日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(698)「二畳庵主人(加地伸行 先生)」の「(ド・モルガンの法則、に対する)誤解」について(Ⅱ)。

2020-08-27 18:48:27 | 訓読・論理学

(01)
遂に出た!二畳庵主人漢文法基礎
まだ現物を見ていませんが、幻の書と言われた漢文の解説本が復刊されました。
2chの漢文参考書スレには必ずといっていいほど登場する本。
そして古本では必ず1万円以上する!!
というのも、いわゆる受験参考書だったために一般に流布せず、従って、国会図書館にも蔵書がなければ、地域や大学図書館などにもほぼ蔵書がないというものでした。扱いとしては図録と同じですね。でも、最近は図録は図書館でも見かけるようになりました。知る人ぞ知る、『漢文法基礎』です。久々に「買い」の本が出ましたよ。本は買わない宣言しちゃいましたが、今年はこの1冊だけ買って打ち止めにしようとすら思ってます。たぶんあまり数を刷っていないででしょうから、学術文庫版も早晩、品切れになるかと思われます。買うなら今です(古田島洋介、FC2ブログ、古代中国箚記)。
(02)
豈以為非是、而不貴也
この傍線部分をどう読むかが問題である。
― 中略、―
そこで代数でいこう。「是」をa、「貴」をbとする。「豈」はどうなるかというと、これは反語表現マイナスで表せる。すると、
① -(-a)+(-b)、
② -(-a-b) の二つが考えられる。そこで括弧を解いてみよう。
① の場合、a-b となり、a・bにもとの意味を入れてみると「是、而不貴」である。訳してみると「(薄葬を)よろしいと考えるが、(薄葬を)尊重しない」というわけのわからないことになってしまって、アウト。
② の場合、-(-a-b)=a+b となるから「是、而貴」となる。訳してみると「(薄葬を)よろしいと考えて、尊重している」となって、墨家の立場をはっきりしめすことになる。
だからこの文章の場合、必ず②のように、「豈」(反語表現だから「不」は全体にかからねばならない。
二畳庵主人漢文法基礎、1984年10月、326・327頁改)
従って、
(02)により、
(03)
「二畳庵主人(加地信行 先生)」は、
① ~(~是&~貴)
②    是 貴
に於いて、
①=② である。
と、されてゐる。
然るに、
(04)
(ⅰ)
1   (1) ~(~是&~貴)         A
 2  (2) ~( 是∨ 貴)         A
  3 (3)    是             A
  3 (4)    是∨ 貴          3∨I
 23 (5) ~( 是∨ 貴)&( 是∨ 貴) 24&I
 2  (6)   ~是             35RAA
   7(7)       貴          A
   7(8)    是∨ 貴          7∨I
 2 7(9) ~( 是∨ 貴)&( 是∨ 貴) 27&I
 2  (ア)      ~貴          79RAA
 2  (イ)   ~是&~貴          7エ&I
12  (ウ) ~(~是&~貴)&(~是&~貴) 1イ&I
1   (エ)~~( 是∨ 貴)         2ウRAA
1   (オ)    是∨ 貴          1DN
(ⅱ)
1   (1)    是∨ 貴          A
 2  (2)   ~是&~貴          A
  3 (3)    是             A
 23 (4)   ~是             2
 23 (5)    是&~是          34&I
  3 (6) ~(~是&~貴)         25RAA
   7(7)       貴          A
 2  (8)      ~貴          2&E
 2 7(9)     貴&貴          78
   7(ア) ~(~是&~貴)         29RAA
1   (イ) ~(~是&~貴)         1367ア∨E
従って、
(04)により、
(05)
① ~(~是&~貴)
②    是 貴
に於いて、
①=② である(ド・モルガンの法則)。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
「二畳庵主人(加地信行 先生)」は、
① ~(~是&~貴)
②    是 貴
に於いて、
①=② である。
と、されてゐるが、「ド・モルガンの法則」としては、
① ~(~是&~貴)
②    是 貴
に於いて、
①=② である。
従って、
(02)(06)により、
(07)
ド・モルガンの法則」に、「違反」してゐるが故に、
そこで代数でいこう。「是」をa、「貴」をbとする。「豈」はどうなるかというと、これは反語表現マイナスで表せる。すると、
① -(-a)+(-b)、
② -(-a-b) の二つが考えられる。そこで括弧を解いてみよう。
といふ、「二畳庵主人(加地信行 先生)」の「説明」は、「正しく」はない
然るに、
(08)
(ⅰ)
1  (1)~(~是&~貴)  A
 2 (2)  ~是      A
  3(3)     ~貴   A
 23(4)  ~是&~貴   23&I
123(5)~(~是&~貴)&
       (~是&~貴)  14&I
1 3(6) ~~是      25RAA
1 3(7)   是      6DN
1  (8)  ~貴→ 是   37CP
(ⅲ)
1  (1)  ~貴→ 是   A
 2 (2)  ~是&~貴   A
 2 (3)     ~貴   2&E
12 (4)      是   13MPP
 2 (5)  ~是      2&E
12 (6)  ~是&是    45&E
1  (7)~(~是&~貴)  26RAA
従って、
(08)により、
(09)
① ~(~是&~貴)
③     ~貴→ 是
に於いて、
①=③ である。
従って、
(06)(08)(09)により、
(10)
① ~(~是&~貴)
②    是∨ 貴
③   ~貴→ 是
に於いて、
①=②=③ であるが、因みに、
  ②=③ は、「含意の定義」である。
従って、
(06)(10)により、
(11)
ド・モルガンの法則」、並びに、「含意の定義」により、
① ~(~是&~貴)
②    是∨ 貴
③   ~貴→ 是
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(02)により、
(12)
③ ~貴→是
といふことは、
③(薄葬)を「尊重しない」ならば、(薄葬)を「ベスト(The best)」とする。
といふ、ことである。
従って、
(11)(12)により、
(13)
① ~(~是&~貴)
といふことは、
①(薄葬)を「尊重しない」のに、(薄葬)を「ベスト(The best)」とする。
といふ、ことであるが、もちろん、このことは、「矛盾」である。
といふ、ことである。
然るに、
(14)
「翻訳(小林勝人、孟子、1968年、224頁)」だけを示すと、「次(15)」のやうになる。
(15)
聞けば、夷子は墨翟の説を信じているそうだ。あの学派では、葬式をなるべく手薄(質素)にして倹約するのが主義だというが、夷子もやはりこの薄葬主義で、天下の風俗を改革しようと考えておるに相違ない。だから、どうしてこれ(薄葬)を正しくないのだからといって尊重せぬ筈があろうか。ところが、私の腑に落ちないのは、夷子が自分の親を葬ったときには、たいそう手厚くしたとのことだ。それでは、つまり自分のふだん賤しんでいるやり方(儒家の厚葬主義)で、親に仕えたことになる。〔なんと矛盾したおかしな話ではないか。〕
然るに、
従って、
(02)(11)~(15)により、
(16)
① ~(~是&~貴)≡豈以為非是、而不貴也。
といふことは、
① 夷子は、自分の親の葬儀では、(薄葬)を「尊重しなかった」のに、その夷子が、(薄葬)を「ベスト(The best)」とする。
といふことは、「矛盾」である。
といふ、ことである。
然るに、
(11)(16)により、
(17)
仮に
① ~(~是&~貴)
②    是∨ 貴
③   ~貴→ 是
に於いて、
①=②=③ ではない、のであれば、
① ~(~是&~貴)≡豈以為非是、而不貴也。
といふことは、
① 夷子は、自分の親の葬儀では、(薄葬)を「尊重しなかった」のに、その夷子が、(薄葬)を「ベスト(The best)」とする。
といふことは、「矛盾」である。
といふ風には、言へない
然るに、
(07)により、
(18)
もう一度、確認すると、
「二畳庵主人(加地信行 先生)」は、「ド・モルガンの法則」を、「理解」してゐない
従って、
(01)(11)(16)(17)(18)により、
(19)
残念なことに
① ~(~是&~貴)。⇔
① 豈以為非是、而不貴也。⇔
① 夷子は、自分の親の葬儀では、(薄葬)を「尊重しなかった」のに、その夷子が、(薄葬)を「ベスト(The best)」とする。といふことは、「矛盾」である。
といふことが、「漢文法基礎幻の名著と言われた漢文の解説本)」には、書かれてはゐない