観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

まなびのまきば

2012-06-27 15:08:22 | 12.4

修士1年 山本詩織

 小学校からの友達2人と牧場へ行った。
地元から車で約1時間のところにあるその牧場には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタにニワトリ、ヤギ、ガチョウと様々な動物がいて、誰でも自由に餌やりなどができる観光牧場となっている。
 4月も後半にさしかかるというのに、牧場にはサクラが咲きみだれていた。私達はサクラが舞い散る中、動物たちの声を聞きながら牧場名物のジェラートをほのぼのと食べた。同じようにソフトクリームを買ったおじさんが、「あんめぇな~~!!」と豪快に食べていた。思わず笑ってしまったが、おじさんは「いや~、やっぱ味が違うよ~~牧場のはぁ」と気さくに話しかけてくれた。こうして知らない人ともオープンに話せるのが嬉しいので、私は旅行やお出かけが好きだ。うちの父もそうなのだが、普段は仏頂面な人でも旅先だと表情がやわらかくなっている気がする。旅行マジックだと思う。
 ジェラートを食べ終わり、私達はヒツジがいるパドックにむかった。白・黒の定番のヒツジに加え、ブチに角が4つも生えた種類がいた。子ヒツジがピョコピョコはねたり、餌をねだる姿がとてもかわいかった。友達が「ヒツジなら飼えるかも!!」と言っていたが、大学にヒツジがいて牧場実習や毛刈りの実習をやったことがある身からしては、冷静に「大変だよぉ」と諭す感じになっていた。やっぱり動物と普段から関わる人とそうでない人では、動物に対する考え方が違うんだな、と改めて実感した。「ブタってね、想像以上に臭いんだよ。」と教えてあげると、素直な友達はブタのところに行って臭いをかいで逃げまどって帰ってきた(笑)。
 牧場を一通りみて満足した私達は、ちょうどお腹も減ってきたのでお昼を食べに移動することにした。
 私「どこがいいかなぁ?」
 友達1「う~ん、牧場いった後でなんだけど、肉食べたいね(笑)」
 私「!?」
 友達2「いいね、あ、ビッグボーイがあるじゃん!」
 友達1「お、いいね!! よし、入ろ~♪」
 さっきまで生きたウシを「かわいい」と言って見ていたけど、食べるときになると人というのは考え方が変わるもので、お肉になったウシを「美味しい」と言っていただくのだ。かく言う私も食欲にはかなわず、お肉が食べたくなってハンバーグとなったウシを美味しくいただいた。生きてるウシと生きてたウシ…文章だと一文字だけの違いなのに、人の気持ちはコロッと変わる不思議。
 何気なく無計画に行った牧場だったが、人や動物との触れ合いで改めて気付かされたことが多い、『まなびのまきば』だった。
 

初めての野外調査

2012-06-27 14:55:31 | 12.4

研究生 中村圭太

 先日、長野県の茶臼山動物園で環境教育を行う機会があった。毛皮や頭骨の展示をして、野生動物に興味を持ってもらい、外来種の問題についても考えてもらおうということで、「あーすわーむ」の福江さんに4年生の高田君と一緒に同行させて頂いたのだ。
私は琉球大学を卒業してこの4月から麻布大学で研究生になったが、生態学の野外経験がほとんどない。うまく話しをするどころか話す知識さえない私は、福江さんや高田君の話を必死で覚えて、そのまま来園者に伝えることしかできなかった。それでも多くの方が興味を持ってくれて、話しに耳を傾けてくれたのはうれしかった。帰り道に、もっと知識があれはいろいろな話しができたのにと思っていると、福江さんに電話が繋ってきた。イノシシの箱罠にハクビシンが入っていたらしく、これから取りに行くとのことだった。私は「チャンスだな」と思った。実際に生きたハクビシンを見たことがなく、観察できると思ったのだ。イノシシの箱罠からハクビシンをケージに移して、宿舎として使わせて頂いている事務所の庭に移動させた。私は懐中電灯を片手に観察を始めた。ハクビシン(白鼻芯)という名前の通り、確かに顔の中央に白いラインがはいっているな。尻尾がこんなに長いのはきっと木登りに使うんだろうなぁ。果実中心の雑食性らしいけど、どんな歯をしてるんだろう。観察を続けていると、「興奮しているからあまりプレッシャーを掛けないように」と福江さんに言われ、切り上げることとなった。
 次の日の朝、ハクビシンに餌をあげていると、鼻の辺りが赤く血が滲んでいることに気付いた。夜の間にケージの外に出ようと暴れたためだと思われた。そのときようやくハッとした。夜、私が観察しているときもずっと唸っていたのだ。人間に捕まってケージに閉じ込められただけでも相当のストレスを感じていただろうに、私はすっと傍にいてさらにプレシャーを与えていたのだ。ハクビシンのことをもっと知りたいと思って観察していたが目の前のこのハクビシンのことはまったく見えていなかったのだ。
 野生動物学研究室に入って1カ月が過ぎて、いくつかの野生動物を観察する機会があった。その生物が生態系の中で果たす役割や形態的な特徴、社会性、人間への影響など知っておかなければならないことはたくさんあると思う。さらにフィールドでは目の前の対象に対しての観察も重要であることを学んだ。3月に参加した金華山でのシカの調査では次の順番で調査をやるように言われていた。①自分たちの安全を確保する。②対象動物(生物)の安全を確保する。③学術的なデータを得る。これからフィールドに行く機会があると思うが、このことを頭に入れて、調査に取り組みたいと思った。



私の好きな春

2012-06-27 14:54:54 | 12.4

3年生 朝倉源希

 4月になって気温も徐々に上がり、春の香りが漂う季節になった。私は冬には感じなかったいろんな香りが混ざっているこの香りが大好きだ。なぜか気持ちが 高鳴り、新しいことを始めてみようとする意欲が湧いてくるのである。
この季節に絶対的な存在感を示すものといえばやはり「桜」である。今やほとんどの桜はソメイヨシノという人為的に作られた品種のものばかりであるため野生の桜は見る機会があまりないのだが、毎年あの美しさには感銘を受ける。最近、なぜ自分はこんなに桜に魅力を感じるのだろうと花見をしながら考えてみたのだが、二つの理由があるように思える。
 一つ目は幹と花のコントラストのギャップである。あのように黒くてゴツゴツした幹をもつ木は日常的に 桜以外に見かけることはなく、枝も地面に覆い被さるように伸びていてどっしりとした印象を受ける。だが、そこから咲く花は薄いピンク色で、とても小さく可愛らしい。それらを離れて見ると、幹の黒さと強さの中にコ ントラストが高く可愛らしい花がよく映えていてそのギャップがお互いを引き立たせている。
 二つ目はすぐに散るという点である。桜は一年に一度しか咲くことがないのに咲いてから散るまでがとても早い。だが、その儚さが満開時の喜びを一層大きくする要因だと考えられる。また、散る花びらの量も相当なもので、多くの桜が植わっているところではまる で大粒の雪が降っているかのような感覚にさえ陥るほどだ。辺りの地面は花びらで覆われ、景色は桜で満たされて言葉では表すことができないほどの気持ちになる。これぞ春の醍醐味といった具合である。
 このように桜には他の木にはない魅力があり、それは誰が見ても分かるということ、また春という心地よい季節に花を咲かせるということがこんなにも多くの人に親しまれている理由であると考えられる。これから先でも桜は日本の春を代表する花として人々に親しまれてゆくことだろう。


春の植物

2012-06-27 14:54:10 | 12.4

3年生 青木悠香

少し前まで肌寒さを感じる日もありましたが、徐々に春らしい暖かさになってきました。最近は大学が終わるとアルバイトに行くなどして帰りが遅くなっていたのですが、まだ明るい時間に帰れた日に、いつもとは違う道を通って帰ることにしました。そこは川沿いの並木道で、桜とハナミズキが交互に植えられています。満開でピンク一色だった並木道の桜がすっかり葉桜に変わり、ハナミズキの総苞の白や薄紅色と、桜の新芽の黄緑色がとても綺麗でした。その日は天気があまり良くなかったのでやめましたが、ここに青空が加わったのを見たいと思い、天気のいい日に写真を撮りに来ようと決めました。
歌手の一青窈さんの曲に「ハナミズキ」という曲があります。曲は知っているけれど花は見たことがないという人が多いですが、街路樹としてたくさん植えられていて、とても身近な植物です。日本がアメリカに桜の苗木をプレゼントしたお返しに

アメリカから贈られた花として知られます。一見、大きな4枚の花弁があるように見えますが、実はこれは総苞で、総苞の中心にある黄緑色のツブツブの1つ1つが花です。直径0.5cmほどの小さく目立たない花が集合して順次開花します。つまり、ハナミズキの総苞色は白や薄紅色などですが、本来の花色は黄緑色です。総苞径は8~10cmですが本来の花径は0.5cmです。満開だと思っていた近所のハナミズキの花を見に行ったら、実際は6分咲き程度でした。反対側から見ると総苞は枝に直接つながっています。総苞の先端は虫にかじられたかのように凹んでいます。咲き始めに見ると種子のように見えるようです。内側の2枚と外側の2枚がそれぞれの凹みをあわせることで先端が組み合わさって接続することが出来ます。総苞の色は白、紅、桃、外側が紅で内側が白、黄緑、の5パターンあると言われていますが、黄緑色は見つけられませんでした。

新生活

2012-06-27 14:53:33 | 12.4

修士1年 山田佳美

 4月中旬に見ごろを迎えた桜は、その後急激に散り、今では葉が見ごろを迎えることとなりました。
 青森の4月はまだ桜前線は上陸していません。この季節でも大雪が降ります。その寒さの中たたずむ桜は見事ですが、今年は見れそうにありません。
私がお世話になった北里大学は、獣医学部は1年目を相模原キャンパスで、2年目からは東北は青森、十和田キャンパスで3年間を過ごします。それまでの都会生活から一変して、牧歌的な緑あふれる生活は新鮮でしたが、辺りは畑しかないので遊びにも行けません。電車も今年廃線となりました。廃線となった十和田観光電鉄は利用者が極端に少なく、大体は農業高校の学生さんです。駅は無人で、切符ではなく整理券をとり、ワンマン運転なので前方1つめのドアしか開かず、下りる際に整理券とともに精算するというカントリー情緒あふれる電車でした。今となっては懐かしさと少しの寂しさがよぎります。
それまでの生活でお世話になった家具たちや電化製品に別れを告げ、3月終わりに青森を脱出、実家神奈川にて新生活の準備を始めました。とはいってもほとんどが引越し荷物の整理に追われていましたが。
 4月が始まり、様々な気持ちを抱えて麻布大学に入学しました。最初は「変なやつ…関わらないでおこう」とか「田舎くさいやつだな」とかで村八分にされたらどうしよう…といった不安が大部分を占めていましたが、いざ研究室に来てみるとそんな不安は杞憂であったことがわかりました。
 身構えていた私や新たに研究室に入った学生たちのために懇親会を開いてくださり、先生方をはじめ、同じ院生の先輩方や同期、4年生に温かく迎えられ、不覚にも目の奥が熱くなりました。また、学生の発言内容の濃さ、課題に臨む姿勢の前向きさに驚かされ、この中で自身も切磋琢磨していくんだという一層の意欲に掻き立てられました。新しい環境であたふたしている中、早々に不安はなくなり、今はこれからの生活に胸を躍らせています。
私はいろいろ足りない上に人からはよく変わった人間だといわれます。加えて寂しがりという面倒くさい小心者ですがよろしくしていただければと思います。まずは研究室の皆さんの名前と顔を一致させるところから頑張りたいと思いますので、しばらくは変な名前で呼んでしまうかもしれませんがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。