まれな遺伝突然変異を有する膀胱癌患者は、エベロリムスに対する例外的な反応を示す
ある進行性の膀胱癌患者は、第1相試験でエベロリムスとpazopanibの組み合わせで14ヵ月の間、完全な応答をした。
その患者の腫瘍のゲノム・プロファイリングは、この例外的な反応を引き起こしたかもしれない2つの変質を明らかにした。
この例外的な応答者は、臨床試験で少なくとも6ヵ月の間、治療に完全に応答するか、または部分的に寛解した。
「我々は、2つの抗癌剤 ― mTOR阻害因子エベロリムスとpazopanib(腎臓癌を治療するのに用いられる別の薬) ― の第1相試験を行った。そして我々の患者の内の一人は、その膀胱癌がほぼ完全な寛解で進展し、それは14ヵ月の間続いた」、Wagleは言う。
「我々は患者の腫瘍の全部のexome塩基配列決定を行った、そして、驚いたことに、我々は2つの遺伝子変異mTORを確認した。mTORはエベロリムスの標的である。」
2つの突然変異(mTOR E2419KとmTOR E2014K)は、これまでヒトでは確認されてはいなかったが、一つは酵母とヒトの細胞系で研究されていた。
Wagleと同僚は、2つの突然変異の性質を理解するために更なる研究を実施して、それらがmTORによって媒介される細胞シグナル経路を活性化することを発見した。
これらの突然変異は、おそらく患者の癌細胞が生存するためにmTOR経路に依存するようにした。
それが患者の癌がmTOR阻害因子のエベロリムスにきわめて影響されるようになった理由かもしれない。
この臨床試験の他の3例の膀胱癌患者は、病態の安定は6ヵ月未満だった。
副腎に癌があった患者は、13カ月、安定的な病態が続いた。
しかし肺癌患者は、誰も本研究から利益を得なかった。
学術誌参照:
1.エベロリムスとPazopanibの第1相試験で驚異的な応答をした患者にはmTORの活性化突然変異があった。
癌Discovery、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140313092043.htm
<コメント>
エベロリムスとpazopanibに強く応答した患者の腫瘍には、mTORに2つも突然変異があった(E2419K、E2014K)という内容です。
mTORの経路を活性化する(つまりタンパク質の合成を促進するなどの)作用が強く、癌はその性質に依存してしまったのだろうということです。
mTOR抑制は肺癌には効果がなかったようです。