観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

野生研での成長

2014-04-15 06:58:30 | 14
H25年度卒業 柏木美香

「オブザベーション」の原稿を書くのが遅くなってしまい、大学を卒業して1か月が経ってしまいました。社会人になった今、研究室での経験が役に立っていると実感することが多く、改めて野生研のみんなにお礼がしたいと思います。
 私は大学に入ってからしばらく、勉強はほどほどに、アルバイトや遊びばかりに時間を割いてしまいました。元々は勉強が好きだったのだけれど、サークルに入って、遊んでばかりいる先輩がいたので、大学生は勉強しないで遊ぶほうが得なのだと勘違いしていました。しかし3年生になり、野生動物学研究室に入ると、そこは違いました。先輩たちは自分の研究に熱心だし、自分の研究対象の動物以外にもたくさんのことを知っていました。それも、むりやりに勉強させられたものではなく、本当に動物や自然が好きなのだなと伝わってくるものでした。同級生も、とても勉強熱心で、先輩に追いつこうとたくさん本を読んでいたし、動物の話をよくしていました。私は自分もそうなりたいという気持ちをもつ一方で、なかなかついていけませんでした。それまでの2年間遊んでばかりいたから、勉強をするという、学生にとって当然のことがなかなかできなかったのです。
 しかし、そんな私もいつしか毎日研究室に行って楽しく研究をするようになっていました。それは、高槻先生が勉強のおもしろさを言い続けてくれたからであり、南先生が研究の楽しさを教えてくれたからであり、研究に熱心であると同時に楽しい時間を共有できる友達がいたからです。私は野生研のみんなのおかげで、遊んでばかりで忘れてしまっていた大切なことを思い出せたような気がします。それは、自分は学生で、学生は勉強するもので、それも自ら望んで学生になったのだということです。時間はかかってしまったけれど、自分がしたかったことをやっと思い出すことができて、ほっとしました。研究室に通う中で、勉強の楽しさだけでなく、組織の中の自分を意識することや、仲間と協力すること、貢献することなど、たくさんのことを学び、成長できました。
 研究にしても仕事にしても、やるべき作業はあります。それを、いやだけどやれと言われるからやらなければいけない事と思うのか、やりたい事と思うのかでまったく違うでしょう。やりたい事だと思えれば、全ての事に充実感があり、できたときに達成感を持つことができます。そのために必要なのが勉強だと思います。勉強をして知識を得ることで、自分の考えを持つことができるからです。研究室でこのことを学べたことが、大きな成長だったと思います。そのおかげで、社会人になった現在も楽しく仕事ができているのです。わからない事だらけで不安にもなりますが、今は勉強の時であり、新しい仕事に毎日わくわくしています。繰り返しになりますが、それができているのは野生研に入ったからだと思い、遊んでばかりいた私を導いてくれた高槻先生、私の考えを理解して優しく指導してくれた南先生、なんでも言い合える仲になった同級生、やさしくしてくれた先輩、あまりしてあげる事はなかったのに柏木先輩って慕ってくれた後輩、本当に、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。みんなのおかげで成長できました。野生研での2年間のことは一生忘れません。これからもずっと繋がっていられるといいです。

またの春

2014-04-15 06:51:18 | 14
 小平にすんでいて、大学に行くのは西武新宿線といって新宿と拝島をつなぐ私鉄にのります。ほぼそれと並行して玉川上水が走っています。江戸時代に作られた運河ですが、今は散歩道として親しまれています。上水沿いに細い林がつづきますが、ところどころでは幅の広い林もあります。その電車が西に向かうとき、途中に「玉川上水」という名の駅があり、そこを降りると上水にすぐ行けます。春らしくなったので途中下車してのぞいてみました。
 光が溢れていて、春がきたなとわくわくしましたが、そのときふと今まで感じたことのない思いが心にふっと湧きました。

「この春をあと何度眺められるだろう」

そういう思いは今までなかったことです。このところ、私は大学があと1年で退官なので、いろいろなことが「これで最後だ」と思うようになり、そういう心の動きが春のことを思わせたようです。「野生動物学」という講義は何度もあり、最後のときは「これが最後だ」と思うのでしょうが、「4月の講義」と考えれば、それが最後なのだと、感慨めいたものがあります。