今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

おっとりハリーのトライアル(後編) ~心の扉を開くんだ~

2018年11月24日 | ハリー(灰白)
ハリーが特別に性格のいい子だなんて言いません。そんな言い方をすれば、まるで性格の悪い猫がいるみたいだからです。人を睨みつけるノラだって、付き合えば穏やかな甘えん坊に変わります。そう、人も猫も同じなんです。付き合ってみなきゃわからない。


本年5月わが家の家裏時代、当時の名前は「灰白くん」
(灰白くんはシリーズ「ノラと家猫と」でノラ側の主人公です)

それでもハリーには、周囲まで平和にしちゃう独特の雰囲気があった。人が好きで、猫が好きで、喧嘩を売られても我慢してやり返さないほど穏やかで、いつもやさしさとおっとり感が滲み出ている。こんな子が迷惑ノラだったなんて、本当に何かがおかしい。ハリーは、どうしても幸せになってほしい猫だったのです。


本年9月わが家でのひととき(右から2番目)

そのハリーが緊張と不安の中にいた。妻によると、里親さん宅を出る前にハリーをリビングからご主人の仕事部屋に移したそうです。その部屋なら、ウェブ関係の在宅ワーカーであるご主人が全面的に面倒みれるからと。ハリーは本棚や簡易ベットがぎっしり詰まった手狭な部屋に移されると、すぐに物陰に逃げ込んで再び固まってしまったらしい。

自分の臭いや安心できるものを持参できなかったハリーは、まったく知らない世界にいきなりポツンと置かれたのです。拠り所が何ひとつないその状況は不安というより恐怖だったに違いない。みんなのいるわが家に帰りたいとも思ったろう。前編の最後に紹介した里親さん宅での写真(妻撮影)、見たこともないハリーの表情に正直自分もショックでした。


里親さん提供①

一方里親さんは願ってもないくらい気遣いのある人で、ハリーのためには献身的に何でもしてくれた。猫に対する予備知識はなくても、長年のワンちゃんとの暮らしで培った思いやりだ。当方の説明が悪くてシステムトイレを用意したときも、すぐに当家と同じ猫砂トイレを再調達する慌てぶりでした。ご主人は当面、ハリーと一緒にその部屋で寝起きすると決めた。しかしハリーは飲まず食わずで翌日の夜までその場に固まったままで、ついに耐え切れずに粗相までしてしまったのです。

ご主人は毎日の状況をこまめに伝えてくれ、自分はハリーに関する膨大な情報やアドバイスを送った。ハリーは粗相の後、ラックの一番高いところに上ってその奥で再び固まってしまった。しかしご主人がうとうとした隙に下りてきて水を少し飲んだらしく、そして明け方には砂のトイレでオシッコもしていたと。ご主人は大変な喜びようだった。

3日目の朝、ハリーは初めてチュールを少し口にした。48時間ぶりの食べ物だった。その日は2度ほど降りてきてトイレに行き、ウンチもして少しだがレトルトを食べた。その晩から4日目の朝にかけて何度か水飲みとトイレに行き、初めて声を出した。そしてご主人に甘える仕草も見せるようになった。ご主人は、その様子を画像と音声で送ってくれた。


里親さん提供②

自分がそれを見たのは店から帰った夕方だったが、そのハリーの声を聞いて驚いてしまった。それはいつもとまったく違う、か細く震えていて、ハリーが怯えに支配されていることを物語っていたのです。ハリーは不安の中で、藁にもすがる気持ちでご主人さんを頼ろうとしていたのだ。自分はその晩、長文のメールを書いて考えられる全てのアドバイスを送りました。

実はご主人から一緒に寝泊りすると聞いたとき、初めはハリーを独りにした方がむしろ早く落ち着くのではと思った。しかしそれはご主人の厚意を考えると言えなかった。結果的に、寂しがりやのハリーにとってご主人が常時いてくれたことはよかったのかもしれない。ご主人は当方のアドバイスを何度も読み返して忠実に実行してくれました。そして、それからのハリーは日に日に心を開いていったのです。


里親さん提供③

5日目にはご主人に甘える時間が少しづつ増え、カリカリもレトルトも、食べる量が従来(わが家にいた頃)の3分の1くらいまで増えてきた。6日目になるとラックから自分で下りないでご主人に「下ろして」と甘える仕草もでてきたと(何たる過保護!)。そしてその夜から、当方が兼ねてから提案していた家の中の探検を、ようやく自分の意志でしたがるようになったのです。

初めは付き添いで、しかし7日目にはドアの隙間から出たり入ったり、何か物音に驚くと直ぐに部屋に逃げ戻って、落ち着けばまた探検に出て行く。ハリーはすっかり調子が出てきたようでした。何と言ってもご主人という新たな拠り所、そして仕事部屋という落ち着けるホームエリアを得たことが大きかった。食事も従来の半分ほどまでに増えた。行動範囲が広がって運動量も増えれば、食欲も完全復活するに違いないと思われた。

7日目に再び送って頂いた動画と声から、ハリーに落ち着きが戻ったことが感じられた。鳴き方はまだ弱々しいが、大家族ではなく1匹なので強く鳴く必要もないのかもしれない。そこで、覚書にあるトライアル期間を過ぎたので正式譲渡の案内をしたところ、「彼がいない生活はもう考えられません」というご返事を頂いたのでした。

里親さんの心尽くしのサポートを得て、ハリーは新しい家猫生活をスタートさせました。命の危険を何度も含む波乱万丈の人生(猫生)を歩んできたハリー。 最後の試練を見事に乗り越えて、終の棲家を得たのです。これからは持ち前のおっとり感で、里親さん一家に癒しを振りまき続けることでしょう。

ハリーよ、幸せにな。
お前は本当に心に残る猫だったよ。
このオジンのこれからの保護活動にも勇気を与えてくれた。
いつかまた会おうぜ、ハリー。


里親さん提供④

※本ブログではハリーの名前で通しましたが、ハリーの新しい名前は「勇気」、通称「ゆうちゃん」です。


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