歌舞伎座夜の部へ。今月は夜の部だけ見る。
「六世中村歌右衛門五年祭」つまり追善興行。ついでに玉太郎が六代目中村松江を襲名、その子息が五代目玉太郎として初舞台。
「口上」の幕は大幹部ずらりと居並び壮観。その中で、又五郎の姿を見られるのは嬉しい。お元気そうで。最長老91歳。歌右衛門のことを「藤雄ちゃん」と言えるただ一人の人。
芝居は歌右衛門ゆかりの物が並んでいたわけだが(といっても義太夫物の大作は無し)、結局、仁左衛門の「伊勢音頭」が最も面白かった。今回の貢は今まで見た中で一番。性根が確かだから良く伝わってくる。辛抱と発散、その芝居運びの巧さ。福助の万野と東蔵のお鹿、この二人がちょっとやり過ぎ作り過ぎで、どたばたして安っぽくなりそうであったが、それとてもドラマを動かすバネとして取りこんでしまったような、アンサンブルの一部として吸収してしまったような、そんな大きさが仁左衛門にはあった。お紺の時蔵と喜助の梅玉は品の良い、大人しめな演技。もちろん仁左衛門はしかっりリードしていく。シンになる役者はかくあるべしという歌舞伎の手本を見るような巧さ。さすがだ。
他、「井伊大老」と「時雨西行」。感想は割愛。
camera: Minolta TC-1 film: Kodak MAX beauty400