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安保が分かれば、世界が見える ⑦最終回 日米安保は廃棄できないのか?―即時廃棄できる。

2012-11-19 | 海外通信/外交/平和運動
 
安保が分かれば、世界が見える

私たちはどんな未来を
(下)  山里理一

 前回までの連載で、戦後日本社会の発展をゆがめてきた日米安全保障条約・日米軍事同盟について、様々に学んでこられたことと思います。

 今回は、①喫緊の課題である「脱原発」「原発ゼロ」を求める運動と日米安保条約との問題、
②憲法を活かした日本社会づくりの問題、 と取り上げ、日米安保条約を廃棄することで何が展望できるのか述べたいと思います。

1 日米安保条約はすぐに廃棄できます。

 日米安全保障条約第10条は、「条約が10年間効力を存続した後」、すなわち1970年以降は、日米のいずれからも「条約を終了させる意思を通告することができ」るとしています。そして、安保条約の廃棄の意思を相手国に通告しさえすれば、「通告が行われた後1年で終了」する、つまり自動的に終了することになります。

 日米安保条約を廃棄するために、日本政府がアメリカ政府とあらためて外交交渉を行う必要は全くないのです。
 日米安保条約を廃棄することを公約に掲げる政権が成立し、アメリカに通告すれば、安保条約はすぐに廃棄できるのです。
 日米安保条約の廃棄を求める国民的多数派を形成する運動、そして、安保条約を廃棄する政権・民主連合政権樹立への運動が、私たちには求められているのです。

2 日米安保条約を廃棄してこそ「脱原発」「即廃炉」への道が開けます。

 東京電力福島第一原発の苛酷事故を受けて、いま、日本国民の多数が放射能汚染に脅かされる生活のない日本社会、「脱原発」「原発ゼロ」の日本社会を求めはじめています。
 いまや「脱原発」「原発ゼロ」は国民世論となり、政府ですら認めざるを得なくなっています。政府のパブリックコメントにおいても、「即時ゼロ」が8割を占めています。

 しかし、民主党政権・野田佳彦首相は、9月7日に「2030年代に原発ゼロ」という目標を掲げはしましたが、これは目標があいまいなうえ、即時の原発撤退を求める世論に逆行するものです。

 こうした民主党・野田政権の動向の背景には、財界からの「脱原発」に反対する圧力があります。さらに
 アメリカからの「脱原発」への反対圧力について、例えば、次のような報道があります。

『民主党の前原誠司政調会長と(9月)11日に会談した米エネルギー省のポネマン副長官は「2030年代に原発ゼロを目指す」との民主党の提言について、「このような措置を実際に取れば、意図せざる影響もありうる」と、恫喝を加えました。

同氏は「エネルギー問題は日本が決めることだ」としつつも、「原発ゼロを目指すことを決めた場合の負の影響をなるべく最小化してほしい」と要請。同戦略の推進にあたっては、「柔軟性」を残すよう求め、日米間でさらに意見交換していきたいとの考えを示しました。

 8月に第3次アーミテージ・レポートを発表し、商業用原子炉での日米協力の推進を強調した米戦略国際問題研究所のジョン・ハムレ所長は(9月)12日、日本経済新聞(13日付)に『原子力は日本が担うべき責務』とする論文を寄稿。
『国家安全保障上の観点からも、日本は「原子力国家」であり続ける必要があると迫っています(「民主党案『原発ゼロ』に圧力」、『しんぶん赤旗2012年9月14日付』)。

 このような圧力もあり、民主党・野田政権は、「2030年代に原発ゼロ」という目標のあいまいな政策を掲げることになっているのです。


 いま、毎週金曜日の夕方から夜にかけて、東京・永田町の首相官邸前で、「脱原発」「原発ゼロ」「再稼働撤回」を求める数万人規模の抗議集会が行われています。また、全国で「脱原発」デモが行われています。金曜日の首相官邸前行動に呼応した全国各地の行動は100ヵ所を超えています。

 こうしたデモ・行動は、政府に対し、日本の各地に存在する原発の再稼動を行わせないための大きな力となるでしょう。
 実際、民主党・野田政権はこうしたデモ・行動を無視し続けることが難しくなり、8月22日、野田首相は、首相官邸前行動を主催している反原発首都圏連合(反原連)の代表と、首相官邸内で直接面談を行いました

この席で、野田首相は、反原連から「大飯原発の再稼動を中止すること」「現在検査で停止中の全ての原発の再稼動をさせないこと」「国策としての原子力政策を全原発廃炉の政策へと転換すること」「原子力規制委員会委員長及び委員の人事案撤回」などの要求を突き付けられることになりました。

 この席では、野田首相は、形式的な返答を繰り返すばかりで、反原連からの要求に対して正面から誠実に向き合い回答するという態度を一貫して取らず、その場しのぎに徹しました。

 野田政権は世論を無視した原発政策を続けていますが、その後も続く全国各地での行動・デモは、いずれは政府を動かし、民主党・野田政権が強行した大飯原発の再稼働を中止させ、これ以上の原発再稼働を阻止する力になるでしょう。

 しかし、現在の民主党政権においても、次の総選挙を経て成立する新政権においても、日米安保条約が存在し、安保条約を根拠にアメリカが「脱原発」「原発ゼロ」に反対する圧力を日本にかけてくる限り、その圧力に屈せず日本政府が「脱原発」「原発ゼロ」「即廃炉」の原子力政策・エネルギー政策を打ち出し、実行に移すことは難しいことです。

こうした意味で、戦後日本の原発推進政策は、日米安保条約に基づく「究極の対米従属」なのです。

 日米安保条約を廃棄し、日本の政策がアメリカからの干渉を受けることがなくなり、またアメリカの政策に日本が従属することがなくなってこそ、国民世論となりつつある「国策としての原子力政策を全原発廃炉の政策へと転換すること」が本当に実行される社会になるでしょう。
 「脱原発」「原発ゼロ」の日本社会を展望するためにも、日米安保条約について学習し、その廃棄を求める運動を、私たちは強めていかなければなりません。

3 国際政治の流れは軍事同盟の解体です。

 ところで、日本ではあまり知られていませんが、日米安保条約のような軍事同盟の解体は、世界的傾向になっています。軍事同盟を媒介にしたアメリカ帝国主義の世界戦略は破綻しつつあります。

 旧ソ連を中心としたワルシャワ条約機構は、ソ連崩壊(1991年)とともに解体しました。

 アメリカ中心の軍事同盟を見てみると、東南アジア条約機構(SEATO)は解散、中東中心の中央条約機構(CENTO)も解散、太平洋安全保障条約(ANZUS、米・オーストラリア・ニュージーランドの3国で締結)はニュージーランドの南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)加盟による一部機能停止、米州相互援助条約(リオ条約)も機能停止、など全体として崩壊に向かっています。

 いま実際に軍事同盟として機能しているのは、北大西洋条約機構(NATO)、日米安保条約、米韓相互防衛条約、太平洋安全保障条約(米豪のみ)の4つにすぎなくなっています。こうした軍事条約への参加は、31ヵ国で、国連加盟国の16%、世界人口の16%にすぎません。

 いま、日本は、日米安保条約・日米軍事同盟のもとで、イラク戦争時に自衛隊を現地に派遣するなど、アメリカ帝国主義の引き起こす戦争に巻き込まれる危険に晒されるとともに、自衛隊・軍事力を増強し、アジア各国から見て脅威的な存在になりつつあります。

 しかし、軍事同盟の解体という世界的な変化・流れをしっかりとつかみながら、日米安保条約の廃棄が、日本とアジアの平和と安全にとって必要不可欠であることを確信し、運動を押し進めていかなければなりません。

4 日米安保条約を廃棄し、平和的生存権の実現される日本社会を展望しましょう!

 さて、いま考えるべきことは、財界本位の政治から国民生活本位の政治への転換とともに、日米安保条約を廃棄し、対米従属の政治から脱却し、憲法を活かした日本社会を展望することです。
 そこで特に重要になることは、憲法第9条と第25条です。

 第9条に従って平和を実現し、第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」ということ、すなわち国民の生存権を保障する日本社会を築くことです。

 この2つのことを統一的に示すのが平和的生存権です。これについて憲法前文は「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と述べています。
 平和がなければ国民の生存権は保障されません。また、生存権が保障されなければ真の平和もあり得ません。2つのことは相互前提の関係にあるのです。

 いま平和的生存権の実現される社会を築くために大事なことは、第一に、対米従属から脱却し、非核・非同盟中立・独立・民主主義の日本を実現すること、第二に、雇用・生活・社会保障を国民が安心する程度まで充実させること、です。

 このような社会を展望するためにも、日米安保条約の廃棄が決定的な意味を持つということを強調し、この連載講座の締めとしたいと思います。
 8ヵ月間の長期にわたる本連載をお読みいただき、ありがとうございました。

(追記)このたび、本連載執筆陣のうち、山田敬男、峰良一、山里理一の3人による集団執筆で、労働者教育協会編『これでいいのか日米安保』(学習の友社刊)が出版されました。ぜひ本連載と合わせてお読みください。
(やまさと・りいち/労働者教育協会常任理事・講師、勤労者通信大学経済学教科委員長、とちぎ県労働者学習協議会会長)
【学習の友 2012-no:711 11】


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