越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』(3)

2011年09月17日 | 小説
 戦いのメタファーは、老夫婦ばかりに適用されるのではない。

 長男ゲイリーの家庭でも同じだ。

 ゲイリーとその妻、富裕なクエーカー教徒の家柄を誇るキャロラインは、フィラデルフィアの高級住宅地に住む。

 「最後のクリスマス」を、子どもたちはむろん、嫁や孫たちも全員招いて、中西部の自宅で祝いたいという姑の「気違いじみた執着」(嫁キャロラインの言葉)をめぐって、内戦が勃発。

 彼らの場合は、寝室が戦場となり、故郷でのクリスマスに固執するゲイリーと、彼を「鬱病」と決めつける妻とのあいだで戦いが引き起こされる。

 「キャロラインは今や夫への敵意を夫の“健康”への“気遣い”に偽装する技を身につけている。

 この生物兵器に、彼が使用している家庭争議用の通常兵器は太刀打ちできないのだ。

 彼が意地悪く彼女の人格を攻撃するのに対して、彼女は高潔に彼の病気を攻撃する、という構図になっている」

 そうした夫婦の諍い、嫁姑の確執など家庭内の争いを、フランゼンはなぜ「戦争」のメタファーによって描くのか。

(つづく)

 
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