観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

「観察」を閉じることのお知らせ

2015-05-17 22:25:37 | 15
 2007年に麻布大学で研究教育をするようになり、この「観察 Observation」を運営してきました。
 それから8年間、毎月続けてきました。数人の学生から原稿を募り、必要に応じて添削をして文章の書き方の訓練をするという機会にもしてきたつもりです。日常生活で観察したこと、観察をして考えたこと、研究上の報告などもあり、中にはかなりの力作もあったと思います。私にとっては大切な記録にもなりました。そうした素朴な「文集」ですが、訪問者数はだいたい毎日200人くらいで、それなりに安定した読者をえていたようです。
 これは研究室の活動のひとつでしたが、いわば私の「個人経営」でしたから、定年退職を機に閉じることにします。長いあいだありがとうございました。

私にとっての回帰

2015-03-13 08:22:54 | 15
原慶太郎(東京情報大学)

 早いもので最終講義から1週間が経ちました。「回帰」というテーマが、講義全体に重層的に織り交ぜられ、高槻さんの回帰の話なのに、自分の回帰にもつながり、実に濃密な90分でした。ありがとうございました。
東北大学の植物生態学研究室時代は、高槻・辻村の博士課程後期の院生を筆頭に途切れることなく各学年に院生がおり、毎週開催されるゼミは、植物の生態に軸足を置きながら、地形、花粉、動物、都市、などなど、実に多様な分野の成果の発表と議論がなされました。今になって思うと、その時の様々な経験が景観生態学に取り組んでいる現在の自分の大きな柱になっていることを感じます。高槻さんはというと、ゼミの間、せっせと鉛筆を動かしているのかと思って目をやると、それが演者の似顔絵だったりするのです。しかし、発表に対するコメントは、(悪気はないのですが)容赦なくストレートで、ゼミ終了後に落ち込んだ者は少なくありませんでした。そんな時間を共にした仲間が今回の最終講義に集まり、仙台にいるような感じにさえなりました。
研究室でご一緒した10年ほどの間、高槻さんからボソッとこぼれるひとことは、私の心にいまも残っています。講義でも紹介されたように高槻さんは米国に留学され、その後、パンダ研究で中国に渡ります。
「米国に行くのとは、重みが違うよ」
その時は、中国の歴史や日本との関係のことかと思っていましたが、今回、ご両親が満州から終戦で帰国され、その時の様子を聞かされたことを伺って、より深い意味があったことを理解しました。私の祖父も同じ満鉄に勤務しており、祖母からその時の話を聞かされて育ちました。その後、中国を研究の対象として何度か調査に行く機会を得ましたが、祖父母が暮らしていた瀋陽(奉天)や長春(新京)を訪れたことは、高槻さんの中国やモンゴル調査行と同様、私にとっての「回帰」だったように思います。改めて、出会いとご厚情に感謝します。


こんなことを考えていたんだ

2015-03-11 15:14:29 | 15
関本 克宏

高槻 様

 先日は楽しい時間をありがとうございました。東北大学動物生態学研究室に在籍していた関本です。
 当日思い出したのは、五葉山に連れて行っていただいて、何度も高槻さんの研究に対する姿勢に触れるにつれ自分は研究者には向いていないなあと、つくづく思ったことでした。そして畑違いの企業に就職したわけですが、「北に生きるシカたち」を読んだときに、「ああ、こんなことを考えていたんだ」と私の選択が間違っていなかったことを改めて認識しました。
 今、私は「日経バイオテク」という媒体の編集長をしています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/先日のパーティでも、多くの東北大出身者から「おお、あれか」と声をかけていただきました。研究者としての道を歩んでいる方々と今も接点があることをうれしく思います。

手作りパン

2015-03-11 08:30:49 | 15
戸田美樹

高槻先生へ

 学生達の卒業研究も無事に全て終わったでしょうか。先ほど、たまたま卒業間際の先生とのやりとりのメールを見つけて読み返していたのですが、先生に怒られる内容ばかりで、笑ってしまいました。
 最後の学生さん達の卒業式もあと数日ですね。いつもは学生達を送り出す立場だったのに、今度は先生も一緒に卒業なさるのですね。未だに、大西さんと山田さん(奥さん)と「信じられないね~」なんて話をしています。
 先日の最終講義の日は、早川はとても忙しい日だったのですが、大西さんが「私だけでも」とお休みをくださり、先生の最終講義を受けに大学に足を運ぶことができました。
 大西さんは、出席できないのは残念がっていましたが、「ボクは、また高槻さんのうちで奥さんの手作りのパンを食べながらお話できればいいんだ」とおっしゃっていました。私も奥様の手作りのパンが食べたいので、いつかご自宅に伺わせてもらえたら嬉しいです。
 講義は、ご自身の人生を振り返りながら、自分自身の研究を分析して考察なさり、そしてすべてが「つながっている」んだと、とても先生らしく壮大な講義でした。手描きのイラストがたくさんあったのも楽しかったです。大西さんにもイラストをお見せしたかったのですが、冊子にはなかったのが残念です。研究者としての自然への視点と、動植物を慈しむ気持ちで自然を見る心の両方を持つ高槻先生のような方に指導していただけて、本当によかったです。改めて、本当にありがとうございました。(もっとしっかりやればよかったと卒業後に反省しています)
 なにより、先生の幸せそうな姿を見ることができて、最後に一緒に歌をうたえてよかったです。ただ、先生が引っ張りだこで、いつ話しかけていいものかわからず、全然お話できなかったのが心残りなので、いつか改めて挨拶に伺いたいと思います。
 
戸田さんは麻布大学の研究室の卒業生。いまは早川にある南アルプス生態邑でインタープリターとして働いています。上司の大西信正さんは金華山で長年シカの調査をしてきた人で、ときどき仙台の我が家によってくれました。昨年は家族が早川に遊びに行きました(高槻)。

観察の大切さ

2015-03-11 08:26:24 | 15
金成かほる

高槻先生、

先生のお話は大変楽しかったです。また、観察に重きを置くこと、条件を調整した実験系での科学とは別の大きな価値があるというお話、とても心にしみました。私も、自然環境に従事するなら、フィールドに出ることは重要だと思っています。私のいまの仕事だと、フィールドの経験や理解がないまま机上の仕事で終える人も多いです。そこにはさみしさというか、矛盾というか、疑問というか、そんなものを感じたりします。
良いお話を聞かせて下さり、ありがとうございました。
 お子さん向けのご本を書いておられるとは、とても良いですね。先生ならお子さんに楽しいご本になりそうです。
 今後も引き続きよろしくお願いいたします。