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グリーフ(悲しみの)ケアとしての送り人 №178

2013-03-21 17:27:29 | インポート
 義祖母の葬儀に納棺師を依頼しました。その納棺師は映画「送り人」のモデルとなった方のお弟子さんの一人だということでした。彼は、持参した二枚の薄衣を天井から垂らし、仏壇をしつらえ仏具を並べると、遺族の見守る中で、ぬるま湯で暖めたタオルで丁寧に遺体を拭き清めはじめました。
 「送り人」に促され、遺族が全員でが少しずつ遺体を拭き清めていくと血行が戻ったかのように手足が柔らかくなってきました。「送り人」は、遺族とともに組んでいた指をほどき、腕を広げさせると、シーツで遺体を隠しながら、遺体を遺族の目にもさらすことなく、丁寧にしかも手早く死装束に着替えさせました。そこには、たとえ遺族に対してでも遺体を晒さないという、死者に対するリスべクトがうかがえました。
 次に、遺族に手伝わせながら、「送り人」は義祖母の爪にマニキュアをし、髪の毛をシャンプーし、薄化粧を施し口紅をひいていきます。それらの作業一つ一つが義祖母の「死」を遺族が受け入れることにつながることになります。105歳の長寿だった義祖母だが、生前マニキュアをしていたの見たことはないので、初めてだったのではないかと思いますが、それはそれで、遺族の心をなごませました。遺族は、死者が生前の面影を取り戻し、まるで眠っているような穏やかな表情で旅立っていくことに、何より温かい気持ちになります。
 白い死装束を左前に合わせ、上帯を締め、手甲、脚絆を着け、足袋を履かせます。六文銭を入れた頭陀袋を首に掛けると納棺準備が終わり、全員で納棺します。時間にして40分位でしたが、「死」と十分に向き合い、とても貴重な時間を過ごすことができました。
 「送り人」の仕事は、ただ無造作に棺に納めればいいというわけではありません。手際よく作業を進め、遺族が死と向き合う大切な一時でもあるので、可能な限り遺族に参加を促し、十分な別れができるように努めるのも「送り人」の役目です。厳粛でありながら、おだやかな雰囲気を作り出すことができるかが、「送り人」の力量といわれますが、まさにそのような方でした。有り難うございました。
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