観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

ネズミ捕りは奥が深い

2014-10-23 18:24:36 | 14
修士二年 靍田隼人

 私は修士課程2年で研究活動に没頭中だが、その傍ら調査道具の購入や調査費を稼ぐためとフィールドワークの技術向上のため、野生動物調査のアルバイトも行っている。今回はそこでの経験について、特にネズミの捕獲について書きたいと思う。
 今年になって、学部3年の頃からいつもお世話になっているプロの調査屋さんから「お前もそろそろネズミ捕りくらい出来るようになってもらわなきゃなー」と言われ、ひたすらネズミ類の捕獲をさせてもらう機会をいただいた。
 調査は、シャーマントラップという捕獲器を調査範囲内に決められた個数を自由に仕掛けて、調査範囲内に生息するネズミ類を全種捕獲することを目的としてやっている。細やかな手ほどきなどは受けず、とにかくネズミもしくはヒミズの気持ちになりきって通り道や坑道に罠を仕掛けた。すると、ネズミはちゃんとたくさん獲れていた。しかし、獲れたのは全部アカネズミという種類だけだった。しかも、ヒミズ類を狙ってかけた罠にもかかわらずアカネズミが獲れていた。「アカネズミばっかとってもしょうがないんだぞ」と言われ、考え込む。
 その後も試行錯誤しながらやっていくと、いくつかわかってきたことがある。ひとつは、ネズミの種類によって獲れる環境がある程度決まっていること。もうひとつは、環境ごとに、そこに優占している種類がいて(大概アカネズミかヒメネズミ)、罠をネズミの通りそうな場所に散在してかけると優占している種しか獲れないことだ。この二つが分かってからは、優占種以外の狙ったネズミがいそうな環境にまとめて罠をかけることによって、他のネズミがある程度獲れるようになってきた。狙ったネズミが狙った場所で獲れたときはとても嬉しかった。
 少し上達していい気になっていたが、世話になっているプロの調査屋さんが私の代わりに罠をかけると、もっと狙い通りにネズミを捕獲しているように感じた。多分それは経験の違いもあるが、もっと私の考え至っていない事を考慮しているに違いないと感じた。いつもあまり教えてくれないのだが、少し話を聞かせてもらうと、観察もしていないネズミのかなり詳細な行動を想像して罠をかけているようだった。ネズミの研究をしている訳ではないのに、ネズミという生き物のことをよく理解している感じがしてすごいと感じた。
 研究をおこなっていくうえでもこのような経験は非常に刺激になるし、生き物のことをもっと自分も理解したいと感じさせられた。


ヤチネズミ

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