4年 小森康之
研究室に入り、2度目の年明けを迎えんとするこの頃、2年間の写真を整理すると、随分といろいろな動物を目にしてきたなと感じた。浅間山のカモシカ、下北半島のニホンザル、アファンの森の沢山の昆虫たち。どれも胸躍る発見ばかりであったが、元々爬虫類と両生類が特に好きな私にとって、彼らを見た時の興奮は格別だった。アファンではいつでも見られるカナヘビやヤマアカガエルを見つけただけで感動して、叫んでいた時期もあった。今でこそ落ち着いているが、外出先でカエルを見つけてワクワクする気持ちは変わらない。以前にもこの「Observation」に書いたように、私はカエル好きである。今回は、実際に両生類と接触を経た前後の心境の変化などについて触れてみたい。
私がこれまでに見た両生類は、カエル11種ですべて本州産、有尾類はイモリとトウキョウサンショウウオの2種である。本州に棲息しているカエルは外来種を除いて16種だから私は2年間のうちに半分以上の種を自然の中で目にしたことになる。多数のカエルを見てみたいという願いはかなり達成されたと言える。ただし、種類によって一度見ただけでのものもあるし、写真に収められなかったこともあるので、見た種類の多さほどは充実感を得られていないとも感じる。欲を言えば、どんなカエルや有尾類も、アファンでヤマアカガエルに出会ったくらい、何度も出会いたいと思ったりもする。そのためにはやはり2年間は短かいわけで、今後はもっと野外に出る機会をもちたいと思うようになってきた。
また、実物を手に取って観察したり、両生類のことを勉強してからは、両生類に対する印象も大分変わった。私は東京に生まれ育ったので、幼少期からほとんどの両生類は手の届かない場所にいる存在だと感じていた。それが、生息場所を知り、現地へ行くことで、両生類とはいる場所には沢山いる生き物であるということを実感した。そう考えると、自分の場合とは違い、その地域で暮らす人々にとっては、いつでも会える隣人のような存在なのだと思うようになった。そしてそれはカエルに限らず、私が子供の頃から憧れてきた昆虫や、あるいはタヌキやクマまでもそうであることも分かってきた。沢山の生き物が身近にいる人に羨ましさを感じるが自分は都会生活に胡座をかいている。それはわがままなことだと知りながら、その気持ちは確かにある。
一方で、私は両生類の勉強をすることで、両生類が環境の変化に敏感に影響を受けることを知った。両生類ということばからは、水陸両用の万能な生き物と思いがちだが、そうではなく水陸両方が必要な弱い生き物なのだということを強く認識することとなった。確かに両生類は変態後は水域だけでは暮らしにくく、陸地だけでは繁殖が出来ず、そういう意味では繊細な存在だと思う。そのために姿を消してしまった地域も多い。私が都心部では図鑑でしか見られない幻の生き物のように思っていたのも無理はないことだった。身近な動物と言われながら、あっさりといなくなる。ただの両生類好きであった私は研究を通じて、かれらの儚さも感じるようになった。
私がこの2年間で体感したのは、それまで図鑑をみてイメージしていた両生類は、実物を見て、触れてみて、はじめて素晴らしさを知ることが出来るということだ。哺乳類は魅力ある動物ではあるが、野外で直接出会う機会はきわめて小さい。その点、両生類は野生の個体を発見しやすいので、よい自然観察の対象になる。また、カエルは人々に興味を持ってもらいやすく、野外学習にも適した動物である。そうしたことも2年間で学んだことだった。そして、カエルと出会ったことにより、今後も自然観察を趣味として続けていきたいと決心することになった。調べてみればいろいろな発見があり、そこからまた新たな興味がわいて尽きない。次の春からの出会いも楽しみである。
アファンの森で出会った両生類
上段左からアマガエル、タゴガエル、ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエル。
下段左からツチガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、アカハライモリ
研究室に入り、2度目の年明けを迎えんとするこの頃、2年間の写真を整理すると、随分といろいろな動物を目にしてきたなと感じた。浅間山のカモシカ、下北半島のニホンザル、アファンの森の沢山の昆虫たち。どれも胸躍る発見ばかりであったが、元々爬虫類と両生類が特に好きな私にとって、彼らを見た時の興奮は格別だった。アファンではいつでも見られるカナヘビやヤマアカガエルを見つけただけで感動して、叫んでいた時期もあった。今でこそ落ち着いているが、外出先でカエルを見つけてワクワクする気持ちは変わらない。以前にもこの「Observation」に書いたように、私はカエル好きである。今回は、実際に両生類と接触を経た前後の心境の変化などについて触れてみたい。
私がこれまでに見た両生類は、カエル11種ですべて本州産、有尾類はイモリとトウキョウサンショウウオの2種である。本州に棲息しているカエルは外来種を除いて16種だから私は2年間のうちに半分以上の種を自然の中で目にしたことになる。多数のカエルを見てみたいという願いはかなり達成されたと言える。ただし、種類によって一度見ただけでのものもあるし、写真に収められなかったこともあるので、見た種類の多さほどは充実感を得られていないとも感じる。欲を言えば、どんなカエルや有尾類も、アファンでヤマアカガエルに出会ったくらい、何度も出会いたいと思ったりもする。そのためにはやはり2年間は短かいわけで、今後はもっと野外に出る機会をもちたいと思うようになってきた。
また、実物を手に取って観察したり、両生類のことを勉強してからは、両生類に対する印象も大分変わった。私は東京に生まれ育ったので、幼少期からほとんどの両生類は手の届かない場所にいる存在だと感じていた。それが、生息場所を知り、現地へ行くことで、両生類とはいる場所には沢山いる生き物であるということを実感した。そう考えると、自分の場合とは違い、その地域で暮らす人々にとっては、いつでも会える隣人のような存在なのだと思うようになった。そしてそれはカエルに限らず、私が子供の頃から憧れてきた昆虫や、あるいはタヌキやクマまでもそうであることも分かってきた。沢山の生き物が身近にいる人に羨ましさを感じるが自分は都会生活に胡座をかいている。それはわがままなことだと知りながら、その気持ちは確かにある。
一方で、私は両生類の勉強をすることで、両生類が環境の変化に敏感に影響を受けることを知った。両生類ということばからは、水陸両用の万能な生き物と思いがちだが、そうではなく水陸両方が必要な弱い生き物なのだということを強く認識することとなった。確かに両生類は変態後は水域だけでは暮らしにくく、陸地だけでは繁殖が出来ず、そういう意味では繊細な存在だと思う。そのために姿を消してしまった地域も多い。私が都心部では図鑑でしか見られない幻の生き物のように思っていたのも無理はないことだった。身近な動物と言われながら、あっさりといなくなる。ただの両生類好きであった私は研究を通じて、かれらの儚さも感じるようになった。
私がこの2年間で体感したのは、それまで図鑑をみてイメージしていた両生類は、実物を見て、触れてみて、はじめて素晴らしさを知ることが出来るということだ。哺乳類は魅力ある動物ではあるが、野外で直接出会う機会はきわめて小さい。その点、両生類は野生の個体を発見しやすいので、よい自然観察の対象になる。また、カエルは人々に興味を持ってもらいやすく、野外学習にも適した動物である。そうしたことも2年間で学んだことだった。そして、カエルと出会ったことにより、今後も自然観察を趣味として続けていきたいと決心することになった。調べてみればいろいろな発見があり、そこからまた新たな興味がわいて尽きない。次の春からの出会いも楽しみである。
アファンの森で出会った両生類
上段左からアマガエル、タゴガエル、ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエル。
下段左からツチガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、アカハライモリ