「ともに考えましょう。子どもたちの未来と大阪の教育」を掲げ、1月28日大阪府守口市で開かれた、
「教育基本条例に反対するシンポジウム」 (「大阪府教育基本条例反対アピール」呼びかけ人主催)。
800人が詰めかけました。 パネリストの発言を紹介します。
しんぶん赤旗2012年1月31日(火)
恐怖で教育を支配とは
東大教授・前日本教育学会会長 佐藤学さん
条例案の半分が処罰規定です。 知事が教育目標を決め、従わない教育委員は罷免し、校長が最低評価とした教師は免職にできるという、脅迫と恐怖で教育を変えようとするとんでもない条例です。
憲法や教育諸法令に違反しています。
条例案の根底には、教師や子どもに対する不信、憎しみとも取れる感情が渦巻いていますが、教育が抱えている環境が困難なのです。 環境を良くするのは知事や市長の責任です。
子どもは学び続ける希望を持っている限り決して崩れません。
それを支えるのは、教師や子ども、親たちとの信頼関係です。 その信頼関係を破壊する条例案を許してはなりません。
文部科学省が条例案を違法だとし、「君が代」問題での減給異常の処分は重すぎるという最高裁判決も出ました。
廃案になるまでさらに声を上げていきましょう。
経営と同次元に扱うな
精神科医 香山リカさん
患者さんの心の中に子どものときに受けた教育がいろんな形で影を落としていると感じる機会が思いのほか多くあります。
見かけの学力やどこの学校に何人合格したかなど、目に見える結果はすぐに出るかもしれませんが、その人の人生に与える結果というのはすぐには出てきません。
条例案を見て驚きました。 教育が企業経営や資本主義のいろんな仕組みと同じ次元で語られ、同じような基準で評価を受けようとしています。 すぐに結果が出て、誰が見てもわかりやすいものさしで判定されてしまう。
教育は、売り上げやスポーツチームの成績など、すぐに結果が出て判定できるものとは全く性格が違います。
「保護者はより良い教育に貢献する」と保護者に義務を課しています。 「より良い教育」とは、条例案を作った人たちが考える「より良い教育」で、「教育を保護者や生徒に取り戻す」というものとはかけ離れています。
近代教育解体の一歩だ
精神病理学者・関西学院大学教授 野田正彰さん
ナチスのヒトラーが自らのコンプレックスを身近な弱者に向けていく中で、権力をとるために役立つことを学習していきました。 同じように橋下市長も学校の先生たたきが自分の権力を強化することに「維新」という上っ調子な言葉を使えることを学習していっていると思います。
橋下氏が教育の中で「処分、処分」とわめいて、条例案で抑圧と恐怖、弾圧を徹底しようとしていますが、今求められているのは、本当の意味でのリーダーシップです。
教師の思いをくみ上げて、教育に取り組んでいく意欲を高めていくことです。 橋下氏の動きは、この間、着実に進められてきた平等な形で人間をつくっていこうという近代教育の解体のための一歩です。
私たちが問われているのは、戦後教育の歴史を学び、教育をどう作り変えていくのかを考えることです。
英国で失敗した「改革」
地球物理学者・前京都女子大学教授 前田佐和子さん
橋本さんがやろうとしている、学力テストの結果公表や、学校選択の自由化、バウチャー(利用権)制などの「教育改革」は、1980年代の終わりにイギリスのサッチャー首相がやったことで、失敗であったことが明らかなものばかりです。
イギリスは、2006年にはイギリス全体で学力テストの成績の公表を廃止し、07年には、ウェールズ州で学力テストを廃止しました。 橋下さんは、まだこれから格差を拡大する教育をするのかと思います。
橋下さんは、これまでの行政・「教育改革」がダメだったから国家を変える、日本の統治機構を一からつくり直すと言っています。
韓国・ソウルの市長が教育基本条例をつくりました。生徒の人権を守り、尊重するというものです。大阪の条例案が矛盾を解決し、世界で生きていく人を育てられるとは思えません。
教育手法には熟議必要
前大阪市教育委員会委員長 池田知隆さん
大阪は、矛盾や様々なものが集約していて、先生たちは疲れきっています。先生の休職率は全国平均の2倍、精神疾患率が全国平均の3倍だと問題を指摘したら、橋下さんは先生の申請の仕方や、病院のどんな診断書を添えて出しているか、厳正に調べなおせといいます。
大阪の先生の休職率が高いのは、それだけ税金をもらってサボっているんじゃないかという感覚のとらえ方をしている。言えば言うほど管理を締め付けるというのは、一体なんだろうと疑問を感じます。
すべてを先生のせいにして、しりを叩けば学力が上がるというのは問題です。
首長が選挙で選ばれたら全部教育の中身を変えていくのは許されません。教育はもっと長いスパンで考え、熟議して教育の手法なりを決めていくことです。時々の空気に乗っかって一気にああしろこうしろとしてしまったら、とんでもない大迷惑になります。
「教育基本条例に反対するシンポジウム」 (「大阪府教育基本条例反対アピール」呼びかけ人主催)。
800人が詰めかけました。 パネリストの発言を紹介します。
しんぶん赤旗2012年1月31日(火)
恐怖で教育を支配とは
東大教授・前日本教育学会会長 佐藤学さん
条例案の半分が処罰規定です。 知事が教育目標を決め、従わない教育委員は罷免し、校長が最低評価とした教師は免職にできるという、脅迫と恐怖で教育を変えようとするとんでもない条例です。
憲法や教育諸法令に違反しています。
条例案の根底には、教師や子どもに対する不信、憎しみとも取れる感情が渦巻いていますが、教育が抱えている環境が困難なのです。 環境を良くするのは知事や市長の責任です。
子どもは学び続ける希望を持っている限り決して崩れません。
それを支えるのは、教師や子ども、親たちとの信頼関係です。 その信頼関係を破壊する条例案を許してはなりません。
文部科学省が条例案を違法だとし、「君が代」問題での減給異常の処分は重すぎるという最高裁判決も出ました。
廃案になるまでさらに声を上げていきましょう。
経営と同次元に扱うな
精神科医 香山リカさん
患者さんの心の中に子どものときに受けた教育がいろんな形で影を落としていると感じる機会が思いのほか多くあります。
見かけの学力やどこの学校に何人合格したかなど、目に見える結果はすぐに出るかもしれませんが、その人の人生に与える結果というのはすぐには出てきません。
条例案を見て驚きました。 教育が企業経営や資本主義のいろんな仕組みと同じ次元で語られ、同じような基準で評価を受けようとしています。 すぐに結果が出て、誰が見てもわかりやすいものさしで判定されてしまう。
教育は、売り上げやスポーツチームの成績など、すぐに結果が出て判定できるものとは全く性格が違います。
「保護者はより良い教育に貢献する」と保護者に義務を課しています。 「より良い教育」とは、条例案を作った人たちが考える「より良い教育」で、「教育を保護者や生徒に取り戻す」というものとはかけ離れています。
近代教育解体の一歩だ
精神病理学者・関西学院大学教授 野田正彰さん
ナチスのヒトラーが自らのコンプレックスを身近な弱者に向けていく中で、権力をとるために役立つことを学習していきました。 同じように橋下市長も学校の先生たたきが自分の権力を強化することに「維新」という上っ調子な言葉を使えることを学習していっていると思います。
橋下氏が教育の中で「処分、処分」とわめいて、条例案で抑圧と恐怖、弾圧を徹底しようとしていますが、今求められているのは、本当の意味でのリーダーシップです。
教師の思いをくみ上げて、教育に取り組んでいく意欲を高めていくことです。 橋下氏の動きは、この間、着実に進められてきた平等な形で人間をつくっていこうという近代教育の解体のための一歩です。
私たちが問われているのは、戦後教育の歴史を学び、教育をどう作り変えていくのかを考えることです。
英国で失敗した「改革」
地球物理学者・前京都女子大学教授 前田佐和子さん
橋本さんがやろうとしている、学力テストの結果公表や、学校選択の自由化、バウチャー(利用権)制などの「教育改革」は、1980年代の終わりにイギリスのサッチャー首相がやったことで、失敗であったことが明らかなものばかりです。
イギリスは、2006年にはイギリス全体で学力テストの成績の公表を廃止し、07年には、ウェールズ州で学力テストを廃止しました。 橋下さんは、まだこれから格差を拡大する教育をするのかと思います。
橋下さんは、これまでの行政・「教育改革」がダメだったから国家を変える、日本の統治機構を一からつくり直すと言っています。
韓国・ソウルの市長が教育基本条例をつくりました。生徒の人権を守り、尊重するというものです。大阪の条例案が矛盾を解決し、世界で生きていく人を育てられるとは思えません。
教育手法には熟議必要
前大阪市教育委員会委員長 池田知隆さん
大阪は、矛盾や様々なものが集約していて、先生たちは疲れきっています。先生の休職率は全国平均の2倍、精神疾患率が全国平均の3倍だと問題を指摘したら、橋下さんは先生の申請の仕方や、病院のどんな診断書を添えて出しているか、厳正に調べなおせといいます。
大阪の先生の休職率が高いのは、それだけ税金をもらってサボっているんじゃないかという感覚のとらえ方をしている。言えば言うほど管理を締め付けるというのは、一体なんだろうと疑問を感じます。
すべてを先生のせいにして、しりを叩けば学力が上がるというのは問題です。
首長が選挙で選ばれたら全部教育の中身を変えていくのは許されません。教育はもっと長いスパンで考え、熟議して教育の手法なりを決めていくことです。時々の空気に乗っかって一気にああしろこうしろとしてしまったら、とんでもない大迷惑になります。