どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

つるかめ

2016年12月17日 | 私家版
 おはなし会で、なんとも面白かった藤田浩子さんの「つるとかめ」。
 もとのテキストで、悩ましいのは方言。流れの中で理解できるのですが、少し工夫が必要なようです。

 最後は(かもとりごんべえ/ゆかいな昔話50選/稲田和子・編/岩波少年文庫/2000年初版)から、いただいて、自分用に構成してみました。

 この手の話は、やっぱり聞くのが一番のようです。
 お住いの図書館やグループでのおはなし会も、よく気をつけていれば探すこともできます。
 これまで興味がなかった方も、一度足を運べば、何かしらの新しい発見ができると思うのですが・・・。

 
 むかし、お大尽の家の一人息子が嫁さまもらうことになったんだと。
 なにしろ、お大尽の屋敷だから広い屋敷にお膳ずらあーと並べて、お客さまたくさんよんだんだと。
 床の間にはつるかめの置物、おきなおうなの人形飾って、床の間の前には、婿さまと嫁さまが座って、呼んだ人たちは まあ 飲んだり食ったり、歌ったり踊ったりしてたいそうにぎやかなことであったと。
 振る舞いがおわり一人帰り二人帰り、しまいには 皆お客様帰ってしまい、床の間の前に婿さまと嫁さまの二人きりになってしまったと。
 むかしのことであったから、婿さま、その嫁さまの顔、まだ ろくに見ていなかったんだと。
 おらの嫁さま、どうした顔しているかなあと思って 綿帽子の下の顔、のぞいてみると、まあ めんこいこと めんこいこと それでまあすっかりうれしくなっちまってな
「あね あね もう だれもいなくなったぞ そんなに離れていることねえ もうちょっとこっちにこらんしょ」と、こうゆったんだと。
すると、嫁さま 座布団の上に、座ったきり
「そんなことゆったって おらあ 恥ずかしいども」
と、いいながら ちょこっと婿さまの方によってきたと。
「いいから、だれもいねえんだから、もっとこっちに こらんしょ」
と婿さま、よばったが
「そんなことゆったって おらあ 恥ずかしいども」
といいながら またちょこっと 婿さまの方にきたんだと。
それでもういちど
「もうちっと こっちに こらんしょ」
と婿さまがいうと
「ほだこと ゆったってえ」
と言いながら、嫁さま すっと 寄ってきて、婿さまと嫁さま ぴたーっらこと くっついてしまったと。

 それを見ていた床の間のおきなとおうな、熊手をもっている爺さまがなあ、ほうき持っている婆さまの方みてなあ
「婆さま 婆さま あれ わけえもんは ええなあ あんなに ほれ ぴったらこと くっついてしまってよお おめえも そんなとこで 箒なんぞ持ってねえで もうちっと こっちゃきたらよかっぺ」
「なあにまず爺さま いい年こいて なあに語るんだべ ほんにい」
といいながら、婆さま ちょこっと こっちゃよってきたと。
「なあに おめえだって いまさら 恥ずがしがる年でもなかんべ もうちっと こっちゃきたらよかんべ」
「ほんに まず 爺さまは・・・」
と、言いながら、ちょこっと こっちゃ よってきてなあ それで とうとう 爺さまと婆様 ぴたらあーつこと くっついてしまたんだと。

 それを見ていたつるとかめ つるがかめに ゆったと
「見てみろ 見てみろ 若えもんはいいなあ あれ 二人とも ぴたらーつこと くっちいてちまってよ それにしても ほれ かめさん おめえも まだ独り者のようだし、おらの嫁さまになんねえが。そしたら高い空につれてあがって、世界中をみせてやる」
と こうゆったんだと。すると かめ
「うんにゃ」
と首をふる。
「なしてだ おらの この細くて なんげえ口ばし 気にいらねえだが」
「うんにゃ そんなことでねえ」
「それじゃあ このほそくて なんげえ首 気にいらねえだが」
「うんにゃあ そんなことでねえ」
「それじゃあ このほそくて なんげえ足 気にいらねえだが」
「うんにゃあ そんなことでねえ」
「それじゃあ なに 気にいらねえんだ」
「おめえさまが、気にいらねえわけではねえんだけどよ むかしから つるは千年、かめは万年ていうべ。おめえと一緒になったって、おまえの死んだ後で、九千年も、ひとりでくらすのは いやなこった」
と こうゆったんだと。

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