国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

文民という言葉

2007-05-04 00:10:14 | 時事問題
5月3日のNHKの憲法記念日特番を少しだけ見た。三浦朱門氏が改憲論を論じていた。三浦氏は現行憲法が翻訳調であることを指摘していた。憲法前文が例として挙げられるのかと思いきや、「文民」という言葉を指して、こんな言葉は憲法発布まで聞いたことがなかった。現行憲法のベースには英文があるのだと論じていた。

三浦氏が指摘しているのは、憲法第六十六条第二項「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」の中の「文民」である。「文民」は日常語でないことは確かであるが、20数年前私が大学生の頃、「文民統制」という風に普通に使われていたように思う。

ところで「文民」について、政府はどのように解釈しているのだろうか。平成13年5月22日付の平岡秀夫衆議院議員(民主)の質問趣意書がネット上ですぐ検索できた。

この際「文民」についても定義がなされている。
「「文民」は、その言葉の意味からすれば、「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解される。」
「政府は、従来から、国政が武断政治に陥ることを防ぐという同項の規定の趣旨に照らして、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」もまた、同項にいう「文民」には該当しないと解してきている」

平岡議員の質問は、中谷元防衛庁長官(当時)が自衛隊出身であることに関して、この条項との関連を尋ねたのであった。これに対して「元自衛官は、過去に自衛官であったとしても、現に国の武力組織たる自衛隊を離れ、自衛官の職務を行っていない以上、「文民」に当たると解してきており、お尋ねの国務大臣の任命が憲法第六十六条第二項に違反するとの御指摘は当たらない」と返答がなされている。

さらに憲法第六十六条第二項に「文民」が入れられた経緯もすぐに検索できた。

極東委員会の昭和21年7月2日付「日本の新憲法についての基本原則」には、国務大臣は文民(civilian)でなければならないとする原則が盛り込まれていた。しかし第9条第2項で軍隊保持を禁じられているので、文民条項はいったん置かれないこととなった。
しかし「第9条第2項に「前項の目的を達するため」という語句が加えられていたことに極東委員会が注目したため、文民条項問題は再浮上することとなった。すなわち 9月21日の会議で、中国代表が、日本が「前項の目的」以外、たとえば「自衛という口実」で、実質的に軍隊をもつ可能性があると指摘した。そのため、検討の結果、同委員会は文民条項の規定を改めて要求することになった(同月25日決定)。同委員会の意向は、ホイットニー民政局長から吉田首相に伝えられ、貴族院における修正により、憲法第66条第2項として文民条項が追加された。」(http://210.128.252.171/constitution/shiryo/04/126shoshi.html)

そしてさらに次のように付言されている。「なお、「文民」とは、このとき貴族院小委員会でcivilianの訳語として考案された造語である。」

三浦朱門氏の発言には確かな根拠があったのだと分かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする