にぎやかなお祭りの中 考え事をしながら浮かんでいた。
上へ下へと 行き交う流れ。
同じスピードを感じた反対方向の人とのあいさつ
行きて帰りて 速さは倍となっていく。
「盛況のようですね。」「ほんとうに。」
「時に ○丁目の方ですか。」「いえ ちがいます。」
倍の速さのままに あっという間に遠ざかる。
いえ ちがいます。
なぜそんな言い方を選んでしまったのだろうか。
考え事をしていたからだ。
○丁目ではないから ちがうと答えた。反射的に。
もっと他の言い方を選びたかったのだろうか。
これを 話した、と言うならば
その前にも その後にも声を聞いたことがない
――と 思っているのだが。