日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(687)「敢・敢不・不敢・不敢不」について。<br>

2020-08-17 14:29:36 | 漢文の文法

(01)
[三] 借虎威(戦國策)
① 虎求百獸而食之得狐。
② 狐曰子無敢食我也。
③ 天帝使我長百獸。
④ 今子食我是逆天帝命也。
⑤ 子以我爲不信吾爲子先行。
⑥ 子隨我後觀。
⑦ 百獸之見我而敢不走乎。
従って、
(01)により、
(02)
「括弧」を付けると、
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)。
② 狐曰子無〔敢食(我)〕也。
③ 天帝使〔我長(百獸)〕。
④ 今子食(我)是逆(天帝命)也。
⑤ 子以(我)爲〔不(信)〕吾爲(子)先行。
⑥ 子隨(我後)觀。
⑦ 百獸之見(我)而敢不(走)乎。
従って、
(02)により、
(03)
□( )⇒( )□
□〔 〕⇒〔 〕□
といふ「移動」を行ふと、
① 虎(百獸)求而(之)食(狐)得。
② 狐曰子〔敢(我)食〕無也。
③ 天帝〔我(百獸)長〕使。
④ 今子(我)食是(天帝命)逆也。
⑤ 子(我)以〔(信)不〕爲吾(子)爲先行。
⑥ 子(我後隨)觀。
⑦ 百獸之(我)見而敢(走)不乎。
従って、
(03)により、
(04)
「平仮名」を加へると、
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ひ(狐を)得たり。
② 狐曰く子〔敢へて(我を)食ふこと〕無かれ。
③ 天帝〔我をして(百獸に)長たら〕使む。
④ 今子(我を)食はば是(天帝の命に)逆ふなり。
⑤ 子(我を)以て〔(信なら)ずと〕爲さば吾(子の)爲に先行せん。
⑥ 子(我が後に隨ひて)觀よ。
⑦ 百獸の(我を)見て敢へ(走ら)ざらんや。
然るに、
(05)
【走】ス(呉)、ソウ(漢)
②《動詞》にげる(にぐ)、速足でにげる。
(学研、漢和大辞典、1978年、1269頁)
従って、
(01)~(05)により、
(06)
「文脈」と、「走」の「意味」からすると、
(ⅱ)敢不走乎。
といふ「漢文(反語)」は、
(〃)(逃げたいが、逃げたいといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げない。といふことは、出来るだらうか(、いや、出来ない)。
といふ、「意味」である。
従って、
(06)により、
(07)
①  敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。
②  敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。
③ 不敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。 といふことが出来ない。
④ 不敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。といふことが出来ない。
従って、
(07)により、
(08)
①  敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。
②  敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。
③ 不敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。 といふことが出来ない。⇔ 逃げない。
④ 不敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。といふことが出来ない。⇔ 逃げる。
従って、
(08)により、
(09)
「結果」だけからすると、
①  敢 走。⇔ 逃げる。
②  敢不走。⇔ 逃げない。
③ 不敢 走。⇔ 逃げない。
④ 不敢不走。⇔ 逃げる。
であるものの、
①  敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。
④ 不敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。といふことが出来ない。⇔ 逃げる。
であって、
②  敢不走。⇔(逃げたいが、  逃げたいといふ  気持ちを、押しとどめて、)逃げない。
③ 不敢 走。⇔(逃げたくないが、逃げたくないといふ気持ちを、押しとどめて、)逃げる。 といふことが出来ない。⇔ 逃げない。
であるため、「内容」としては、「同じ」ではない。
然るに、
(10)
③ 昆弟妻嫂、側目不敢視
③ 兄弟や妻や兄嫁は目をそらし、まともに見ることができなかった
(三省堂、明解古典学習シリーズ18、1973年、92頁)
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
①  敢
②  敢不

敢不
に於ける、
③ 不
④ 不
には、
③ ・・・・・といふことが(は)出来ない
④ ・・・・・といふことが(は)出来ない
といふ「意味」が、「含まれてゐる」。
然るに、
(12)
④ ・・・・・といふわけにはいかない
のであれば、
④ ・・・・・といふことは出来ない
従って、
(11)(12)
(13)
③ 不敢加兵於趙(敢へて、兵を趙に加へず)。
④ 不敢不一レ告(敢へて、告げずんばあらず)。
といふ「漢文」は、「簡単に言ふ」と、それぞれ、
③(趙を攻めたいが、勇気が足りず、)趙を攻める。というふことが出来ない
④(告げずに済むことではないので、)告げない。といふわけにはいかない
といふ、「意味」である。
然るに、
(14)
Ken dare not try again.
ケンは再度試みる勇気がない。 - Tanaka Corpus
He dare not say so to your face.発音を聞く例文帳に追加
彼は君に向かってそう言う勇気は有るまい - 斎藤和英大辞典
従って、
(13)(14)により、
(15)
敢」は、「dare not」に、似てゐる


(686)「必不仁」と「不必仁」の「述語論理」。

2020-08-17 11:05:51 | 漢文・述語論理

(01)
①  ∀x(Fx→ Gx)≡すべてxについて、xがFならば、xはGである。≡すべてのFはGである(全部肯定)。
②  ∀x(Fx→~Gx)≡すべてxについて、xがFならば、xはGでない。≡すべてのFはGでない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡(すべてのFがGである。)といふわけではない(部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡(すべてのFがGでない。)といふわけではない(部分肯定)。
然るに、
(02)
(a)
1(1) ∀x(Fx→ Gx) A
1(2)    Fa→~Ga  1UE
1(3)   ~Fa∨ Ga  2含意の定義
1(4)  ~(Fa&~Ga) 3ド・モルガンの法則
1(5)∀x~(Fx&~Gx) 4UI
1(6)~∃x(Fx&~Gx) 5量化子の関係
(b)
1(1)~∃x(Fx&~Gx) A
1(2)∀x~(Fx&~Gx) 1量化子の関係
1(3)  ~(Fa&~Ga) 1UE
1(4)   ~Fa∨ Ga  3ド・モルガンの法則
1(5)    Fa→ Ga  4ド・モルガンの法則
1(6) ∀x(Fx→~Gx) 5UI
従って、
(02)により、
① ∀x(Fx→ Gx)≡~∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)は存在しない≡GでないFは、存在しない(全部肯定)。
② ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
然るに、
(03)
(c)
1 (1)~∀x(Fx→Gx) A
1 (2)∃x~(Fx→Gx) 1量化子の関係
 3(3)  ~(Fa→Ga) A
 3(4) ~(~Fa∨Ga) 3含意の定義
 3(5)   Fa&~Ga  4ド・モルガンの法則
 3(6)∃x(Fx&~Gx) 5EI
1 (7)∃x(Fx&~Gx) 136EE
(d)
1 (1)∃x(Fx&~Gx) A
 2(2)   Fa&~Ga  A
 2(3) ~(~Fa∨Ga) 2ド・モルガンの法則
 2(4)  ~(Fa→Ga) 3含意の定義
 2(5)∃x~(Fx→Gx) 4EI
1 (6)∃x~(Fx→Gx) 125EE
1 (7)~∀x(Fx→Gx) 6量化子の関係
従って、
(03)により、
(04)
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する≡GでないFが、存在する(部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)が存在する≡GであるFが、存在する(部分肯定)。
従って、
(02)(04)により、
(05)
①  ∀x(Fx→ Gx)≡~∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)は存在しない≡GでないFは、存在しない(全部肯定)。
②  ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡ ∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する ≡GでないFが、存在する (部分否定)。
④ ~∀x(Fx→~Gx)≡ ∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)が存在する ≡GであるFが、存在する (部分肯定)。
然るに、
(06)
「漢文の教科書」等で、取り上げられるのは、専ら、
②  ∀x(Fx→~Gx)≡~∃x(Fx& Gx)≡(Fであって、Gであるx)は存在しない≡GであるFは、存在しない(全部否定)。
③ ~∀x(Fx→ Gx)≡ ∃x(Fx&~Gx)≡(Fであって、Gでないx)が存在する ≡GでないFが、存在する (部分否定)。
である。
然るに、
(07)
② 勇者必不仁。⇔
② 勇者は必ず仁ならず。
といふことは、
② ∀x(勇者x→~仁x)⇔
② すべてのxについて(xが勇者であるならば、xは仁ではない)。
といふことに、他ならない。
(08)
③ 勇者不必仁。⇔
③ 勇者は必ずしも仁ならず。
といふことは、
③ ~∀x(勇者x→仁x)⇔
③ すべてのxについて(xが勇者であるならば、xは仁ではある)。といふわけではない。
といふことに、他ならない。
従って、
(07)(08)により、
(09)
② 勇者必不仁。 ≡ ∀x(勇者x→~仁x)≡~∃x(勇者x& 仁x)
③ 勇者不必仁。≡~∀x(勇者x→ 仁x)≡ ∃x(勇者x&~仁x)
といふ「等式」が、成立する。