越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(4)

2015年04月23日 | サッカー部長日記

4月18日

(写真)背中をゴールに向けながら三苫のアクロバティックなひと蹴り (c)「明スポ」

きょうも、相変わらず春風がつよい。茨城県竜ヶ崎市の陸上競技場「たつのこフィールド」。フィールドの右サイドから左サイドへ強風が吹く。追い風と向かい風では、ボールの飛び方が違う。練習中に、選手が追い風を利して、サイドライン沿いからキーパーのほうへ蹴ると、ボールがどんどん伸びていく。キーパーは大変だ。 練習中、ゴールの背後に飛んでいくボールを拾うために、誰に頼まれたわけでもないのに、試合に出ていない選手たちが全員で球拾いをしていた。彼らだって試合に出たいだろうに、いまは縁の下の力持ち。考えてみれば、部員70人のうち、試合に出られるのは、交替メンバーをいれて、たったの14人。ほとんどが縁の下の力持ちなのだ。

(写真 試合前の練習風景)

第4節、流通経済大学戦。流経大はこれまで1勝2分けで、勝ち点「5」。負けないしぶといチーム。DFに田上大地君、MFに古波津辰希君、FWに中村慶太君と、全日本選抜クラスのタレントが揃う。

一方、明治は、膝の怪我で欠場の山越康平(法4)以外は、ベストメンバー。キーパーは八谷惇希(商3)。DFは右から、室屋成(政経3)、小出悠太(政経3)、工藤将太郎(商4)、高橋諒(文4)。MFは、道渕諒平(農3)、差波優人(商3)、柴戸海(政経2)、和泉竜司(政経4)。FWは木戸皓貴(文2)と藤本佳希(文4)のドイツ文学コンビ。  

きょうのテーマは、「球際に厳しく」。学生たちのテーマは「目の前の相手に負けない」。  

前半、明治は向かい風の側。必然的に、ディフェンスに主軸がおかれる。たとえ攻められても決定的なチャンスを作られなければ良い、というスタンスで戦っている。流経大は10番古波津、9番中村がさかんにシュート放つも、ボールが浮いて危険な感じではない。明治もチャンスは少ないが、24分に数名が絡んで、すばやいパスまわし。木戸がゴール右からシュートを放つも、惜しくも左ポストを外れる。  

ハーフタイムには、栗田監督から「風下で、うまくゲームをコントロールできている。いいサッカーをしている」と、激励の言葉。三浦コーチは「後半はセットプレーがカギになる」という指摘。こちらにセットプレーがまわってきたら、きちんと点を取れ、向こうにセットプレーがまわってしまったら、しっかり守れ、というメッセージ。  

ふたたび、全員で「行くぞ!」と声を出し合って、後半のピッチへ。後半は風上だから有利かな、と思っていると、1分もたたないうちに、あれよあれよ、という間にボールをゴールまでドリブルやパスで運ばれ、失点を喫する。あまりにあっけない点の取られ方に、誰もが唖然。  

その後、藤本のシュート、差波のコーナーキックなどがあるが決まらない。ベンチは、後半24分に、相手に抑えられているMF道渕に代えて、レフティの河面旺成(かわづら・あきなり)(政経3)を投入。25分にゴール表面30メートルあたりで、フリーキックのチャンスを得る。河面と差波がボール寄っていくが、結局、差波が蹴ったボールはゴールをはずれる。28分には、DF工藤の代わりに早坂龍之介(法3)を投入。三浦コーチが栗田監督に、「早坂なら、ボールを運べます」と進言。それでも、0-1の逆境はなかなかくつがえせない。

38分に、監督は満を持して最後のカードを切る。木戸(熊本出身)に代えて、同じく九州出身ながら、明るいラテン的な雰囲気の三苫元太(みとま・げんた)(政経4)を投入。直後に、2度左からコーナーキックのチャンス。ゴール前に団子状態になって押し合いしている選手に、監督から「つまらない反則するな!」という檄が飛ぶ。流経大も必死のクリア。センターサークルあたりのMF早坂から、FW三苫へ浮き球。三苫はゴールに向かって、そのボールを追い、流経大のディフェンスに引っ張られながら(監督は「反則だ!」の声をレフリーに浴びせる)必死にくらいつく。ベンチから見ていると、一瞬、三苫、ディフェンス、キーパーが三つどもえになった。

ボールはキーパーのわきをすり抜けてゴールへ吸い込まれる。そのときは、三苫がヘッディングしたのかと思ったが、『明大スポーツ』の写真を見ると、ディフェンスに体を引っ張られても、必死に右足をあげて、つま先で蹴っていたのだった。

あとで「今年のゴール、ベスト3」を挙げるとしたら、これは絶対にその中に入るはず。負け試合を救ってくれた神がかり的な、気持ちの入ったゴール。時間は、ぎりぎりの後半43分。河面と早坂と三苫、交替選手がしっかり活躍してくれた。ベンチの采配の妙。

(写真)試合を終えて、栗田監督(奥)と三浦コーチ(手前)が選手たちを迎える。19番が三苫へ絶妙なパスを送った早坂

死闘を終えて選手はくたくた。1週間で3試合の過酷な日程を2勝1分けで、よく乗り切った。勝ち点10で首位をキープ。慶応大学が2勝2分け勝ち点8で2位、順天堂大学が2勝1敗1分け勝ち点7の3位。まだまだ先はながい。

 明大サッカー部の選手名簿を見ると、北は北海道から南は鹿児島まで、いろいろな出身地の選手がいる。井澤ゼネラルマネージャーの献身的なスカウティングのおかげである。選手たちが練習を繰り広げる八幡山のグラウンドは、さながら「カリブ海」のようだ。多様な人間たちが接して、ユニークな混淆文化を作りあげる。

「カリブ海は(中略)諸々の出会いとそこから生まれる諸関係の海なのです」*(1)

差波や室屋は、青森の高校時代に冬の雪の上でボールを蹴っていたという。三苫はあったかい福岡で、きっとのびのびとボールを蹴っていたはず。どちらも明治の「カリブ海」で出会って、互いに化学反応をおこす。

きょうは、三苫の好きなサルサでも聞いて、モヒートで乾杯したい気分である。

註(1) エドゥアール・グリッサン(小野正嗣訳)『多様なるものの詩学序説』以文社、2007年、 10-11ページ。

明大スポーツの記事

(写真 初のヒーローインタビューを受ける「頼れる男」三苫元太)

 

 


書評 今福龍太『ジェロニモたちの方舟』

2015年04月23日 | 書評

反逆者が精神を解放する 今福龍太『ジェロニモたちの方舟』

 越川芳明

砂漠の小さな茂みが人目につかないところで地下茎を伸ばしているように、世界には「抵抗思想」の見えない鉱脈が広がっている。著者は、世界の大海にうかぶ数々の小さな孤島をそうした鉱脈の一部(まさに、「氷山の一角」)と見たて、それらが海でつながっていると発想する。本書は、いわば抵抗思想の考古学的発掘作業だ。  

著者は一九世紀に米国が関わった二つの歴史的事件に着目する。「インディアン強制移住法」(一八三〇年)と「米西戦争」(一八九八年)だ。前者はジャクソン大統領ら民族浄化主義者たちが先住民という「内なる他者」を征服した後、「外なる他者」への侵略行為に踏み出した。米国の「欲望」の起源をそれらの事件が規定することになったという。  

「国家の天命」として、領土を拡張しようと米国のゆがんだ深層心理が繰り出す「暴力」の触手はハワイ、キューバ、中南米へと伸び、フィリピンやベトナムで殺戮(さつりく)を引き起こす。そして、今世紀のイラク戦争へとつづく。著者によれば、「インディアン戦争」は、まだ終わっていない。  だが、圧政に立ち向かうジェロニモたちも「群島」のようにあちこちに存在する。書名のジェロニモとは、米国政府軍に抵抗した先住民アパッチ族の勇敢な戦士。本書の試みは、そうした反逆者たちの亡霊を召喚し、それによって非人間的な経済的効率主義や軍事的な欲望(大陸的な縄張り意識)に対抗する、多様性の「海」や「群島」の思想を鼓舞することだ。  

まさにキューバの思想家ホセ・マルティの言葉、「思想は他者に奉仕するためにある」の実践だ。  

米国の諸制度に反対し、正しい人間のいる場所は「牢獄」であると言いきった19世紀の思想家H・D・ソローをはじめ、太平洋の思想家ハウオファ、フィリピンの詩人フランシアらが召喚される。これらの反逆者たちは、本書によって新たな生命を獲得し、私たちの硬直した精神を解放してくれる。

(『共同通信』2015.3)


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(3)

2015年04月20日 | サッカー部長日記

4月15日(水)

駿河台キャンパスで大学院の授業を済ませてから、電車で横浜へ向かう。  

きょうは、午後遅く春の大風が吹くらしい。空には季節外れの入道雲が浮かぶ。雷が怖い。

三ツ沢競技場の入口では、いまチューリップが花盛り。  

4時から試合開始。相手は、地元の神奈川大学。今年2部からあがってきた勢いのあるチーム。先発メンバーには、SBの高橋諒(文学部4年)の名前がない。その代わりに、河面旺成(かわづら・あきなり)(政経学部3年)が初出場。膝の故障を抱えるCB大越康平(法学部4年)の代わりに、副将のDF小池佑平(経営学部4年)が初出場。  前半、コイントスで風上をとった明治は、風を利して、キャプテン和泉竜司(政経学部4年)の先制弾と藤本佳希(文学部4年)の追い打ち弾で、幸先よくリード。  

後半、風下にまわって形勢わるし。神大の反則で腰を痛めた藤本に代えて、このところ好調の木戸皓貴(文学部2年)を投入。さらに、副将のMF小谷光毅(政経学部4年)に代えてFWの三苫元太(政経学部4年)を投入。それでも、なかなか追加点を奪えない。逆に、後半22分、キーパーの八谷惇希(商学部3年)が反則(審判にボールを2度持ったと判断された)を取られて、ゴール前で間接フリーキック。ゴール前にずらりと並ぶも、放たれたボールが明治の選手の体に当たり、オウンゴール。何だかすっきりしない。 

後半35分から36分にかけて、SB室屋成(政経学部3年)が右からゴールライン沿いに鋭く切り込み、センタリングをあげるが、ディフェンスにクリアされる。そこから、4度立て続けに右から左からコーナーキックを放つも、得点にはいたらず。  

こうした展開で、引き分けに持ち込まれたら、一気に選手たちのテンションがさがるだろう。気合いで守りきれ!と、ロスタイムに入ると、ベンチは3枚目のカードを切り、ボランチの差波優人(商学部4年)に代えて早坂龍之介(政経学部3年)を入れる深謀遠慮の作戦。  

ようやく2-1で辛勝。3-0で勝つハーフタイムでの目標も想定外の出来事で一転タフな試合に。選手にはいい試練になったかもしれない。

試練を与えてくれた神大チームに感謝。楽勝は選手をダメにするから。

負けるのは簡単でも、勝つのはつねに難しい。 

しかし、これで3連勝。しかもすべて1点差。2日休んで、土曜日には、強敵・流通経済大学との一戦。しかも敵地に乗り込んでの大一番。

 

自分のチームの事情に思いを馳せることも大事だが、相手のチームの事情に思いを寄せることも重要だ。私たちは絶対的な尺度など持てないのだから、傲慢になってはいけない。

「どの文明も、自己の思考の客観性志向を過大評価する傾向をもつ。それはすなわち、この志向がどの文明にも必ず存在するということである。われわれが、野蛮人はもっぱら生理的経済的欲求に支配されていると思い込む誤ちを犯すとき、われわれは、野蛮人の方も同じ批判をわれわれに向けていることや、また野蛮人にとっては彼らの知識欲の方がわれわれの知識欲より均整のとれたものだと思われていることに注意をしていない」*(1)    

冒頭の「どの文明も」というくだりを「どのチーム」に入れ替え、「野蛮人」を「敵のチーム」に入れ替えると、サッカーの試合にも通じることが分かる。

註 (1)レヴィ=ストロース(大橋保夫訳)『野生の思考』(みすず書房、1976年)3ページ。

参考:  明大スポーツの記事 

(下の写真)東京中日スポーツ(首都圏版)4月16日(木)

 

 


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(2)

2015年04月16日 | サッカー部長日記

4月11日(土)

 このところ、冬に逆戻りしたかのように、肌寒い日がつづく。

 きょうも、昨夜からの雨が残っている。お昼すぎには雨も止み、曇りになるという予報。試合は1時50分より駒沢競技場。対戦相手は法政大学。昨年二部優勝、総理大臣杯準優勝のチーム。

 7時すぎに家を出て、電車で北千住へいき、喫茶店で朝食をとりながら、たまった原稿を書く。そこから、電車で駒沢大学駅に向かう。サッカー部の学習支援を担当してくれる鬼山暁生君(大学院文学研究科2年)と待ち合わせ。駅の近くのレストランでランチを一緒にとる。

 競技場で栗田大輔監督をはじめスタッフ全員に鬼山君を紹介する。スタンドにあがると、前部長の別府昭郎先生も観戦にこられている。別府先生にも鬼山君を紹介。

 控え室に戻りミーティングに参加。きょうの監督のテーマは「圧倒」。学生たちの「テーマ」は「油断するな」。

 メンバー表を見ると、センターバックの山越康平君(政経学部4年)の名前がいない。トレーナー宮本康良さんによると、膝を怪我したらしい。その代わりに、工藤将太朗君(商学部4年)がリーグ初出場。

 試合は、前半に左サイドバックの高橋諒君(文学部4年)がゴールラインぎりぎりに、さかんに切り込みをはかり、センタリングをあげるが、ゴール前の選手と合わない。両チームとも譲らず、ある意味膠着状態。

 ハーフタイム前に、FWの藤本佳希君(文学部4年)がゴールを決める。小谷光毅(政経学部4年)からの絶妙のロングパスを受けて、ドリブルでディフェンスを振り切りシュート。

 後半の開始直後にも、藤本君がこの日2点めとなるゴール。道渕諒平君(農学部3年)がドリブルでしかけ、ディフェンスにひっかかったところに、あとを追っていた藤本君が絡み、そのままドリブルでゴール前に直進。彼にとっては容易な(と思える)フィニッシュだった。もはや誰も機関車のような藤本君を止められない。

 このゴールで安心したわけではないだろうが、法政に立て続けにいいクロスをあげられ、あわや!という危険なシーンが訪れる。ベンチは、選手交替のカードを切る。後半19分に小谷光毅君に代えて、土居柊太君(政経学部2年)を投入。70分に、法政の西室隆規君(鹿島ユース出身、4年)の左足の見事なフリーキックで1点を奪われる。2-1に。明治は守勢にまわり、試合が落ち着かなくなる。73分に、ベンチは道渕君の代わりに木戸皓貴君(文学部2年)を投入。その数分後に、木戸君がドリブルで突破したあと、左足で見事なシュート決めた。木戸君、きょうも途中出場で、ゴールを奪う。藤本、木戸のドイツ文学コンビ炸裂である。

 これで試合が終わってくれればいいのだが。87分、後半から入った法政の高田一輝君(川崎ユース、3年)がゴールを決めて3-2。接戦に持ち込まれてしまった。だが、3分のインジュリータイムをなんとか凌いで辛勝。勝点3をゲット。

 奇しくも初戦とおなじ、3-2になった。

 八谷惇希君(政経学部3年)の試合後のコメント。「キーパーなので、セットプレーで点を取られるのが一番悔しい。無失点なら負けることはない。無失点で勝ちたい」

 接戦をものにすることで、選手はタフになる。厳しい環境を生き伸びるために、ある種の知恵を獲得する。

 キューバの革命の闘士、フィデル・カルトロも言っている。

「旋盤が金属片を削るように、いろいろな困難が人を形作っていく」*(1)

 註(1)イグナシオ・ラモネ(伊高浩昭訳)『フィデル・カストロ みずから語る革命家人生』(岩波書店、2011年)

(上)試合前の応援席 (下)試合後の応援席(選手の後ろに別府先生と鬼山君の姿も)


ついに藤本佳希、全日本学生選抜に

2015年04月16日 | サッカー部長日記

関東大学リーグが始まり、絶好調の「モンスター藤本」こと、藤本佳希(明大・独文4年)が全日本学生選抜(ユニバーシアード)に選ばれた。

明日の神大戦でも、得点をとって、得点王へまっしぐら。

めざすは室屋成と同じ、オリンピック代表、さらに、武藤(慶大出、FC東京)と同じ、ハリルホジッチ率いるA代表だ。

 

明大サッカー部ホームページ

ゲキサカ

 


ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(1)

2015年04月15日 | サッカー部長日記

4月5日(日)  

朝から小雨。風はないが、肌寒い。  

トレーニングウェアの上に、長いダウンジャケットを羽織って外出。駅前のコンビニで『東京中日スポーツ』(首都圏版)を買う。裏一面に関東大学サッカーリーグの記事が出ていることが多い。案の定、キャプテン和泉竜司君(政経学部4年)のもとへ笑顔で駆け寄る明大選手たちの写真が大きく載り、「明大執念」「2度追いつき最後は主将の右足」「和泉快幕弾」の文字が踊る。

                東京中日スポーツ 

電車で新宿に出て、喫茶店で新聞を読み、原稿のつづきを書く。  

人間も60歳(かんれき)をすぎれば、すでにサッカーの試合でいう「インジュリータイム」。それは「アディショナルタイム(追加時間)」とも呼ばれるが、副審がボードで、残り時間があとどのくらいあるかを教えてくれるサッカーの試合と違って、こちらの残り時間は誰も教えてくれない。  

「人生とは、反対側の括弧を待つ括弧にすぎない」*(1)と述べたのは、キューバの亡命作家インファンテ。  

反対側の括弧、すなわち「死」の訪れは、いつくるのか、誰にも分からない。   

試合終了の笛を聞くのはいつなのか。きょうか、明日か、あさってか。それまでは「カルぺ・ディエム」の精神*(2)で行くことにしよう。

電車で八幡山のグラウンドへ。サブのチームが専修大学とトレーニングマッチをやると聞いた。しばらく雨を避けて、ジムの中で学生たちと話す。  

きょうの目的は、学生たちの学習面での問題点の聞き取り調査。農学部3年の学生M君は、専門の理数科系の科目が難しいと言っている。高校時代の教科書からやり直さないと付いていけない、と。政経学部4年のS君は、就職活動の最中。いろいろと先輩の話を聞いたり、会社訪問したりして、進路先を模索している様子。  

そのうち、専修大学との練習試合を終えたサブのメンバー全員がジムにやってきて、FW三苫元太君(政経学部4年)を中心に一カ所に集まり、反省点を洗い直している。試合中にディフェンスとオフェンスのあいだに、守りの温度差があったようだ。試合中に互いの意見を伝えあい、修正することが大事だと確認していた。

専修大との練習試合    

さて、きのうは西が丘スタジアムで、関東大学リーグの開幕戦があった。どんよりとした曇り空だった。桜は満開だが、温度は低く肌寒かった。もっともゴールからゴールまで百メートルあるスペースを走りまわる選手にとってはちょうどいいくらいかもしれないが。  

本蓮沼へ向かう電車の中で、和田勇樹君(国際日本学部3年)に会う。明治高校出身で、自宅から通っているという。駅から一緒にスタジアムまで歩く。チェーンでない弁当屋がある。和田君によれば、安くてうまいと評判の店らしい。すべて二百八十円。スタジアムへ向かう人たちが列をなしている。ニンニクの芽と豚肉炒め弁当を買う。  

和田君は試合に出る選手の代わりに、開会式に出るらしい。会場入口で主務の西原天童君(政経学部4年)に入場証をもらい控え室へ向かう。すでに学連の仕事をしてくださっているOBで総務担当の石井譲二さんの顔も見える。まだ2時間前なのに、いつもながら早い。そのうちに栗田大輔監督、三浦佑介ヘッドコーチも到着。ユニバーシアードの代表選手を連れて韓国に遠征に行っていた神川明彦総監督も、井澤GMも顔を出す。控え室では、和泉キャプテンだけトレーナーの入念なマッサージを受けている。このあとミーティングをおこなう。  

きょうのテーマは「絶対に勝つ」。ここ5年ほど初戦に勝ったことがないらしい。それほどのスロースターターなのだ。去年は秋シーズンを無敗で終えて、専修大と勝ち点47で並んだのに、得失点差で優勝を逸したのだ。14勝5敗3分け。監督によれば、今年は勝ち点50(以上)をめざす。16勝4敗2分け(勝率82パーセント)以上で、達成できる。そのためにも、開幕ダッシュは大事なのだ。  

とはいえ、2月、3月と新チーム結成時に、全日本学生選抜チームに多くの選手を輩出。チームプレーの練習時間が少なかった。だから、コンビネーションは、うまく行くはずがない。それは折り込み済みだ。ミスをしてもそれを修正すればいい。そう栗田監督は指示を出す。  

関東学連のビラを見ると、順天堂大学の監督は、かつての日本代表選手、堀池功氏が就任したらしい。大榎克己、長谷川健太とともに、「清水東三羽烏」のひとり。栗田監督の先輩でもある。  

試合は、前半9分に早くも守備を崩されて失点を喫する。得点を決めたのは、全日本学生選抜のFW長谷川竜也君。さすが順大の背番号10。パスを出したのは新里諒君。まだ2年生のMFだ。  

守備の距離感が悪かったようだ。ただちに、栗田監督と三浦コーチの指示が飛ぶ。ボランチの柴戸海君の動きがよくなり、相手ボールを奪う機会が増えてくる。前半のうちに同点に追いつきたい。  そう思っていると、右サイドバックの室屋成君(政経学部3年)から道渕諒平君(農学部3年)に絶好のパス。道渕君、得意のドリブルでゴールまでまっしぐらに突き進み、シュート。キーパーが弾いてゴール前は混戦に。詰めていた誰かがシュートを放ち、同点ゴール。最初は誰だったのか、ベンチから見えなかった。あとで聞けば、FW藤本佳希君(文学部4年)が決めたようだ。 前半は1−1で折り返す。 

後半は開始直後に順天堂のMF原田鉄平君(2年)に三十メートルのスーパーシュートを決められ、ふたたび追う展開に。ベンチは、慌てることなく指示をだす。こういうシチュエーションをどうやって克服するか、それだけに集中して楽しもう、と。  

選手もそうだが、どう修正するか、ベンチも試されている。点を失ってからただちに、FW小谷光毅君(政経学部4年)の代わりにFW木戸皓貴君(文学部2年)を投入。その直後に、右コーナーキックを得て、差波優人君(政経学部4年)の蹴ったボールを木戸君が見事なシュート。絵に描いたように見事なセットプレイ。誰もがあっと驚いた。  

それで、2−2の同点に追いつく。それにしても、その日のファーストタッチでゴールを決めた木戸君の技術には舌を巻いた。藤本君に木戸君と、明治の得点は文学部ドイツ文学専攻の学生によるもの。さながら独文学会シンポジウム。スタンドの応援席から、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が流れてくる(なわけないか)。最前列に陣取るサッカー部員の応援席は大いに沸く。  

さらにその数分後に、ふたたびセットプレイがまわってきて、ペナルティエリアのゴール右側から、和泉君が倒れながらゴールを決め、ついに3−2と逆転。  

逆転してからの残り15分+3分のロスタイムは、順大の攻撃のチャンスをボランチの柴戸君がことごとく詰みとる。マン・オブ・ザ・マッチには和泉君が選ばれて、インタビューを受けた。影のマン・オブ・ザ・マッチは柴戸君かもしれない。  

こういう厳しいプロセスをへて勝つ。こんな幸せな気持ちに浸れることはそう多くはない。すべて選手たちと、監督をはじめスタッフのおかげである。トルコの現代作家もこう言っている。  

「幸せになろうと努め、“時間”を忘れることに挑めるのは、ただ人間だけである」*(3)

「時間を忘れることに挑む」とは、分かりにくいかもしれない。人間は「忘却する動物」だから、いま味わった「幸せ」もいずれは忘れてしまいがちだが、そうならないように努めるということ。そう僕は解釈した。

註(1)ギジェルモ・カブレラ・インファンテ『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』(現代企画社、2014年)403ページ。

(2)カルぺ・ディエム Carpe Diem 「この日をつかめ」という意味のラテン語。古代ローマ詩人ホラティウスの詩から。「いまこのとき」を重視する生き方。「一期一会」という思想にも通じるように思う。

(3)オルハン・パムク『無垢の博物館』(早川書房、2010年)下巻、56ページ。


Donde esta Mezklah? メスクラは、いまどこに? 

2015年04月13日 | 音楽、踊り、祭り

Cuando pienso mis dias en Mexico, siempre recuento mi viaje en Oaxaca y Mexico DF con la banda musica "Mezclah,"-- Angel Garcia y Greg Hernandes.

Nombre de la banda significa "mezcla," y su musica magnifica y inovadora(ademas, su cuerpo pintura y danza)reflejandose y poniendo mucho enfasis en multiculturalismo de Los Angeles y otras areas metropolitanas de Estados Unidos.  Pero donde estan ellos ?  Quiero saber donde. 

Whenever I look back the days in Mexico, I remember my travel in Oaxaca and Mexico City with Mezklah, Angel Garcia and Greg Hernandes. 

The name of the band means "mixture, " and their great and innovative music (as well as their body painting and dance) reflects and stresses on multiculturalism in LA and other metropolitan places of US.   But Where are they now ?  I want to know where they are.

   

メキシコで過ごした日々を振り返ると、オアハカやメキシコシティで、メスクラというバンド(アンヘル・ガルシアとグレッグ・ヘルナンデス)と一緒に旅したことを思い出す。バンドの「メスクラ」という名前は、混淆という意味のスペイン語「mezcla」を少しもじったもので、彼らの素晴らしく革新的な音楽(ボディペインティングと踊りも)は、ロサンジェルスや他のアメリカの都市部の「多文化主義」を反映しつつ、強調していた。だが、いま彼らはどこにいるのだろう?  

 


キューバの太鼓儀礼(タンボール)

2015年04月10日 | キューバ紀行

死者のいる風景--キューバの太鼓儀礼  越川芳明

(エレグアのための太鼓儀礼)

キューバの各地を放浪していて、黒人信仰(サンテリア)の太鼓儀礼(タンボール)を初めて見たとき、これだ!と思った。

ハバナの街なかで知り合った男に、マンションの上階の部屋に連れていかれた。玄関を入ると、すぐに居間がある。部屋の奥に作られた祭壇には、紅白の幕が張られ、緑の布が飾られていた。後で分かったことだが、祭壇の色にはすべて意味がある。緑色は大自然を象徴するだけでなく、鉄を司る<オグン>という神様のシンボル。白色は法や秩序を司る神様<オバタラ>のシンボルといったように。オリチャと呼ばれる神様には顔がなく、色や数字で神様たちを表わす。  

太鼓儀礼では、必ず最初の「演(だ)し物」は神様に捧げる。三人の鼓手は祭壇の神様に向かってすわる。歌も歌わずに、ひたすら太鼓を打ちつづける。どの神様に捧げるかによって打ち方は違うが、素人にはよく分からない。  

三個の太鼓(バタ)は、それぞれ名前が異なる。いちばん大きいものはイヤ(アフリカのヨルバ語で「母」という意味)といい、基本となるリズムを刻み、曲をリードする。これにはぐるりと幾つもの鈴が巻きつけられていて、優雅な装飾音をつけ加える。中くらいのはイトトレ(「下で従う者」という意味)と呼ばれ、「母」と音楽的な対話をおこなう。いちばん小さいのはオコンロ(「小さい、若者」という意味)で、前二者のリズムに対して複雑な弾みをつける。  ある学者によれば、<アチェ>というエネルギーを起こすのが太鼓の役目であり、そのエネルギーによってあの世の魂をこの世に呼び込み、生者たちと交流させるのだという。だから、太鼓儀礼は、生者と死者の「交歓会」ということになる。日本のお盆みたいに、死者の霊がやってくるのだから。  

アウンバ ワオリ アウンバ ワオリ  アワ・オスン アワ・オマ レリ・オマ レヤボ  アラ オヌ カーウェ    

<エグン>と呼ばれる死者の霊を呼び出す歌である。

「アウンバ ワオリ アウンバ ワオリ」と、リードボーカルの司祭がヨルバ語で歌うと、大勢の参列者が「アウンバ ワオリ アウンバ ワオリ」と唱和する。西洋音楽でいう「カノン形式」だ。これは北米の黒人教会の「ゴスペル」でも見られる特徴である。  

アフリカ起源の音楽には、演奏家と聴衆の境界がない。音楽は、かしこまって聴くものではない。聴衆も歌や踊りで参加するのだ。  

僕はこれまでに何度も太鼓儀礼の席で、神様の霊や先祖の霊が踊っている人に憑依するのを見た。生者はその場で自分の人生をリセットして、これから生きていくための英気を得る。太鼓儀礼は趣味や鑑賞のためにあるのではない。アフリカから拉致された黒人奴隷とその子孫たちが白人主人たちに隠れてひそかに継承してきた、生存のための知恵にほかならない。

(明治大学経営企画部広報課編集『M Style』Vol.73, May 2015,p.16)

(左)秘儀である修行をおこない黒人信仰の司祭Babalawoになる。(右)司祭として、道具を使ってIFAの占いをする。


4月8日(水)のつぶやき

2015年04月09日 | サッカー部長日記

さすが、いい先輩の言うことはちがう! [山形]明治大OB・宮阪政樹「大学サッカーは人間的にも成長できるところ。それぞれの学年で1年1年を大事に送ってほしい」 blogola.jp/p/52166 blogola.jp/p/52166 @eg_blogolaさんから

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プロボクサー鈴木悠介(最新ランキング 2014.4)

2015年04月07日 | スポーツ

明大越川ゼミ出身のプロボクサー鈴木悠介のランキング(東洋太平洋バンタム級)が8位まであがった、とお母さんから連絡があった。この階級は、誰でも強い。次の試合は、体調万全でのぞみたい。

上のポスターは、悠介の勝利の瞬間の雄叫びを撮ったもの。新人戦のポスターに使われたらしい。

ランキング表