観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

カメムシの色

2012-06-28 23:24:31 | 12.6

修士2年 八木愛

 5月下旬のことである。里山で調査をしていた私は1匹の昆虫を見つけた。その昆虫の名前は、アカスジキンカメムシ。緑色のメタリックなボディに名前の通り赤い模様が入るとてもきれいなカメムシである。どうやら、「歩く宝石」と呼ばれているらしい。太陽の光に反射して、きらりと光る姿は本当に宝石のようだった。図鑑で見た通りの風貌で、私の中で「最近気になる昆虫トップ5」に入る種なだけに見つけた時は思わず大はしゃぎ。しばらく手の上で遊ばせて、眺めていた。しかし私がアカスジキンカメムシに興味を持ったのは、単に「色がきれいだから」ではない。それも理由の一つではあるが、きっかけは幼虫と成虫の違いにある。
 カメムシは、蝶とは違って、さなぎにならずに成虫になる(不完全変態)。そのため、翅がない、複眼であるという違いはあるものの、幼虫は成虫と同じような色・形をしている。アカスジキンカメムシの成虫と幼虫では、色が大きく変わる。成虫は、メタリックな緑色でとてもきれいなのだが、幼虫は黒と白のシンプルな色合いなのである。同じキンカメムシ科には、ニシキキンカメムシというカメムシがいる。このカメムシは、アカスジキンカメムシよりも少々模様が派手だが、アカスジ同様とてもきれいなメタリックな緑色をしている。そして、幼虫もニシキという名にふさわしく、きれいな色をしている。しかし、アカスジキンカメムシは成虫と幼虫で全く違う。子どもの頃は赤色など現れていないし、成虫になると緑色のメタリックカラーになるなどと、まったく想像ができない。どうしてそのような色合いになったのだろう。不思議である。
 幼虫は見たことがないのでインターネットで検索をしてみた。どうやら、幼虫も色は黒ではあるが金属光沢に近い輝きがあるようである。そして、幼虫が白黒なのは、鳥の糞に擬態しているからという文章も見かけた。しかし、そうなのだとしたら、成虫も白と黒で良いのではないかと思う。緑色なら、葉っぱの上にいる時にわかりにくいから?とも考えたが、それなら幼虫の時から緑色でも良いだろう。なぜ成虫になるとメタリックな緑色と赤い模様へと変わるのだろうか。そして、金属光沢は確かにきれいだが、どうして自然の中でそのような色が出るのだろうか。
 黒白の幼虫が脱皮をして、成虫になりたての頃はまだ白っぽい状態であるらしい。そして徐々に緑色の金属光沢が出てくるのだという。ぜひ幼虫を見つけて、脱皮の様子などもじっくり観察してみたい。



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