3年 渡部晴子
長野県浅間山で、8月の調査中に変な「実」を見つけた。ヤマブドウの葉の上に、ぽつぽつと真っ赤な先がとんがった実がついている。直径約5mm、高さは1cmほどの実が1枚の葉の上にいくつもついている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/20/4e4ce0e51637ebdd89850300e06e1b7a.jpg)
変な赤い実たち
葉を裏返してみると、「実」のついている部分だけ赤く膨らんでいる。その様子を見ると血管が想像されて、なんとなく不気味だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/4c/be21dae3474661928ef4f084d86ec3d2.jpg)
「実」がついている葉の裏側
後日調べてみると、これはブドウトックリタマバエというハエの仲間の虫こぶだということがわかった。虫こぶとは、虫が植物に寄生してできるこぶ状のもので、これは虫が作るのではなく植物に作らせているそうだ。この赤い「実」の中には、ブドウトックリタマバエの幼虫が一匹入っているという。幼虫は虫こぶの中で少しずつ成長し、秋になると虫こぶは葉から離れて地面に落ち、中の幼虫はそのまま越冬するらしい。ブドウトックリタマバエの幼虫にとっては、いるだけで栄養がもらえる上に、冬越しもできる快適なお家なのかもしれない。
大学に入ってから、虫媒花とそこに訪れる昆虫、おいしい果実とそれを食べて種子を運ぶ役割を果たすタヌキなど、動物や植物のつながりについて学んだ。ブドウトックリタマバエとヤマブドウも、このようなつながりのひとつなのだと思った。(ただし、先に挙げた2つの例では双方にメリットがあるのに対して、タマバエとヤマブドウのペアはおそらく寄生するタマバエにしかメリットがないという点でこれらは異なっている。)ブドウトックリタマバエは、ヤマブドウを利用して巧みに生き残ってきたのだと思うと少し感動する。それにしても、なぜこんなに目立つ色をしているのか疑問だった。鳥に食べられてしまったりはしないのだろうか。
9月になってまた調査地を訪れると、この虫こぶたちはまだ葉についていた。中には、虫こぶが落ちたからか、他の理由からかはわからなかったが、葉に直径5㎜程の穴がいくつも空いているものもあった。一応下を探してみたが落ちた虫こぶは無く、少し残念だった。ブドウトックリタマバエには悪かったたが、虫こぶをひとつ開かせてもらった。写真が上手く撮れなかったが、中には黄色い小さな幼虫が収まっていた。来月調査に行くときには、もう葉から落ちているだろうか。
森や藪の中を歩いていると、思わぬ発見があって面白いと知った。私は、まだまだ、転ばないようにと足元ばかり見て歩いているので、そこにいる色々な生き物たちに気づかずにいると思う。何気なく見過ごしている身近な動植物たちも、実は巧みに生存や繁殖の工夫をしている。そういう生き物たちについてもっと知りたいと感じた。
長野県浅間山で、8月の調査中に変な「実」を見つけた。ヤマブドウの葉の上に、ぽつぽつと真っ赤な先がとんがった実がついている。直径約5mm、高さは1cmほどの実が1枚の葉の上にいくつもついている。
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変な赤い実たち
葉を裏返してみると、「実」のついている部分だけ赤く膨らんでいる。その様子を見ると血管が想像されて、なんとなく不気味だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/4c/be21dae3474661928ef4f084d86ec3d2.jpg)
「実」がついている葉の裏側
後日調べてみると、これはブドウトックリタマバエというハエの仲間の虫こぶだということがわかった。虫こぶとは、虫が植物に寄生してできるこぶ状のもので、これは虫が作るのではなく植物に作らせているそうだ。この赤い「実」の中には、ブドウトックリタマバエの幼虫が一匹入っているという。幼虫は虫こぶの中で少しずつ成長し、秋になると虫こぶは葉から離れて地面に落ち、中の幼虫はそのまま越冬するらしい。ブドウトックリタマバエの幼虫にとっては、いるだけで栄養がもらえる上に、冬越しもできる快適なお家なのかもしれない。
大学に入ってから、虫媒花とそこに訪れる昆虫、おいしい果実とそれを食べて種子を運ぶ役割を果たすタヌキなど、動物や植物のつながりについて学んだ。ブドウトックリタマバエとヤマブドウも、このようなつながりのひとつなのだと思った。(ただし、先に挙げた2つの例では双方にメリットがあるのに対して、タマバエとヤマブドウのペアはおそらく寄生するタマバエにしかメリットがないという点でこれらは異なっている。)ブドウトックリタマバエは、ヤマブドウを利用して巧みに生き残ってきたのだと思うと少し感動する。それにしても、なぜこんなに目立つ色をしているのか疑問だった。鳥に食べられてしまったりはしないのだろうか。
9月になってまた調査地を訪れると、この虫こぶたちはまだ葉についていた。中には、虫こぶが落ちたからか、他の理由からかはわからなかったが、葉に直径5㎜程の穴がいくつも空いているものもあった。一応下を探してみたが落ちた虫こぶは無く、少し残念だった。ブドウトックリタマバエには悪かったたが、虫こぶをひとつ開かせてもらった。写真が上手く撮れなかったが、中には黄色い小さな幼虫が収まっていた。来月調査に行くときには、もう葉から落ちているだろうか。
森や藪の中を歩いていると、思わぬ発見があって面白いと知った。私は、まだまだ、転ばないようにと足元ばかり見て歩いているので、そこにいる色々な生き物たちに気づかずにいると思う。何気なく見過ごしている身近な動植物たちも、実は巧みに生存や繁殖の工夫をしている。そういう生き物たちについてもっと知りたいと感じた。