麻生氏が説明するマクロ経済学は、リチャード・クー氏の「デフレとバランスシート不況の経済学」と同様であるが、「合成の誤謬」の説明などは、麻生氏独特の表現方法である。
総理大臣になって、こういった語り口で国民に語りかけていただきたいものである。
麻生太郎オフィシャルウェブサイトの論文
(2007年3月号『資産デフレ不況(二)』)より引用すると
◆企業が金を借りず、返済を優先する。これを経済界の用語では「利益
の最大化をはからず、債務の最小化をはかる」といいます。つまり企
業は貸出し金利が限りなくゼロに近いくらいに低くても、銀行から金を
借りて設備投資をしない。利益が出たら、これまでの借入金の返済
を優先させたということです。結果、何が起こったか。壮大な「合成の
誤謬」が発生しました。
◆合成の誤謬・・・あまり聞き慣れない言葉だと存じます。
簡単に言えば、よいことだからといって、皆で一斉にやったら、結果
は必ずしもよいことにはならないという意味です。
麻生太郎が酒も煙草もゴルフも選挙もヤメタとします。医者もほめる
し私の体も喜ぶ。妻も赤飯炊いて喜ぶでしょう。
しかし同じことを日本人が全員でやったらどうなるか。
全国の酒屋、煙草屋、ゴルフ場、飲み屋、歓楽街が軒並みツブレル
ことは確実で、失業者は溢れ、結果として不況になる。一人でやる
ことは問題なくよいことでも、1億2千万人が一斉にやったら大問題
です。
◆企業が借入金を銀行に返済するのは当然ですが、全企業が一斉に
借入れより返済を優先したら、まず金融業は成り立たなくなる。借り
手の主たる企業が金を借りず、預金する個人が今まで通りだったら、
銀行商売は成り立ちません。企業の借入金返済が年間20兆も25
兆円も行われ、個人預金が5兆も10兆も入ってきたら、その25兆か
ら35兆円がデフレ圧力となるわけです。そうなれば30兆円前後の
金を借りてくれる人がいなければ、デフレによる大恐慌になります。
1920年代末にアメリカで起きた大恐慌も、昭和初期の高橋是清蔵
相下の大不況もデフレ下の不況だったんです。
◆ 今回の場合は、政府がその30兆円の金を国債として借りて来られ
たから、日本の不況はこの程度で済み、GDPもこれだけのデフレ不
況下で500兆円を維持できました。
◆ マスコミが何と言おうと、国債で民間資金を年間30兆円吸い上げ続
けたのは正しい選択だった・・・と後世の経済学者は書くと思います
が、今現在、こんな異論を言っているのは私の他はあまり知りませ
ん。
◆ 今の経済状況は極めて難しいハンドル操作を求められているので
す。
安易に財政再建を優先させて、国債の借入れを単純に減額すれば
景気上昇が持続するなんて単純な話ではないことを「異論」として申
し上げます。