観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

火起こしが得意なアイドル

2013-02-27 23:37:35 | 13.2
4年 戸田美樹

 最近は野外にも出ず、自宅か大学に籠って卒論に取り組む日々が続いた。外で泥まみれになって遊ぶのが好きな私には、少し慣れない生活だったせいか、年が明けてから4回も発熱した。
 そんな体調不良の日々に楽しみを添えてくれたのは、うちの庭になわばりを張っているジョウビタキのメスである。この鳥は、冬になると日本にやってきて、畑や田んぼなど、開けたところに1羽でなわばりを張って冬を越す。なわばり争いでは雌雄構わずケンカする、少しやんちゃな奴らである。
 我が家にやってきたこいつは、庭のフェンスがお気に入りスポットのようで、ここでよく「ヒッヒッ、カッカッ」と火打石を打つような声で鳴いている。この鳴き声が「ヒタキ(火焚き)」という名前の由来でもある。こいつには「ジョビコ」という名前をつけた。時々みせる、おじぎをして尾羽をふりふりするしぐさがとても可愛らしく、我が家のちょっとしたアイドルになっている。
思えば、去年の冬に我が家に来たジョウビタキもメスだった。今年やってきたこいつは、去年と同じ個体なんだろうか。
 ある日の朝、洗面所で歯磨きしていると、となりの家の庭から「ヒッヒッ、カッカッ」と声が聞こえた。去年の冬にうちにいた奴は、うちの庭と隣の庭の両方を使っていたので、「ジョビコだな」と思ってそっと窓を開けると、隣の庭の木の枝先でさえずっているのは、ジョビコではなく、オスのジョウビタキだった。オスは、頭は白銀、おなかはオレンジで、とても派手な色合だ。メスは茶褐色で地味だけど、私はメスの優しい色合いの方が好みではある。
 去年となわばり構成が少し異なっているのは、オスに場所をとられてしまったからなのだろうか。そもそも、ジョビコが去年のあの子とは別個体の可能性もあるのだけれど。どちらにせよ、きっと渡ってきたばかりの縄張りの不安定な時期には、2羽の攻防戦が繰り広げられていたのだろう。
 もうすぐ春が来て、ジョウビタキは大陸に帰っていく。そうしたらシジュウカラがさえずり出して、もしかしたら今年も我が家の巣箱を使ってくれるかもしれない。家の周りだけでもさまざまな命のドラマが繰り広げられていて、季節が廻れば、また新しいドラマがはじまる。耳を澄ましてたくさんのドラマを聞き、彼らの命と向き合って生きていきたい。
 


日光浴は苦しい!?

2013-02-27 23:31:46 | 13.2
3年 森 悠貴

 日差しが暖かくなり始めると、いつもとある事件を思い出す。
 私が東京都環境局の傷病野生鳥獣保護サポーターになってから7年になるが、初めて都から預かった傷病鳥がメジロであった。その個体をベランダに出しているときに、母の悲鳴が聞こえたのだ。母の目線の先には、悶え苦しむメジロがいた。左右の羽を広げ、大きく口を開け、全ての毛は逆立ち、「何か拾い食いして喉に詰めたのではないか!?」という印象を受けたのを覚えている。今にも吐きだしそうな表情であった。急いで駆け寄ると、メジロは何事もなかったかのようにその場を離れ、囀り始めた。我が家は皆、あれはなんだったのかと、拍子抜けた。
 数日後、その疑問が解けることになる。近所の公園の日溜まりで、同じような格好をしたドバトを見つけた。地面を這っているように見えたので、怪我しているのかと思いきや、周りを見渡すと同じような格好をしたドバトが3羽程いた。その時に、やっと気が付いたのである。あれは、鳥なりの日向ぼっこだったのか…。
 後日、日溜まりでカラスやホオジロでも同じような光景を確認した。もっと気持ちよさそうにすればよいものを、揃いもそろって例の吐きだしそうな表情である。恐らく、両羽を広げ、全ての羽毛を逆立てているのは、地肌に直接日光を当てるためであったのだ。現在自宅で保護飼養しているホオジロを観察していると、日差しの動きに合わせて、自分のポジションや角度を少しずつ変えているようである。外敵の多い野生下では、短時間で効率の良い日光浴が要求されるのだろう。

「日光浴をする傷病個体のホオジロ。カメラに驚き、羽だけ畳んでしまった。2010.08.10」
もうじき日光浴に最適な時期になるが、私は角度を考えてまで日光浴をしようとは思わない。