能登でココロもどる旅

ぶなの森エコツアーのスタッフブログです。
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奥能登の至宝 あえのこと ②

2010年12月07日 | 祭り
つづきです。
田の神様を床の間へお通しし、いよいよ食事でのおもてなし。ご夫婦の分をきっちり揃えてあります。
まず上座(神坐?)へお通しし、ご膳の上のお椀をひとつずつ開けます。

伝統的なごちそうが全貌を現しました。
家長はここで一年の稲作の様子をご報告し豊作に感謝の意を表します。
そして膳の内容をひとつひとつ丁寧に説明し、神様のご機嫌をお伺いします。

家長・田中登さんの晴れ姿です。

神様がお食事の最中に家長は静々と歩みより、田の神様へお酌をします。
また頃合いを見計らって甘酒もお勧めする気の遣いようです。

それもそのはず、「あえのこと」の意味はごちそうをして神様をもてなすことなのです。
やがて一時も経った頃、神様にお伺いし、膳をお下げします。
「今年の料理のお味はいかがでございましたでしょうか。
また、腹いっぱいおよばれになりましたでしょうか。
それではご膳を引かせていただきます。」
そしてお下がりを家族で食べるのです。かつて農家にとって一年で一番のごちそうの日だったそうです。

これが「あえのこと」でした。
特徴的なのはまさにパントマイムをしながら進行する手順のユニークさと、
この行事が家族単位で行われていることと、それを支える祈りとおもてなしの心です。
(今回の合鹿庵での田中さんの「あえのこと」は特別に一般向けに公開されたものです)
田の神様はこのまま冬を各家で過ごし、2月9日に同様のしきたりによって田へ送られます。
民間における新嘗祭や祈年祭の原初的形態をしのばせる素朴な行事として注目され、
文化人類学的にまた民俗学的に非常に興味深い事例です。
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