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担保無し資金なしのインドネシア高速鉄道建設を引き受けた中国国営企業 一帯一路は人類共有のインフラ建設だ! 第5回中国駐大阪総領事館主催オンラインセミナーを受講して 

担保無し資金なしのインドネシア高速鉄道建設を引き受けた中国国営企業
一帯一路は人類共有のインフラ建設だ!
第5回中国駐大阪総領事館主催オンラインセミナーを受講して

 11/2、第5回中国駐大阪総領事館主催オンラインセミナーが王義桅(オウ ギキ)氏(中国人民大学国際事務研究所所長)を講師にお迎えし「ポストコロナの一帯一路の行方と日本のチャンス」をテーマに開催されました。講演は一帯一路構想の基本理念から具体的なコンセプトに至るまで内容豊富に語られました。ここでは、私の一番印象に残ったことを記したいと思います。詳しくは後日中国駐大阪総領事館のホームページに掲載されます。是非ご覧ください。

 講演は冒頭から長時間を費やして東洋文明、東洋文化とりわけ和合の精神についてのお話が続きました。これは、一帯一路構想は既存の西欧文明に基づく経済開発やインフラ整備とは一線を画するものだということをおっしゃりたかったのだと思います。現在、西洋文明の経済大国、旗手といえばアメリカです。「アメリカのやり方は(自国のモデルを押し付けるなど)干渉的、排他的で時に内戦まで引き起こします。中国は(干渉、排他、内戦など)しません。これに対して中国(一帯一路構想)はインクルージブル(全てを含んだ/包括的な)です。」と指摘されました。まさに、一帯一路は東洋文明の和合の精神を基本理念に構想されているのだと感心した次第です。

 具体例としてインドネシアの高速鉄道建設の話を挙げられました。「インドネシアの高速鉄道建設受注には中国だけではなく日本をはじめアメリカの企業が名のりをあげました。しかし、インドネシアの高速鉄道建設には担保も資金もありません。日本やアメリカの名のりをあげた企業は私企業です。(無担保、無資金のリスクをとることができませんでした。)結局、中国の国営企業が受注しました。」と経緯を説明されました。しかし、いくら国営企業といえども国内案件ならまだしも海外案件で無担保、無資金のリスクをどうしてとることができるのだろうかと疑問に思いながらお話お聞きしていました。「(インドネシアの高速鉄道建設)の資金融資は日本の郵貯制度に学びました。中国は(日本の郵貯に学んだ融資で)国内で高速鉄道を建設した実践経験があります。それをインドネシアに適応しただけです。この地域は人口も多く資源も豊富で間違いなく発展し(融資も回収でき)ます。」

 なんと、王義桅先生のお話には国境の概念がまるでありません。中国国内で高速鉄道を建設するのと同じ感覚でインドネシアの高速鉄道を建設するというのです。中国国民、インドネシア国民の高速鉄道建設ではなく、人類共有のインフラ・高速鉄道建設だということなのです。これは発想のコペルニクス的変換だと思います。現在、西側諸国を席巻する新自由主義からはとても発想出来るものではありません。「今だけ、お金だけ、自分だけ」の新自由主義。儲かりそうだとみればわれ先に群がり、投資しホットマネーと化した資金はバブルとはじけ、すぐに衰退。この西洋文明の究極ともいうべき新自由主義の対極にあるのが東洋文明の和合の精神を基調とする一帯一路構想なのだと思います。「一帯一路は人類を大変潤しています。30億人が中産階級となります。」と話されました。一個人、一企業、一国家の利益からしか発想できない観点からは中国の一帯一路構想はとても理解できないのだと思います。メディアで喧伝される「一帯一路は中国の覇権主義」等の論調は無知蒙昧、偏見、悪意の極みだと思います。

 中国の高速鉄道は日本の郵貯制度に学んだ融資資金で建設されたお話に関連して、「鄧小平氏が訪日した際、新幹線に乗ってスピードの速さに大変驚かれました」と言う逸話を紹介されました。また「日本には日米同盟があると言いますが、日本と中国は一衣帯水の隣国で2000年に及ぶ友好往来の歴史があり、しかも同じ東洋文明の基盤を持ちます」とおっしゃいました。いま日本に求められているのは、一帯一路構想に対する正確な認識と、日本のアドバンテージを発揮した参加だと思います。
(伊関)


追記

 「中国の高速鉄道建設資金の融資は日本の郵貯制度に学んだ」と言うところがよく分からなかったので調べてみました。

 日本では、民間金融機関では手に負えない様な公共性の高い大型で長期間のプロジェクトに対する資金融資は財政投融資(財投)によって賄われます。財投資金は政府系金融機関から融資されます。そして財投の原資には財投債、郵貯、年金資金等が充てられます。

 日本の財政投融資の原型となる国民の預託金を活用した産業振興融資は、郵貯誕生の3年後の明治11年に郵貯資金を活用して始まります。郵貯が日本の公共、大型、長期プロジェクト融資の原点でした。

 「中国の高速鉄道建設資金の融資は日本の郵貯制度に学んだ」と王義桅先生がおっしゃるのはこのあたりの事情を踏まえたことではないかと推察します。

 因みに、日本の高速鉄道の原点である東海道新幹線は世界銀行の融資を受けて建設されました。

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