音楽の時間、
歌のテストというものがあった。
選曲は自由、
自由ほど不自由なものはない。
先に歌った人の選曲に集まるのが
結局は楽な道になった。
蓋を開けると 女子は
あの人もこの人も「翼をください」を歌った。
男子は 陽水に集まった。
A君もB君もC君も・・・「心もよう」を歌った。
「えっ、彼も?」
普段のおちゃらけ具合からは想像つかなかったタイプの子も
陽水を歌った。
テストなので 合唱ではなく
独唱というのか 一人でクラスメイトの前で歌った。
♪ 今 私の願いごとが叶うならば
翼がほしい
♪ さみしさのつれづれに
手紙をしたためています あなたに
赤い鳥と陽水の 大洪水である。
歌う方も大変だが
聞いている方も大変だった。
うわずった けれど真剣な歌声が
(この選曲上、そうそうアレンジはできなかった。テストであったし…)
かすかに 記憶の果てから響いてくる。
うまい子もいて
へたな子もいて
なによりもまず みんな
思春期のまっただ中にいた。