欲〔呼(張良)与(##)倶+去〕。
といふ風に、書くことにする。
(15)
④ 所謂、致知在格物者、言欲致吾之知、在物而窮其理也=
④ 所‐謂、致(知)在〔格(物)〕者、言[欲〔致(吾之知)〕、在〔即(物)而窮(其理)〕]也=
④ 所‐謂、(知)致〔(物)格〕在者、[〔(吾之知)致〕欲、〔(物)即而(其理)窮〕在]言也=
④ 所‐謂、(知を)致し〔(物に)格るに〕在りトハ、[〔(吾ノ知を)致さんと〕欲すれば、〔(物に)即きテ(其の理を)窮はむる〕在るを]言ふ也。
従って、
(15)により、
(16)
④「者」=「トハ」。
④「之」=「ノ」。
④「而」=「テ」。
であるものの、これらの「助詞」は、「太字で、書く」ことにする。
従って、
(08)(10)(16)により、
(17)
④ 所謂、致知在格物者、言欲致吾之知、在物而窮其理也=
④ 所‐謂、致(知)在〔格(物)〕、言[欲〔致(吾知)〕、在〔即(物)窮(其+理)〕]也。
従って、
(01)~(17)により、
(18)
例へば、
① 我非必欲以美田養妻子者。
② 君子不以其所以養人者害。
③ 欲呼張良与張良倶去。
④ 所謂、致知在格物者、言欲致吾之知、在物而窮其理也。
といふ「漢文の基本構造」は、例へば、
① 我*非[必+欲〔以(美+田)養(妻・子)〕+者]也。
② 君+子*不{以[其+所‐以〔〔養(人)〕+者害(人)}。
③ 欲〔呼(張良)与(##)倶+去〕。
④ 所‐謂、致(知)在〔格(物)〕、言[欲〔致(吾知)〕、在〔即(物)窮(其+理)〕]也。
といふ風に、表すことが、出来る。
(19)
【君子】クンシ ① 徳の高い立派な人。
【コ】シ    ② 男子の通稱。
(大修館、大漢和辞典)
従って、
(19)により、
(20)
君子=君(立派な)+子(男子)
である。
従って、
(01)(21)により、
(21)
君子=君(立派な)+子(男子)
君子=君(修飾語)+子(被修飾語)
であるが、
形容詞(修飾語)+名詞(被修飾語)
だけでなく、
 副詞(修飾語)+動詞(被修飾語)
の場合も、
(二)修飾構造 修飾語―被修飾語
であるため、「注意」が、必要である。