S家の別宅

夫婦ふたりきりになりました。ふたりの生活をこれから楽しみたいなと思います。

せつなかったよォ

2006-07-21 16:43:04 | Weblog
京都地裁で行われた殺人事件の裁判。執行猶予になった。この事件はきのうテレビで見て涙が止まらなくなった事件だ。
54才の男性が認知症の86才の母を殺し、自分も自殺を図ったが、通行人に発見され命をとりとめた。この男性はお父さんが亡くなってから認知症になった母の介護を11年間、献身的にしてきた。働かなければ食べていけないので、男性は工場で働いていたが、お母さんが病気がひどくなって徘徊、そのうち歩けなくなり、トイレもだめ、ひとりで食事もできないので、男性は介護の為に会社をやめなくてはならなくなった。
収入がないので、生活保護の申請にいっても失業保険をもらっていたので断られた。そのとき行政の人がもっと親切に説明してあげて、失業保険の給付が終わったら、申請にきてください。と教えてあげたらよかったのだ。ただ「あなたはだめです」としか言わないから・・・・・
失業保険の給付が終わっていよいよお金がなくなり、アパートの家賃の支払日に、部屋をきちんと片付け、死ぬつもりで家を出た。
最後に、お父さんが生きていた頃、男性がまだ小さかった頃、3人でよく行った京都の繁華街にお母さんを車椅子で連れていって、「覚えてるか?」と聞くと「お覚えてるよ」とお母さんは言ったそうだ。それからコンビニで、パンを買ってふたりで食べて、川の側の遊歩道に来た。
「もうお金ないからアカンわ」と男性が言うと、お母さんは「そうか、アカンか・・・、おまえはわしの息子だから、わしが殺ったる」とお母さんは言ったそうだ。それを聞いて、男性はお母さんの首をしめたのだ。
11年の介護を男性はいやだと思ったことはないと言っていた。「母が大好きだった」「今度生まれ変わっても母の息子になりたい」と言っていた。そして、お金がなくなってからは、お母さんには2回ご飯を食べさせて、自分は2日に一回の食事だったという・・・・・
せつなかったよ。こんなに切ない事件はないと思った。かたや保釈金をポンと5億円払う人がいて、かたや一生懸命生きようとお母さんを献身的に介護していてもまったくお金がなくなってしまう人がいる・・・・これが今の日本の社会だと思った。
この男性はお父さんに「人からお金を借りるな、人に迷惑をかけるな」といわれて育ったために、親戚や、知人にまったく頼ろうとしなかったことが、逆に悲しい。

裁判官は、「母は被告を恨むどころか、最後に親孝行さえしてもらってきっと感謝している」というようなことを言っていた。
きのう夕食のときこの話をして、長女が泣き出したのをみて、わたしはまた泣けた・・・こうやって書いていてもまた泣けてくるのです。

わたしの母も認知症で、今は施設にお世話になっていますが、わたしも6年ぐらい母の面倒をみていたので、その大変さはよくわかるし、ほんとうに他人事ではないのでした。
それでもこれからはもっとこんな人たちが増えないようにしなくてはいけないのに、先月、医療法が改正され、今まで病院に入院できていたお年よりが、これといった治療の必要がない人はどんどん病院から出されることになった。今は90歳の母が70歳の娘の介護をしているということだって、現実に起きている。
弱いものへ、弱いものへとしわ寄せがきている今の政治はほんとうにおかしいよ・・・


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