観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

いもむし・けむし

2013-08-23 23:46:03 | 13.8
3年 望月亜佑子

 「毛虫は、触ってはいけないもの。」そんな私の中での常識が覆されたのは大学1年の6月だった。森林整備を行うサークルに入り、フィールドにしている嵐山という森で、当時4年生だった野生動物学研究室の神宮さんに、人差し指ほどもある大きな毛虫を紹介された。その毛虫はエメラルドグリーンの胴体に、水色の目のような模様がついていて、青みがかった白い毛が全身に生えている。後の足が吸盤になっていて、手に乗せると何とも言えずかわいかった。名前は「クスサン」というらしい。そのとき思った。「ああ、毛虫って触れるんだ。触ったからこそ分かるかわいさもあるんだ」と。


私の手の上のクスサンの幼虫 2013.6 神奈川県嵐山

 このかわいさに魅せられて以来、毎年6月、クスサンが出てくる時期を楽しみにしている。
 最近、アファンの森と神津牧場で、白い毛虫をみた。遠くから見れば、何かの繊維か、カビのように見えるし、近くで見ても、とても毛虫とは思えない。真っ白。触ってみれば、意外と柔らかく、白い粉が手につく。ケースに入れてみたら、白い繊維のようなものはとれて、ケースが真っ白になってしまった。それでも、幼虫は真っ白で元気に動いている。調べてみるとどうやら「アゲハモドキガ」の幼虫らしい。(ミツクリバチの幼虫も似ているらしいが。)なんともいえない、変な「いもむし」だった。
 緑色のクスサンの幼虫は茶色いガになるし、真っ白なアゲハモドキガの幼虫は真っ黒なガになる。幼虫、蛹、成虫という変化も不思議だし、幼虫によって形も色も模様も違うということもまた、不思議である。
 はたから見たら、手に乗せている図というのは奇妙な光景なのかもしれないが、今の私はちっとも奇妙だとは思わない。なんとなく勝手に「常識」としていることがたくさんあるのだと思う。それを教えてくれたのが、毛虫だったのだと思う。「触れてはいけなかったもの」に触れて、実際に間近でみて、そのかわいさに魅せられた。
 「いもむし図鑑」を開けば、知らない変な色や形をした「いもむし・けむし」がたくさんいるようだ。フィールドに出て、たくさんのいもむし・けむしに出会い、手がかぶれない程度に、ふれあってみたいと思う。

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