石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年
家が貧しく総持寺という寺に小僧としていった十歳の男の子。了念という名前をつけられ、味噌すりの仕事をすることになりました。
ところが、このお寺には何百人もの坊さんがいるので、味噌すりといっても大変な作業。毎日毎日、蔵の中に座っての味噌すり。おかげで着物も顔をもいつも味噌だらけで、口の悪い坊さんから「みそすりこぞう。小さなみそすりこぞう」と言って、わらわれていた。それでも了念は嫌な顔をせず働いていた。
了念は言いつけられていた仕事のほかに、寺の境内の片隅にある古ぼけた地蔵さんのまわりを、掃除することに決めていた。
ある日、了念の姿が見えくなって、どこからともなく別な小僧が現れ、味噌すりをするようになった。仕事がつらくなって、了念がかわりの小僧を置いていったと思った坊さんたちが、何を聞いても返事はしない。
何日かたって、ひょっこり了念があらわれ、以前のように味噌すりをはじめた。誰に何を聞かれても黙って笑っていた了念でしたが、地蔵の顔が味噌だらけになっているのは、お前だろうと問い詰められ、隠しきれなくなってしまいました。
了念は、「善行寺へおまいりできるように地蔵さんにお願していたところ、地蔵さんが、かわりに味噌をすってやるから、善行寺に行ってこい」というてくれ、善行寺にいってきたことを話します。
この話を聞いた坊さんたちは、お地蔵さんへおまいりにとびだしました。顔にはやっぱり味噌をつけたまんま。それから「みそすり地蔵」とよばれたいう。
地蔵が出てくる昔話は、仏教の影響ですから、外国にはないことが納得できます。