観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

島での出会い

2013-06-20 23:05:55 | 13.6
3年 須藤哲平

 2013年3月、大学2年生の終盤にあたる春休み、私は金華山島にいた。島中をシカやサルたちが自由に歩き回る愉快なところだ。私は毎年行われるシカの調査を手伝うためにこの島に来た。およそ1週間の滞在でシカのセンサス、死体探し、捕獲を行った。研究室所属前の私にとってはこれが初めてのフィールドワークだった。山を歩き回り、シカを探し出すのは少年的な冒険心を駆り立てられた。
 ただ、このとき私は野生動物学を勉強したいと意気込んだものの何をすればよいかは漠然としていた。この調査には麻布大学の外部からも、他大学の先生、学生・大学院生、NPOの方々など多くの人が参加した。そうした人たちからは多くの研究や自然の話を聞くことができた。NPOの方々のお話を聞いて「あ、こういう生き方もあるのか!」と自分の中の世界を広げることができた。また、他大学の院生の方々は気さくに話してくれたし、ともに楽しくフィールドワークをすることができた。彼らの知識の深さや意識の高さに圧倒され、憧れを抱いた。
 私は調査に行く前に、先生と相談して金華山島で調査をすることになっていたので、この調査に参加したのはその準備というつもりだった。だが、実際に得たのはそれ以上にものだったと思う。あの島での出会いが私の研究への情熱を灯してくれた。それを燃やし続けて研究をがんばりたいと思う。



2013.3 黄金山神社の前で

百聞と一見

2013-06-19 23:08:23 | 13.6
3年 銭野 優

 私の通っていた幼稚園ではヤギを飼育していた。私はこれがきっかけで動物に興味を持ち始めたのだが、都市部に住んでいたので、虫やザリガニを採るなどといった経験はほとんどなく、動物といえばテレビで見たものだけであった。
 そんな私が大学で野鳥研究部に入り、四季の変化を意識するようになった。意識するというより、「味わう」というほうが近いかもしれない。春を告げるように囀り始めるヒバリやメジロ、夏の山に響く杜鵑(とけん)の声、秋の終わりに南へ渡るタカ類、冬には各地の川や海に飛来するカモ等、それまで自然を意識して見ることのなかった私にとって生き物のリアルな生活を覗き見ることは実に新鮮だった。テレビで見たり、本で読んだりしていたことが目の前で繰り広げられるのをみて夢中になってしまった。
 「百聞は一見に如かず」であるが、これにはまだ先があるそうで、「百見は一考に如かず」「百考は一行に如かず」「百行は一果に如かず」と続くらしい。これらは研究活動そのもののことだと思う。私はフィールドワークをおこなう者として「見えないものを見る」ことや「見つけ」たいと思う。しかし、動物相手ではすべてこちらの都合というわけにはいかず、そのためには工夫や考察が欠かせない。そのようなときでも、細やかな「一見」の喜びを大切にしたい。明日は何が見られるか、楽しみである。