越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(7)

2015年05月21日 | サッカー部長日記

(写真)藤本の見事なゴール 

5月6日(水)

GW連休の最後の日。いよいよリーグ戦も後半に突入。第7節、桐蔭横浜大戦。

京王線飛田給駅の「味の素スタジアム西競技場」で11時30分キックオフ。 

朝、家から駅までの道のりに小さな公園があり、ピンクや白のつつじが花盛り。スタンドにあがれば、わが明大サッカー部のつつじ娘、いや女子マネージャーたちが陣取っている。彼女たちは、試合ごとに代わりばんこで、控え室やピッチで水や氷などの手配をする。きょうは、スタンドで応援する番のようだ。

 京王線の調布のホームで、野田陸人君(法3)に出会い、スタンドまで一緒にいく。都立駒場高校出身の一般生。よくがんばっている。

 さて、ここ4戦、勝利から遠ざかる。

 選手たちのひたむきの、がむしゃらなプレイが求められる。

 メンバー表には、フレッシュな顔ぶれ。ゴールキーパーには、藤枝東出身の長澤祐弥(政経1)が大抜擢。右サイドバックには、FC東京の試合がある室屋成(政経4)に代わって、今シーズン初出場の鈴木達也(商4)。そして、若い木戸皓貴(文2)と土居柊太(政経2)が、2トップに。

(写真)フレッシュなメンバー 40長澤、12鈴木、24木戸、25土居

 前半は、互いに譲らず0-0。桐蔭の気迫が目立つ。

 後半は、明治も気迫のこもった攻撃をしかける。攻めあがった鈴木からロングパスをキーパーが対応ミスし、しかも藤本佳希(文4)がうまく反応してゴールをあげる。幸先のよい先制点。

 しかし、そこからがまずい。その直後にカウンターをくらい、あえなく失点。

 その後、土居の代わりに道渕を、木戸の代わりに小谷を投入し、また鳥海の代わりに小池を投入し、猛攻撃をかける。藤本のシュートやヘッドが惜しくもはずれたり、道渕のドリブルシュートがGKに止められたりし、同点のまま試合終了。惜しくも勝ち点3を逃す。

 これまでの7試合で、失点は12。そのうち、カウンターやロングパスで失点しているのは33パーセント。セットプレイ(コーナーキックなど)による失点が33パーセント。

 時間帯では、開始直後や終了間際の10分前後の失点が33パーセント。

 これは一瞬の隙(すき)をつかれている。一生懸命やっているのは分かるが、90分間、目一杯集中しなければならない。三浦佑介コーチは、いつも「頭を休めるな!」と、叫んでいる。選手はどこかで一瞬だけ頭を休めているのかもしれない。

 「ある種のものごとはきわめて長い間をおいて、思いもよらぬかたちで、不意を打って舞い戻るものなのである」*(1)

    リーグ序盤戦は、点を取ったり取られたりして、それでも勝てたが、スランプは思いもよらないかたちでやってくる。

(1)ゼーバルド『移民たち』白水社、2005年、p.27。

(写真)試合後に選手たちだけで円陣を組んで話し合う

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(6)

2015年05月21日 | サッカー部長日記

5月3日(日)  

この2、3日、ゆうに25度を越えて暑い。半袖でもいいくらいだ。きょうも、かんかん照り。北国育ちの選手たちの体調が心配だ。小出悠太君、河面旺成君(ともに政経3)らに頼まれた推薦状をわたす。  

昨日、サッカー部の父母会の懇親会が明大の紫紺館であった。80名をこす参加者が全国から集まった。宮崎から来られた村田航一君(法1)のご両親と話す。航一君の足の怪我(三角骨障害)が心配そうだ。二次会も10時半頃までつづき、小野雅史君(政経1)や後藤大輝君(政経1)のご両親とも話す。ともに大宮アルディージャユースの出身で有望株。どこまで伸びるか楽しみ。  

第6節、午後1時50分から慶応大学戦。JR京浜東北の西川口駅から徒歩15分の青木公園陸上競技場。これまでの戦績は3勝1敗1分け。勝点10で首位をキープ。だが、最下位の専大の勝点6まで、まるで戦国時代の「下克上」を地でいく厳しさ。  

朝早め家を出て、駅前のレストランで朝食をとりながら遅れている原稿を書く。研究所に提出する報告書(研究論文)を書かねばならない。原稿用紙400字詰めで100枚以上。だいたい80パーセントぐらい出来上がっているが、締め切りがとっくに過ぎているので、早く完成させないといけない。  

会場には、1時間半ぐらい前に着く。第1試合の後半が始まったばかり。流経大が1-0で中大をリード。流経大は、去年後期の明治みたいにしぶとい。まだ無敗だ。栗田大輔監督によれば、ディフェンスがよいとのこと。サッカーに限らず、どのスポーツでも守備がいいと大きく崩れない。  

きょうのテーマは、「無失点」。  

これまで必ず相手に点を取られて、苦戦を強いられている。だから、これはタイムリーな指示だと思う。選手の誰もが意識しているはずのことを監督が改めてミーティングで指示した。まず20分間は、守備からリズムをつくる、と。  

その戦術は完璧に機能した。しかも、いいリズムから攻撃に入り、18分に左コーナーキックを得て、差波優人(商4)のボールに、ボランチの柴戸海(政経2)がうまく頭で合せて先制点を得る。今シーズン初めてFW以外の選手が得点を入れた。  

その後も、左から高橋諒(文4)が盛んに攻めあがり、ドリブルでゴールに迫る。が、あと一歩のところで得点までは届かない。  

前半は、ほとんど危険なシーンはない。だが、終了間際に慶応に右コーナーキックを与え、あえなく失点を喫する。  

後半は、一進一退を繰りかえし、チャンスは互いにある。だが、最初に点を入れたのは慶応だった。慶応の選手にドリブルで切り込まれ、DF鳥海晃司(商2)が倒されたが、ゴールが認められた。反撃もむなしく慶応に逃げ切られ、1−2で敗れる。  中央大戦につづき1点差の惜敗。  

三浦佑介コーチの言葉「うまい選手たちがいるチームが強いとはかぎらない。勝つチームが強いのだ」が、身にしみる。  

栗田監督の言葉「向こうが問答無用(なりふり構わず、がむしゃらに)でやってきたときの対処ができていない」  

やはりディフェンスの要の山越康平君(法4)がいないのが大きいのか。だが、選手たちは、そうした穴(欠如)を補う思考や技を、皆で編みだしてほしい。  

レヴィ=ストロースは、「未開人」の「ブリコラージュ」に注目している。ありあわせのもので創意工夫する力だ。  

「それはフランス語でふつう「ブリコラージュ」bricolage(器用仕事)と呼ばれる仕事である。・・・今日でもやはり、ブリコルール(器用人)とは、くろうととはちがって、ありあわせの道具材料を用いて自分の手でものを作る人のことをいう」*(1)

註(1)レヴィ=ストロース『野生の思考』(みすず書房)22ページ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロベルト・コッシーのサッカー部長日記(5)

2015年05月04日 | サッカー部長日記

4月26日(日)

アメリカの人気作家セローの作品の中に、19世紀フランス作家フローベールのアフリカ紀行に言及する箇所があり、その言葉が引用されている。  

「旅は人を謙虚にする————世界の中で自分の占める位置がいかに小さいかを知ることができる」*(1)    

どのような文脈で、この言葉をフローベールが使っているのか。実際に『フローベールのエジプト』に当たってみたが、当該箇所が見つからない。セローの記憶違いではないだろうか。他の作家かフローベールの別の作品ではないのか。  

それはともかく、「旅は人を謙虚にする」とは、まさに言い得て妙である。  

「旅」には失敗がつきものだ。想定外のことがおこる。スケジュール通りにならないことが多い。だから、「失敗」や「事故」を楽しむぐらいの気持ちがないといけない。命を失ったり、大けがをしたりするような「失敗」でない限り、「失敗」こそが、われわれの「旅」のキャンバスをオリジナルな色彩で塗り込めてくれる。僕にとって、忘れられない「旅」には、すべて「失敗」が絡んでいる。  

モロッコで、外国人に絨毯(じゅうたん)を売る「土産物屋」に一時間近く拘束された「タンジール絨毯屋拉致事件」や、メキシコで、小学一年生たちを写真に撮ろうとして変質者扱いされた「メキシコシティ警察拘束事件」をはじめ、ドジな「失敗」が僕に自分自身の欠陥を教えてくれた。前者は、英語だけで世界を渡れると思っていた自分自身の「浅はかさ」を、後者はエキゾチックな風物に勝手にロマンを感じてしまう自分自身の「観光客のまなざし」の稚拙さを教えてくれたのである。

(写真:練習試合の風景)

   

きょうは、春らしい好天に恵まれた。八幡山のグラウンドに行き、山本真司君(政経3)に頼まれていた推薦状を2通わたす。春学期が始まって2週目、授業も忙しくなってきた。1年生は、朝から晩までびっしり授業スケジュールが詰まっている。当然、宿題や課題も出るから、要領よくこなさなければならない。サッカーの個人練習でも勉強でも、時間のある時にやろうではなくて、こまめに時間を作って、やらなければならない。それが出来る人と出来ない人で、きっと大きな差がでる。  

グラウンドの縁のコンクリートに腰を下ろして、練習試合を見ているあいだに、菊池創太君(法4)、柴田はじめ君(法2)と牛之濱溶(うしのはま・いるる)君(法2)から授業の相談を受ける。大学だから当たり前だが、どの学部でも難しそうな科目を学ばなければならない。  農学部の「細胞情報制御学」「分子発生学」「ICTベーシック」など、僕にはまったくちんぷんかんぷんだ。商学部の「市場調査論」「国際消費者論」にしても、法学部の「国際法」「民法総則」にしても、手強そうだ。  

さて、きのうは第5節、中央大学との試合が「味の素西が丘競技場」でおこなわれた。 結果は2−3で敗戦。初戦の順大戦と同じく、点を取られては追いつく展開。2-2から、今回は、後半に決勝点を中大に奪われた。  

明治が3点目を奪っていれば、「粘りの明治、強し」との見出しがスポーツ紙を飾っただろうが、世の中そうそう都合よく運ばない。  

試合後、栗田監督と神川総監督は、試合前に掲げたきょうのテーマ「貪欲と謙虚」のうち、「謙虚」を強調。それぞれが「謙虚」に敗戦を受け入れて、明日からの練習に活かそう、というアドバイス。  

「旅は人を謙虚にする」をもじって言えば、「敗戦は、選手を謙虚にする」  

学生たちにとって、試合は「旅」みたいなものかもしれない。失敗がつきものだから。失敗すれば、がっかりする。挫折する。自分のつたなさ、下手さが身にしみる。だが、それは終わりではなく、個人にとってもチームにとっても、「成長」の第一歩。そう考えて、失敗を糧にしたい。  

実は、それはスタッフも同じこと。敗戦で、選手だけでなくわれわれスタッフも成長する。選手たちに逆に教わるのである。それがチームプレーの良いところ。  

きのうの試合では、明るい材料もあった。FW土居柊太(しゅうた)君(政経2)が初ゴールを決めてくれたし、DFの鳥海晃司君(商2)もリーグ戦初出場ながら、守備を無難にこなした。相変わらず和泉竜司キャプテン(政経4)は、同点弾を決めてくれて好調である。  

来週の慶応戦が楽しみだ。

註(1)ポール・セロー『ダーク・スター・サファリ』(北田絵里子訳、英治出版、2012)74ページ。

(写真上:和泉のゴール。向こうは直前に強烈なシュートを放った高橋) (写真下:土居のリーグ戦初ゴール)

 

(写真:日曜日、八幡山の土居)

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする