ADD?先生の発達障害児 教育応援サイト

ADD?傾向のある塾教師がADHDやアスペルガー症候群の子にどうかかわり教えたらいいのか模索していくブログです。

おひま組のなおみちゃん 4  ADD童話です♪

2007-12-30 22:21:17 | ADD
前回の続きです。

そのとき 丸メガネ先生のメガネに
ぼんやり窓の外を眺めているなおみちゃんの姿が映りました。
丸メガネ先生は たいていの先生と同じように
おひま組の生徒がもぞもぞしたり そわそわしたり
ぼんやりよそ見をしたりするのが
好きではありません。

そこで先生は 厳しい声でなおみちゃんを叱ろうとして
すんでのところでやめました。
いたずらな春風が 子どもたちの耳元をくすぐり
先生の教科書をパラリとめくり
チョークの粉を 少しだけ吹き上げていきました。

先生がどうして叱るのをやめたかというと
先生はなおみちゃんたちよりずっと年をとっていたけれど
心の中のそのまた中には
小さな六才の女の子が住んでいたからなのです。
その女の子は 丸メガネ先生の心の中で
「算数の時間に算数の勉強をするのは大事なのは 百も承知。
でも たまには楽しいことをするのも悪くないわ。
こんな気持ちのいい春ですもの。」
とつぶやきました。
丸メガネ先生は ぽんぽんと手を打って
みんなの注意を集めました。
「あと 少し時間がありますが 算数の授業はおしまいです。
さあ みんな目を閉じて 何でも好きなものを想像してみましょう。」
目を閉じると おひま組の生徒たちの心には
どこまでもつづく黄色や赤のお花畑が広がりました。
鳥たちが はばたきながら飛びかい
動物たちが はねまわりました。

キーンコーンカーンコーン

と休み時間をつげる鐘がなり始めたとたん
おひま組みの生徒たちみんなの 夢という夢はすべて
あっという間に 春の光の中に溶けてしまいました。


おしまいです。ここまで読んでくださった方
本当にありがとうございました


おひま組のなおみちゃん 3  ADD童話です♪

2007-12-30 22:08:24 | ADD
前回の続きです。

だれがどうやって なおみちゃんのエンピツに数を注ぎ込んだのか
なおみちゃんは先生にたずねたくなりました。
けれどもなおみちゃんは 
学校は 生徒が知りたいことを先生にたずねるところではなくて
先生が知りたいことを生徒に教えてもらうところだと
承知していました。

3たす7はいくつですか?とか
この漢字は何と読みますか?とか
丸メガネ先生が知りたがれば
親切なおひま組の生徒は ていねいに教えてあげました。
でもなおみちゃんが
「ミツバチが花のみつをもらうとき 花はどんななぞなぞをミツバチに出すの?」
とたずねても
「雨の日 空はどんな悲しいことがあったの?」
とたずねても先生は答えてくれません。
「その質問は 後にしましょうね。」とたしなめるだけです。

ですからなおみちゃんは だれにもきこえないくらい小さな声で
自分で自分にたずねて
自分で自分に答えることにしました。

     どうしてエンピツの中に3や5が入っているかといえば
     エンピツも学校に通っているからよ
     学校に来れば
     今日のわたしが 昨日のわたしより
     かしこいように 
     今日のエンピツは 昨日のエンピツより
     おりこうになっているから‥‥‥
     どれくらいたくさん 頭の中に物が入るかといえば‥ね
     わたしの目で見えるものをぜーんぶと
     見えないもののぜーんぶだわ‥わかったでしょ なおみちゃん




おひま組のなおみちゃん 2  ADD童話です♪

2007-12-30 20:31:03 | ADD
前回の続きです。


それにしても 授業中はなんとゆっくり過ぎていくのでしょう。
あきれたことに
時間というのは 授業がはじまればいねむりをして
終わりの鐘が鳴ったとたん
まるで耳元でヨーイドンの鉄砲の音をきいたみたいにあわてて動き出すのです。
ですから なおみちゃんは 
授業の合間にちょっと恐い顔を作っては
時計の針が怠けないように見はっていました。

見はっている間 時計の一番細い針は 
まじめにカッチカッチ進んでいましたが 
なおみちゃんの手の方は すっかりおるすでした。
そして なおみちゃんがエンピツの先に気持ちを集中して
2+3とか5+4とか つづる間は
今度は時計の方が
(なおみちゃんは見ていないので はっきりしたことは言えませんが)
ぼんやりしているあんばいです。
なおみちゃんは 3+3とノートにつづってから
アリの行列を眺めるときのように
まじまじとエンピツの線を見つめました。
いったいいつから 3とか4とか5とかいう数字が
エンピツの中に入ったんだろう?
と不思議に思ったのです。

なおみちゃんが 幼稚園のとき
エンピツから出てくるのは
友だちの顔や花 それから動物だけでした。
かいても かいても 一度も数が出てきたことは
なかったのです。

次回に続きます


おひま組のなおみちゃん 1  ADD童話です♪    

2007-12-30 20:25:35 | ADD
年末年始のブログ休暇期間なので
私の童話を載せさせてもらいます
この童話 私がはじめて書いた童話でADDっ子の
女の子が主人公です。
実は 三樹なおみ というペンネームはこの童話からもらいました。
ちなみに 私の通っていた幼稚園は「ナオミ幼稚園」でした。
ピアノを習いたての頃 弾いていた曲が「ナオミの夢」!!
なおみ という名前に 特別な親しみを覚えて 
童話に ペンネームにと使いまわしています
イラストはこの童話を絵本にするために描いたものです。


おひま組みのなおみちゃん


なおみちゃんは おひま組の一番うしろの席で
おかっぱ頭をちょっとかしげて
「はて 頭の中には どのくらいいっぱい入るのかしら?」
と考えていました。
なおみちゃんの頭の中には もうすでに
お誕生日のケーキをはじめ 色鉛筆のセット 赤いポスト 雪だるま
お花畑とサーカスの動物たち ゆかいなピエロが一ダース
つまっていました。
さらに プールと 大きなくじら 山が三つ
サンドイッチと果物が入ったバスケット 
象の親子とハムスターの赤ちゃんが加わりましたが
まだまだ入りそうです。

担任の丸めがね先生は 度の強いメガネをかけていましたが
なおみちゃんの頭の中まではのぞけません。
そこでおひま組みの生徒のなおみちゃんが頭をしぼっているのなら
きっと黒板の問題だろうと
思いました。
‥‥‥きっと りんごが二つと三つを合わせていくつかなぁ?
って悩んでいるんだわ。

いかにも 丸メガネ先生の思ったとおり
なおみちゃんだって 白いチョークの色をしたりんごのことなら
考えていましたとも!
ただ あんまりあれこれ思いついたものですから 
ちょうど散らかし放題の部屋で なくし物をするように
算数の問題を一問 頭の中のどこかへやってしまっただけのことです。

一年おひま組の教室は いいにおいの春の光でいっぱいでした。
姿勢はしゃっきり 手はおひざの
行儀の良い一年生たちの口元には
シャボン玉のようなかわいらしいあくびが 浮かんでいました。
半分開いた窓からは 青い青い空が 自由に向かって
どこまでも手を広げていました。

思わず軽いふし回しで なおみちゃんの心に歌が生まれました。

     私はいっぱい いっぱい
     空を食べちゃう
     それから空の上の星と
     星の上の空も
     まだまだまだまだ 食べちゃう


次回に続きます