4年 戸田美樹
最近は野外にも出ず、自宅か大学に籠って卒論に取り組む日々が続いた。外で泥まみれになって遊ぶのが好きな私には、少し慣れない生活だったせいか、年が明けてから4回も発熱した。
そんな体調不良の日々に楽しみを添えてくれたのは、うちの庭になわばりを張っているジョウビタキのメスである。この鳥は、冬になると日本にやってきて、畑や田んぼなど、開けたところに1羽でなわばりを張って冬を越す。なわばり争いでは雌雄構わずケンカする、少しやんちゃな奴らである。
我が家にやってきたこいつは、庭のフェンスがお気に入りスポットのようで、ここでよく「ヒッヒッ、カッカッ」と火打石を打つような声で鳴いている。この鳴き声が「ヒタキ(火焚き)」という名前の由来でもある。こいつには「ジョビコ」という名前をつけた。時々みせる、おじぎをして尾羽をふりふりするしぐさがとても可愛らしく、我が家のちょっとしたアイドルになっている。
思えば、去年の冬に我が家に来たジョウビタキもメスだった。今年やってきたこいつは、去年と同じ個体なんだろうか。
ある日の朝、洗面所で歯磨きしていると、となりの家の庭から「ヒッヒッ、カッカッ」と声が聞こえた。去年の冬にうちにいた奴は、うちの庭と隣の庭の両方を使っていたので、「ジョビコだな」と思ってそっと窓を開けると、隣の庭の木の枝先でさえずっているのは、ジョビコではなく、オスのジョウビタキだった。オスは、頭は白銀、おなかはオレンジで、とても派手な色合だ。メスは茶褐色で地味だけど、私はメスの優しい色合いの方が好みではある。
去年となわばり構成が少し異なっているのは、オスに場所をとられてしまったからなのだろうか。そもそも、ジョビコが去年のあの子とは別個体の可能性もあるのだけれど。どちらにせよ、きっと渡ってきたばかりの縄張りの不安定な時期には、2羽の攻防戦が繰り広げられていたのだろう。
もうすぐ春が来て、ジョウビタキは大陸に帰っていく。そうしたらシジュウカラがさえずり出して、もしかしたら今年も我が家の巣箱を使ってくれるかもしれない。家の周りだけでもさまざまな命のドラマが繰り広げられていて、季節が廻れば、また新しいドラマがはじまる。耳を澄ましてたくさんのドラマを聞き、彼らの命と向き合って生きていきたい。
最近は野外にも出ず、自宅か大学に籠って卒論に取り組む日々が続いた。外で泥まみれになって遊ぶのが好きな私には、少し慣れない生活だったせいか、年が明けてから4回も発熱した。
そんな体調不良の日々に楽しみを添えてくれたのは、うちの庭になわばりを張っているジョウビタキのメスである。この鳥は、冬になると日本にやってきて、畑や田んぼなど、開けたところに1羽でなわばりを張って冬を越す。なわばり争いでは雌雄構わずケンカする、少しやんちゃな奴らである。
我が家にやってきたこいつは、庭のフェンスがお気に入りスポットのようで、ここでよく「ヒッヒッ、カッカッ」と火打石を打つような声で鳴いている。この鳴き声が「ヒタキ(火焚き)」という名前の由来でもある。こいつには「ジョビコ」という名前をつけた。時々みせる、おじぎをして尾羽をふりふりするしぐさがとても可愛らしく、我が家のちょっとしたアイドルになっている。
思えば、去年の冬に我が家に来たジョウビタキもメスだった。今年やってきたこいつは、去年と同じ個体なんだろうか。
ある日の朝、洗面所で歯磨きしていると、となりの家の庭から「ヒッヒッ、カッカッ」と声が聞こえた。去年の冬にうちにいた奴は、うちの庭と隣の庭の両方を使っていたので、「ジョビコだな」と思ってそっと窓を開けると、隣の庭の木の枝先でさえずっているのは、ジョビコではなく、オスのジョウビタキだった。オスは、頭は白銀、おなかはオレンジで、とても派手な色合だ。メスは茶褐色で地味だけど、私はメスの優しい色合いの方が好みではある。
去年となわばり構成が少し異なっているのは、オスに場所をとられてしまったからなのだろうか。そもそも、ジョビコが去年のあの子とは別個体の可能性もあるのだけれど。どちらにせよ、きっと渡ってきたばかりの縄張りの不安定な時期には、2羽の攻防戦が繰り広げられていたのだろう。
もうすぐ春が来て、ジョウビタキは大陸に帰っていく。そうしたらシジュウカラがさえずり出して、もしかしたら今年も我が家の巣箱を使ってくれるかもしれない。家の周りだけでもさまざまな命のドラマが繰り広げられていて、季節が廻れば、また新しいドラマがはじまる。耳を澄ましてたくさんのドラマを聞き、彼らの命と向き合って生きていきたい。