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パナマにおける謎の疾病

2007-05-07 00:06:52 | 時事問題
6日付のニューヨークタイムズは「From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine 」という長文の記事を掲げていた。(http://www.nytimes.com/2007/05/06/world/americas/06poison.html)「中国からパナマへ 毒入り薬の痕跡」とは穏やかではない。

この記事のテーマは、公衆衛生の専門家の間では周知のことらしい。愛知県衛生研究所が詳しくまとめている。
「本年(2006年)9月以降、パナマで多数の死者が出た謎の疾病の原因について、米国疾病予防管理センター(CDC)から「CDCがパナマの謎の疾病の解決を支援」と題するニュースが配信されました。
CDCの国立環境衛生センター(NCEH)の科学者らは、本年9月以降、パナマで多数の死者(10月26日現在、パナマ保健省の発表では34名の死者)が出た謎の疾病について、パナマ社会保障機関(政府機関)が製造した無糖咳止め・抗アレルギーシロップ剤に混入されたジエチレングリコールが原因であったことを突き止めました。疾病は下痢と発熱で始まり急性腎不全、麻痺、死亡に至るもので、患者の多くは60才以上の男性でした。…
パナマの事件が、故意なのか、製造管理不備に起因するものであったのか、その原因の所在は公式発表を待たねば解りませんが、有識者からは製造所における品質管理、製造管理が不十分であったのではないかと指摘されています。」
(http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/deglc.html)

タイムズの記事は最後の部分にかかわる。すなわち問題のジエチレングリコールは、グリセリンと偽って販売されたものであったのだ。ジエチレングリコールとグリセリンは外見が似ていて、何しろ低コストなのである。だがジエチレングリコールは人を殺すのだ。
「(ジエチレングリコールは)水溶性の無色無臭の粘稠な吸湿性液体で、甘味があります。医薬品原料、食品添加物としての使用が認められている国はありません。工業用溶剤、ブレーキ液、不凍液、燃料添加剤などさまざまな用途に用いられています。中毒例の多くは経口摂取によるものであり、中毒症状は吐き気、嘔吐、頭痛、下痢、腹痛で、大量のジエチレングリコールに暴露されると腎臓、心臓、神経系に影響を及ぼします。ヒトに対する経口致死量(LD50)は1000mg/kg体重です」

タイムズはこの販売経路を突き止めている。パナマ(Mediocom)→バルセロナ→(Rasfer)→北京(NSC Fortune Way)→江蘇省の泰興市甘油廠と辿っていったのである。(括弧内は会社名)

偽グリセリン(ジエチレングリコール)は中国国内でも、パナマと同様の問題を引き起こしていることも示されている。中国の医薬品の規制が非常にずさんであることが(「ブラックホール」と表現されている)改めて指摘されている。しかも途中で仲介をした会社は、一つとして商品の中身をチェックしていない。さらにパナマ事件に対する中国当局の姿勢が及び腰であるらしいことも指摘されている。またかと暗澹たる気持ちにならざるを得ない。
コメント
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