心理カウンセリング ウィル

ご相談はホームページの予約申し込みフォームからお願いします。
 

虐待する親の心の病  №273

2019-11-06 15:15:50 | 公認心理師
 報道番組で虐待のニュースや記事を見聞すると、いたいけな乳幼児に対して、どうしてあんなに残酷なことができるのかと疑問を抱く人が多いかと思います。
 暴力や差別、怒りやストレスの発散は、より強い者から弱者に向かって行われるのが常です。会社で上司に𠮟責された人、顧客や得意先からクレームを受けた人が家に帰ると、パートナーの些細な言動にストレスや怒りを発散してしまいます。家事や子育てでストレスを抱えている弱者は、パートナーから受けた怒りの矛先に反論することができずに、つい、泣き騒ぐことで欲求を押しつけてくる乳幼児に転嫁してしまうことになりがちです。このようにして、身近な大人を頼るしか生存の道がない乳幼児が、被害を受けるはめになるのではないでしょうか。もちろん、我が子の愛くるしい笑顔に癒やされる人の方が多いかとしは思いますが・・・。
 先日(2019.11.4)の日経新聞に、虐待に潜む親の「心の病」という記事がありました。記事によると、子育てに追われ、抑うつ傾向が強いと答えた人の脳をfMRI画像で診断すると、相手の気持ちを読み取る能力等の低下が見られたということです。こうした能力の低下が起きると、家族や地域の人達に子育ての相談をしたり、互いに協力あったりしづらくなる恐れがあり、結果的に自分を追い込み、虐待につながることがあると指摘しています。
記事では、保護者の精神疾患も乳幼児虐待の重要なリスク因子であるとしています。自閉症スペクトラム症の親の場合はネグレクトに、ADHDの親の場合は身体的虐待との間に統計的に有意な関連が見られたとあります。もちろん、精神疾患が虐待に結びつくという事例はあくまでごく一部で、むしろ孤立して精神的に追い詰められるなど、様々な要因が絡むことは言うまでもありません。虐待は、保護者のSOSでもあると考え、精神疾患が潜んでいないか、追い詰められていないか、周囲の人達が気付いてやることも大切なことです。
 「虐待の世代間連鎖」ということも、よく語られます。海外の調査では虐待を受けたことのある人の3分の1は、自分の子どもを虐待するという報告がありますが、一方で3~4%でに過ぎないという報告もあります。しかし、幼い頃に実際に虐待を受けた18歳~25歳の男女の脳を調べた結果、脳の一部(感情や思考を制御する前頭前野)が萎縮していたり、共感や意思決定、集中力に関係する部分の容積が減っていたということが明らかになっています。虐待が心に深刻な傷跡を残すことは確かなことです。ただ、医師やカウンセラーによる心理療法により治療は可能であり、世代関連差のリスクを減少させることはできるのです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 孤独という病 №272 | トップ | 認知症になりやすい性格はあ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿