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バルトーク:管弦楽のための協奏曲、他

2014-09-07 21:37:16 | CD


ベーラ・バルトーク:
・管弦楽のための協奏曲 Sz.116
・舞踊組曲 Sz.77

セルゲイ・プロコフィエフ:
・交響曲第1番 ニ長調 作品10「古典」

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団

ポリドール: FOOL-23091



 「オケコン」については以前にルトスワフスキのオケコンを紹介しましたが、やはりバルトークのオケコンこそ総本山でしょう。

 ハンガリーの作曲家バルトークは第二次世界大戦の開始によって戦火を避けるためにアメリカに亡命しますが、現地での知名度が無かったこと、本人の性格が頑固でひねくれていること、白血病を患ったことなどが重なって、精神的にも肉体的にも作曲ができる状態ではありませんでした。それを見かねた多くの人がなんとか根回しして、その結果ボストン交響楽団がバルトークに作曲の依頼をし、たった2ヶ月で完成したのがこのオケコンです。その作曲にはバルトークの盟友コダーイの同名の曲もヒントになっているようです。

 バルトークはハンガリーの民謡を研究し、それを解体し尽くして西洋の知性で再構築した非常に人工的な音楽を作っています。それはさながら、ハートウォーミングなおとぎ話が狂気のほとばしるサイコホラーに作り替えられたくらいの魔改造。でもそういう音楽はヨーロッパでは有り難がられても、アメリカではウケないでしょう。アメリカではもっとタノシクてゴキゲンな音楽が求められているのです。そこでバルトークはオケコン作曲にあたってこう考えたに違いありません。「オレ様の音楽がアメリカ人に理解されるとは思わんが、上っ面だけは派手に作ってやるからせいぜい熱狂するがいい」と。そして出来上がった音楽は、まるで肉の塊をミンチにして添加物をたっぷりと突っ込んだものをわざわざ元の肉の形に成型した偽装食品のようなオケコンなのでした。したがって、このオケコンを演奏する場合はヒネクレては駄目で、能天気に演奏してこそバルトークが狙った効果が得られるのではないでしょうか。



 動画は恐らくディスクと同じ音源のショルティの演奏。なかなかのヒートアップぶりで、まさにバルトークの(ヒネクレた)狙い通り。私が最も気に入っているのは第2楽章の「対の遊び」。二本のトランペットが二度の音程で吹くことでうねりを起こすなんてスパイスが効きまくっています。第4楽章もなかなかで、ショスタコーヴィチの交響曲第7番の痛烈なパロディは有名。そういえば冒頭のオーボエの旋律でファとシの増4度の音程が強調されていて、こういうの好きだなあと思っていはいましたが、よく聴いてみるとほとんど琉球音階(ド - ミ - ファ - ソ - シ)みたいになっているのに先日気がついてビックリしました。全体的に聴きやすい曲ですが、よく聴くとおかしなことが数多く仕込まれていて、初心者からマニアまで楽しめましょう。

 カップリングされたプロコフィエフの交響曲第1番「古典」は作曲者が言うように二十世紀のハイドン風音楽。プロコフィエフの作風は民族主義、原始主義、新古典主義、社会主義リアリズムなどを横断していますが、この曲が新古典主義の範疇に含まれるかどうかはわかりません。技術的な試みを感じることはあっても、作曲者のポリシーに関わるものまでは感じられないからです。けれども、例えば第3楽章で聴かれるような意表をついた転調はプロコフィエフの得意技。音楽における「キュビズム」と言われるように、予期せぬ方向に次々に音楽が傾斜する感覚は新鮮です。

 二十世紀を代表するバルトークとプロコフィエフの比較的聴きやすい作品のカップリングですが、じっくり聴くと二十世紀音楽の泥沼が垣間見えるというなかなかトリッキーなディスクと言えましょう。


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