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ストレスに麻痺するという残酷な救い

2012-08-20 15:00:46 | インポート
 ヒトは恐怖・驚愕の体験に遭遇するとノルアドレナリンを分泌し、闘争か逃避かの態勢に入り、ストレス体験を終息させるための行動に入ります。しかし、長いこと回避不能のストレスにさらされると、辛い感情や痛みの感覚を失い、ストレスを回避する行動を止めてしまいます。この無痛覚の状態は脳内麻薬様物質(オピオイド)の作用によるものといわれています。
 この脳内麻薬様物質(オピオイド)の分泌は、闘争も回避もできない深刻なストレスにさらされた生物には「最期にもたらされる残酷な救い」といわれています。精神活動の麻痺や感情鈍麻によって、完全な降伏と受身の態勢をとり、現実感のなさによって、生物はあらゆる痛みから解放されて静かに「捕食者の餌食となる」のです。
 「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる状態がまさにこの状態だといわれています。長時間、身体に負荷をかけ続けることで、エンドルフィンと呼ばれる脳内麻薬様物質(オピオイド)が分泌されて苦しみが和らいでいくわけです。
 リストカット等の自傷行為や過食症の人が嘔吐を繰り返したりすることによっても脳内麻薬様物質(オピオイド)の濃度の上昇がみられるということですから、こうした行為は深刻なストレスから逃れるために無意識のうちに繰り返すものと思われます。
 ただ、この物質はその名のとおり、麻薬と同様に禁断症状があり、より強烈な刺激を必要とし、自分で自分の命を危険に晒したり、自分の身体や心を痛めつける行為等をなくしては生きていけなくなる危険はらんでいるといわれています。
 また、大脳辺縁系の扁桃体、海馬などにダメージを与えることで知られていて、扁桃体に損傷を受けた個体は、「恐ろしいもの」「いやなもの」に直面しても、避けようとしなくなるともいわれています。 
感覚を遮断することでしか我が身を守れない状態は、「救い」と言うにはあまりに過酷です。