アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第三十話. 森の中の病院

2009-02-11 16:44:16 | アートセラピー

* わがやのキッチンの窓辺では、真紅のカニサボテン(クリスマスカクタス)の花が満開です。アドベントが始まり、もうすっかりクリスマスを数えまつ季節です。アドベントのリースは針葉樹やアイビーなどのグリーンを丸く結わえて、赤い4本のろうそくを立てておいたものをテーブルに飾り、毎週日曜日に明かりを灯すろうそくの数を増やしていきます。

第三十話. 森の中の病院

私が実習で一年を過ごした精神病院は野性の鹿もいる森の中にあり、美しい自然と季節の移り変わりを味わわせてもらいましたが、あまりに広いためドラッグ密売人が患者さんにドラッグを渡しにくるのを防げないという難点がありました。80年以上もの歴史のある古い大きな病院で、移転計画が進んでいて、多くの病棟がすでに閉鎖され、窓やドアには板が打ち付けられていて、ゴーストタウンのような気味の悪さが漂っていました。

病棟内のことに加え、スタッフの自転車が金棒でつぶされたり、私の財布が取られて、中のなずなの生まれたばかりの日の写真も抜き取られたりと、毎日のようにさまざまな出来事が起こり、刺激的なところでありましたが、どうやって頑張ることができたのかは、なぞです。きっとお話好きの性質が幸いしたのでしょう。赤ちゃんのなずなの写真は今頃ブッタとしてあがめられているのかもしれません。

実習の指導担当をしてくれたアートサイコセラピストのレイはジョンレノンの丸めがねをかけて恥ずかしそうに笑う無口なおじさんでしたが、それから友達となって、いまでも時々なずなを連れてレイのアート小屋に遊びに行って、彼の大きな人間の頭の彫刻やらを見たり、湯飲みをつくったりしています。

実習の終わり間際に、病院と町をつなぐ連絡バスの停留場の壁に「振り返ってみるといい病院だったよな」という患者さんの落書きを見ましたが、わたしもなぜかそんな気がするし、歴史的転換点に遭遇したのも面白い経験だったと言えます。   

(間 美栄子 2008年 12月1日 )



最新の画像もっと見る

post a comment