観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

花屋のススキとススキ草原

2014-12-31 11:58:23 | 14
3年 大竹翔子
 今年も年末となり、大方の準備も終わって新しい年を迎えるのみとなった。正月の風物詩の代表と言えば百人一首ではないだろうか。詠まれている季節の歌の中では秋の歌が一番多いのだそうだ。

 白露に 風のふきしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

 この歌は文屋朝康という歌人によって詠まれた歌だという。
 私はこの1年山梨県の乙女高原で調査をしたので、この歌からその風景を思い出す。秋の乙女高原は空は高く、広い草原は背の高いススキで覆われ、植物の間を風が吹いてススキが穂を揺らしていた。そんな気持ちの良い光景を体験した。


乙女高原のススキ草原


 私がまだ小学生だった頃。十五夜にお団子とススキを飾って月を見ようとしたことがある。自宅近所の空き地でススキを探したのだが、どこにもススキはなかった。それから十数年経った今年の秋には、花屋の包装紙に包まれたススキを持って歩く人々の姿を数度見かけた。ススキと言えば誰もが知っている身近な植物であるという認識だったのだが、近頃ではそうではないのかもしれない。だからこそ、今年一番印象深く残っているのは乙女高原の広大なススキ群落である。
 私はススキのことを思ったが、そのほかの季節の風物詩も、もしかしたら新しいものに、とって代わっていってしまっているのかもしれない。古き良き日本の文化を大切にしていきたいと思う年の瀬。
 

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