ニガイメ記

文章が苦手なので、イメージ写真でお茶をにごす日記
・・・の略。

こくりつ

2008年07月12日 | T-PROOF

例によって、写真は本文とは無関係ですが。
昨夜は、国立劇場へ。この日誕生日のきりん舎も誘って。
国立劇場の6月7月は毎年恒例「歌舞伎鑑賞教室」、通常は生徒さん対象の昼間の公演だが、近年、社会人対象の夜7時開演の日も設けられ、その名も「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」。好企画である。
企画にひかれて、というよりは、中村歌昇が初役で狐忠信に挑むという、その期待感ゆえに見に行こうと思った次第だが。実力十分でありながら、大歌舞伎の座組の中ではなかなか役に恵まれない人だけに、今回のような大役を勤める貴重な機会は、芝居好きとしては見逃せないのだ。

千本桜の「四の切」。
歌昇、期待にこたえて、存分に実力発揮。嬉しい。
身体の使い方からして、やはり芸の土台ができている人は違う。
本物の忠信の芯のある篤実さ、源九郎狐の動物的純粋さ、ともにこの人の芸風がよく活き、実(じつ)と情味で強く訴えかけてくる。この人気狂言にありがちなケレンばかりが目立つような物とは質が違った。狐が泣き、静が泣き、そして義経も涙するこの芝居の情のドラマとしての構造がくっきり見えた。
歌昇の長男、種太郎が義経を勤める。まだ19歳だ。物足りない点はやむを得ないが、役を自分なりにきちんと理解しながら演じてることは見てとれた。良い勉強をしていると思う。

鑑賞教室といえば、冒頭30分間の「解説・歌舞伎のみかた」も長年の伝統。私が学生だった頃に較べれば、今やはるかに中味充実の、至れり尽くせりの工夫の盛り込まれたものに進化している。特に、初心者向けの歌舞伎そのものの説明が、その日上演される芝居の良き導入にもなるよう、うまく考えられた構成がすばらしい(昔、岩井半四郎あたりが解説者の常連だった頃は、毎回ほとんど同じお話だったからなぁ・・・)。今回は澤村宗之助がご案内役。親しみやすく、良かった。
解説編一つとっても “観客のために”とのサービス向上の取組みが現れていることは確かで、「独立行政法人」としていろいろと「企業努力」している国立劇場に対しては、私も支持していきたいと思う。
簡単に言えば、国立劇場、なんか近ごろいい感じ! ってことか(笑)。


camera: Kyocera T-PROOF  film: Konica CENTURIA PORTRAIT400

くすQ

2008年07月08日 | Pentax K-mount

クス・クァルテットを聴きに紀尾井ホールへ。
一昨年2月の、前回来日時の公演が素晴らしかったので、今回も聞き逃すわけにはいくまい。
またしても凝ったプログラムを組んできたぞ。こりゃ楽しみな。

ハイドン:弦楽四重奏曲第63番ニ長調 Op.64-5,Hob.III-63「ひばり」
ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9
クルターク:弦楽四重奏のための「セルヴァンスキ追悼の小オフィツィム」Op.28
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番変ホ長調 Op.127

左から1st、Vc、Va、2ndといういわゆる対向型の配置。これはクァルテットとしてはわりと珍しい。
本日、特に良かったのが、ウェーベルンとクルターク。この曲目曲順にした効果は絶大(尤もクルタークはもとよりウェーベルンの影響下にある作曲家ではありますが)。清澄な美音、絶妙な強弱・音色のコントロールによって、瞬間瞬間に、且つ推移する中に、無調の美、絶対美の空間を現出せしめたウェーベルン。そのウェーベルンの、点描的極小的な抽象美の世界を受け継いだような音響で開始されるクルタークの曲だが、次第に魂の震えの如き「肉声」的な響きが現れだし、ついには「歌」に至る(で、突然終了)という構成が、ものの見事に表現されていく様は、まさにため息もの。
後半のベートーヴェンの大曲は、まず第1楽章が提示部の反復も無く、特にはっとさせるようなこだわりの表現も見受けられず、さらっと過ぎてしまった感じ。ちょっと肩すかし。そのぶん却って第2楽章の濃密さが際立つことになったが。第12番の第2楽章とは、全ての音楽の中で最高に美しい(そして深遠なる)ものの一つ・・・とまでの思い入れのある私にとって、その美が十全に再現された今宵の演奏は満足のいくものであった。たいへん繊細に、考え抜かれた解釈(特に弱音の箇所)だが、わざとらしさがないのが良い。第3、第4楽章は、再びすいすい進行。ここは曲想的にもこの表現で十分ではあったが、さらに踏み込んだ解釈があってもとは思った。
アンコールは、なんとルネッサンス期の曲を。ジョン・ウィルビー作「さようなら、かわいい、アマリリスよ」。

クス・クァルテット、今後ますます期待です。皆様もぜひ一度。


camera: Pentax MZ-M + M50mmF1.7  film: Agfa ULTRA100

7/6

2008年07月06日 | Pentax K-mount

連日、暑いですわ。

今日はうちにお客さんが来るので、朝からお掃除など。
部屋を片付けようという動機を起こす良い契機にもなるし、来客があるのはいいことだ。
皆さまもぜひ。

詳しくは「百八記」でも見ていただくとして、とにかく今日は昼も夜も良い食事をしたし、楽しかったですわ。


camera: Pentax K1000 + A50mmF1.4  film: Konica CENTURIA PORTRAIT400

MORGAUA

2008年07月02日 | NATURA

モルゴーア・クァルテットの定期公演を聴く(於:浜離宮朝日ホール)。
私にとってはけっこう久しぶり。一昨年の、ショスタコ全曲演奏会以来か。
「ベートーヴェン中期弦楽四重奏曲ツィクルス」の第4回目とのことだが、ベートーヴェンだけを演るわけではなく、意欲的な、ユニークなプロブラムは相変わらず。

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第8番ホ長調 Op.80, B.57
林光:インテルメディオ[2002]
林光:ラメント(悲の曲)[1999/2000]
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.74「ハープ」

まずドヴォルザーク、有名な第12番「アメリカ」以外の曲を、しかも私のひそかに好む第8番を演ってくれるとは実に有難い。演奏は、やや意外だったが、やさしくやわらかく、歌ごころしみじみ、と。泥臭さはなく、清澄な響き。
林光は、対照的な小品2曲を。どちらも構成が明確なため、面白さをつかみやすい。
メインのベートーヴェンは、やはり第1楽章展開部やスケルツォなど曲調の激しい部分でモルゴーアらしい鋭さ発揮、聴きごたえあり。
アンコールで再び林氏の曲、会場に臨席の作曲者へのサプライズプレゼントとして、歌曲を弦楽四重奏にアレンジしたものを。今年喜寿を迎えられるそうで。
アンコール2曲目はドヴォルザークのスラヴ舞曲第3番。
今回は「特集・林光」的雰囲気もあり、又、初めと終りがドヴォルザークだったりもあり、メインであるベートーヴェンの印象が幾分かすみがちになったかも。まぁ中期の5曲の中では、「ハープ」はやや存在感の薄いイメージもあるし・・・?(笑)。

とにもかくにも、今回もまた、モルゴーアならではの楽しいライブでしたとさ。以上。


camera: Fuji NATURA BLACK F1.9  film: Kodak SUPER GOLD400