日本の伝統芸術と芸能
能楽と能面
<その6 >
A
B
C
先回の問題
A,B,Cの女面の内、「小面」はどれでしょう?
1-通常の答え・・・AとCが 小面・・という訳でCが「万媚」でした。
2-最高の答え・・・AとCが 小面・・共に同じ能面、Cが万媚です。
いかがでしたでしょうか。 能面の知識がない方でも、A=C=同一の面とわかる方も居られるかもしれません。 子供のほうが正解率は高いと思います。 なまじ知っている方の方が、AとCは小面でも違う面などと考えやすいものです。何故でしょうか?少し説明してまいりましょう。 Aは真正面を向いております。Cは少し目線を上に向けております。所謂、<照らす>と言う形です。明るく微笑んでいます。 それに対してBは目線を下に向けております。所謂、<曇らす>と言う形。目じりが少し攣りあがり、顔の表情がきつくなります。 亡霊の面などを曇らせて見ますと、ぞ~としてきます。此処が能面の凄いところです。能面は中間表情といって捕らえどころのない表情を一見しておりますが、このような使い方をして、さまざまな表情を出すのです。 般若の面を左右どちらかに、横に瞬間的に動かすと、<切る>と言う形になり、これまた迫力があります。一度ご自分の顔でやってみてください。 <若女>
この女面は<若女>です。均整の取れた美しい顔立ちで、穏やかですね。でも、少し薄暗い和室の床の間にかけると、背筋がぞ~とする事が有ります。
(自作の面・・・一応 小面)
こんなへっぽこ面でも、床の間に飾ると、曇りの日などは余り気持ちの良いものではありません。 能面は表情がないなどどころではなく、有りすぎて一見無表情になるのです。これでお分かりの通り、能面には伝統の型がありますので、勝手に表情を変えることは出来ないのです。
面打ちには本来創作は許されません。ところが、能面を打つ方の中には創作面しか打たないと言う方が居られえます。出来上がりがそれなりに完成度が高ければ良いのですが、そのような方に限って、オカメ・ヒョットコの面を打って、<小面・若女・増女・・・・>と皆さんにお見せすることになります。
創作面を打つ場合は当て型は全く必用有りません。見込みで製作していけばよいからです。 ですから初めから見込みで能面を型紙なしで、書き立て彫りの手法を取って打つ方は、並大抵の技術を持つ方ではありません。一般のお方の出来るレベルでは有りません。 私の知っている能面師(福井県在住)はこの手法を取って、素晴らしい面を打っております。当然、能楽堂で使われております。
「若女」の面の写真を良くご覧ください。 一見して、<若女>とわかります。では、<小面>とどこが違いますでしょうか?。よ~くごらん下さい。口では簡単に表現できかねます。(サインは顔のどこかに有るのですが、通常見所からは見えません)
超一流の能面師 曰く、<一面覚えるのに 10年掛かる> このような代物を、型紙なしで、やる事こと事態、最初から無理!
次回はさまざまな「小面」の写真をお見せしながら、比較してみましょう。
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