どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

お百姓が地主の旦那と昼めしをたべた話

2020年12月29日 | 昔話(ヨーロッパ)

      大人とこどものための世界のむかし話19 ソビエトのむかし話/田中泰子:編訳/偕成社/1991年初版

 

 金も力もなくても知恵しだいです。

 

 祭りの日にお百姓たちが、あれこれ話していると、金持ちの村のよろず屋がやってきて、「おれさまはなんと、地主の旦那の部屋へでいりしてなあ・・。」と自慢話。

 それをきいた村の一番貧しい男が「地主の旦那の部屋に出入りしたって、それがなんだよ。おれなんか、こっちがいきたきゃあ、いつだって地主のところで昼めしにありつけらあ。」というと、どうしても信じないよろず屋が、黒毛と栗毛の馬をかけて、もし負けたら、ただ働きすると百姓に約束をします。

 みんなに賭けの証人になってもらったお百姓は、さっそく地主のところに出かけて行きました。

 お百姓は、さも秘密を打ち明けるように地主にいいました。

 「旦那、ちょっくら内緒でたずねてえんですが、おらのぼうしぐらいの大きさの金のかたまりは、いくらぐらいするもんでしょうな?」

 地主はそれをきくなり、召使いに食事をもってこさせ、すきなだけ飲ませました。お百姓がたらふく食べ終えると、金塊を運んできたら小麦粉と五十ペイカをやるといいます。ところがお百姓は「いや、わしは金なんかもってやせんですよ。ただ、たずねただけですに・・」。

 地主が「あほう、でていけ!」とどなると、「なんの、わしがあほうなもんかね? だいじなお客さんのように、ごちそうしてくれたんは、おまえさんのほうではないかね! それに、おまえさんのとこで昼めしをくったおかげで、よろず屋から、黒毛と栗毛の馬をもらえるだから」と、まずしいお百姓はそういいながら、ごきげんででていってしまいます。

 

 この本が出版された1991年は、ソビエト連邦が崩壊した時期。30年ほど前の話です。


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