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2015年3月12日

2015-03-18 23:42:38 | 医学

心臓の細胞が骨に変わることを防ぐ
Preventing heart cells from turning to bone



グラッドストーン研究所の研究者はヒトの細胞を使った実験で、心臓の血流がどのようにして弁が硬くなる心血管疾患から保護するのかを発見した。彼らはさらに、異常が起きたときにほんの一握りの遺伝子のスイッチを入れてこのプロセスを修正する潜在的な方法を特定した。これらの発見は、血流が関係する病気、例えば心臓発作と脳卒中を引き起こす動脈硬化のような病気に影響する可能性がある。

石灰化大動脈弁疾患(calcific aortic valve disease; CAVD)は心疾患の3番目に多い原因である。アメリカだけで約150万人が罹患し、10万人が人工弁置換手術を受けている。CAVDは年を取ると共に発症し、心臓弁がカルシウムを作り始めて骨のように堅くなる。科学者は長い間心臓の血流が弁と動脈の石灰化で役割を果たすことは知っていたが、それがどのようにして起きるのかは理解していなかった。

Cell誌でグラッドストーン研究所により発表される新しい研究は、健康な弁を骨のようにする原因となる一連の出来事を明らかにする。論文の首席著者のDeepak Srivastava医学博士はグラッドストーンの心血管・幹細胞研究のディレクターであり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の小児科学心臓病専門医でもある。彼は以前、NOTCH1というマスター遺伝子の2コピーのうちの1つの破損は弁の先天性異常とCAVDを引き起こすことを発見した。

今回の研究で彼はNOTCH1が内皮細胞上でセンサーのように働くことを報告する。内皮細胞は弁と血管の内側を覆う細胞である。NOTCH1は細胞外の血流を検出して、その情報を細胞内の遺伝子ネットワークに伝える。血流によるNOTCH1の活性化はドミノ効果を引き起こし、ネットワーク内の他の多くの遺伝子をオンにするかオフにする。それにより炎症と石灰化は抑制される。しかしながら、このプロセスがNOTCH1の減少によって阻害されると、細胞は混乱して骨細胞のようにふるまい始める。弁はカルシウムをたくわえて、致命的なまでに硬くなる。

彼はグラッドストーン・ラボのBenoit Bruneau博士、Katherine Pollard博士たちとの協力で幹細胞テクノロジーを使ってCAVDの患者から大量の内皮細胞を作り、それらを健康な細胞と比較して弁細胞に育つ過程における遺伝子およびエピジェネティックな変化を明らかにした。研究者は遺伝子シーケンシングとコンピュータによりヒト内皮細胞の「ソース・コード」を開放して、そのコードがどのように疾患で阻害されるかについて研究した。

「CAVDで阻害されている遺伝子ネットワークを理解することで修正すべき箇所を特定し、疾患のプロセスを補正するための新しい療法を発見する」、グラッドストーン研究所の医学博士でUCSFの博士課程学生である筆頭著者のChristina Theodorisは言う。

大量のデータを厳密に調べることで科学者は3つの重要な遺伝子を明らかにした。それらはNOTCH1の突然変異によって変更され、その上マスター調節因子としてふるまうことで、通常は炎症と石灰化を防いでいる重要な経路をオフにする。注目すべきことに、研究者がこれらの3つの遺伝子の活動を操作すると、ネットワーク内の他のほとんど全ての遺伝子が修正された。これはCAVDの新しい治療の標的を示す。科学者たちは現在、その正常な状態に遺伝子ネットワークを回復する薬をスクリーニングしている。

「これらのマスター調節因子の特定は、CAVDの治療における大きな一歩である。
NOTCH1の突然変異をもつ人々だけでなく、弁と動脈の石灰化を経験する患者においてもである」、Srivastava博士は言う。

「石灰化がどのように発生し、そして重要な中核が何であるかを知った今、我々はどんな遺伝子を探すべきかについて知っている。それは他の関連する心血管疾患でも変異する可能性がある。」

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150312123317.htm

学術誌参照:
1.ヒト疾患モデル化は、NOTCH1ハプロ不全に関する転写・エピジェネティックな統合的メカニズムを明らかにする。

Cell、2015;

<コメント>
石灰化大動脈弁狭窄(calcified aortic stenosis)のように大動脈弁が石灰化する疾患の原因についての記事です。

Abstractによると、NOTCH1は血流によるずり応力(shear stress)を感知することで、NOTCH1が結合するエンハンサーのH3K27アセチル化を維持し、MMPs、GREM1、DKK1、CYGB、TXNRD1の転写を促進して、SOX7、TCF4、SMAD1による骨形成(BMP、TGF-β、WNT)と炎症(STAT、IRF)と酸化ストレスを抑制しています。

運動不足や筋力の低下により血流が低下すると血管や弁が石灰化しやすくなるということのようです。



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